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「では陛下、奪われた領地の奪還に行ってまいります」
「うむ。皆の双肩にこの国の未来が掛かっている!民のため、国のために鍛え上げたその力と技を存分に奮い、我等が宿敵を打倒す事を期待している!!」
「「「「「アルバゴーン王国万歳!!」」」」」
「総員進路を北東に取れ!出立!!」
大勢の国民に見守られ、国王の激励と将軍の号令で王都を五千の兵が出発した。俺はその様を見送りの人々に紛れて眺めていた。
「あれが国王、ロドリゲス・アルバゴーンか・・・俺とは大違いだな・・・・・」
俺には国を守るために国民を戦争に送り出す事なんて出来ないし。正直民のためとか言ってその民を死ぬかもしれない戦場に送るのは如何かともと思う。まぁ、それは俺が一人で戦う‶力〟が有るから言える事で、これが普通なんだろうけど。
因みに兵站の中に固焼きパンの俺が紛れている。流石に将軍さんも部隊の中に魔王が居るとは思うまい。わはははは!!
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王国軍が進軍を始めた翌日の早朝。領都で突如としてスラムの住人達の大移動が始まった。その数は約五十だ。
知らせを受けたセレスタさんと街中の衛兵が東門へと向かったが時既に遅く、大勢の住民達が門を抜けた後だった。
「おのれ・・・一度ならず二度までも・・・この借りは必ず返すぞ!魔王!!」
去って行く住民達の背中にセレスタさんの叫びが届く。
「「「「「ブレッドさん、ばんざーい!!」」」」」
「お前達見てみろ!今日は最っ高に旨い飯が食えそうだぞ!!」
「ちげぇねぇ!!」
「「「「「がはははは!!」」」」」
「クッ!クソがあああぁぁぁああぁぁぁ・・・・・・!!」
キース達に煽られたセレスタさんの叫び声とキース達の笑い声が良く晴れた春の空に響き渡る。あんまやり過ぎると追いかけてくるかもしれないからその辺にしとけよ。
セレスタさんは気が付いてないみたいだけど、ロレンツの部下とキース達がこの街に大量にばら撒いた小麦粉の俺を使い切った時、如何なるのか楽しみだな。キース達は鉱山都市に、ロレンツの部下は王都に向かったし、この街にはもう俺を配る者は居なくなったのだから。
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「何とか間に合ったな」
「ああ、これで残すは町の東側だけだ」
「それじゃ見張りを残して向こうに合流しようぜ」
「「「「「だな」」」」」
ロイドの町を囲む防壁と堀の西側部分が山脈まで到達した。ここに来るまで大変だった・・・進路の邪魔になる大きな石を堀り返したり、魔物に襲われたりなんてのはまだいい方で、猛吹雪で隣に居る筈の俺が見えなくなった時は流石に作業を止めたよ。ホワイトアウトだっけ?視界が一切利かなくなるって本当に危険なんだって身に染みたね。全部終わったら俺同士で健闘を称え合おう。
雪の残る森の中を南東へと進む。将軍さん達が来るまでには間に合わないかもしれないけど、対峙するのは町の西側の筈だ。偵察が来ても乾パンの俺を残して来てあるから問題ない。軍隊が態々大回りして山脈を超えて来るとは思えないしな。
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険しい山道を冬の間中行き来したお陰で鉱山都市から魔族の村までは道のような物が出来ていた。馬車が擦れ違える程の広さの有る踏み締められた道。路肩に積み上げていた雪の壁も可能な限り退けたし、そろそろ魔族も移動出来そうだ。
暖かくなって来て鉱山都市の職人さん達のペースも上がってきた事だし、バルダークさんやゾルゲルさんまでもが毎日のように俺に『まだか』と聞いてくる有様だ。
長年所じゃない程に住み慣れた土地を離れると言うのに抵抗とか不安は全く感じない。寧ろ早く見た事の無い景色を見たくてうずうずしてんだよこいつ等。
放っておいたら勝手に飛び出して行きそうだし、こちらも移動するとしますかね。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




