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「逃がしたか・・・・・」
「一体如何やって・・・入り口は固めていました・・・何処かに隠し通路でも有るのでしょうか?」
いいえ逃げてません。それ所か数千単位で増えてます。
「解らんぞ、あ奴の授かった力やもしれん」
うん、まぁその通りなんだけど、多分あんた等が思っているような能力じゃないぞ。
「ああっ!!」
「どうした!」
「く・・・クッキーが床に・・・・・」
このお姉さん意外とポンコツだな。ちょっと見出来る女風なのに・・・いや、ギャップ萌えとか言う奴か?有りっちゃ有りだな。
「まぁ、良い。おそらくはこの会話も聞いておるのだろう?私は一旦王都に帰るが、ロイドの町を取り戻しにやってくる。春にまた相見えようぞ『飽食の王』・・・ブレッドよ」
おぅふ・・・ばれてーら。まぁ、避難民の事探ってたんだし、名前位は知られてて当然か・・・後は食料を出せる事もか。でも、流石に出した食料が全部俺だとは思うまい。
春にか・・・何とか話し合いでと思ったんだけど、せめて犠牲を出さないようにやらないとな。
「あ、あの、ご主人様。床に落ちてしまった物は諦めますので、せめてテーブルの上のクッキーだけでも持ち帰らせて頂けませんでしょうか?」
「・・・急ぐのだぞ・・・・・」
「はい!」
何だろう、将軍さんがちょっと可哀想に思えてきたよ。つーか、お姉さん可愛いな。
呆れ顔の男性三人を置いて部屋を出て行くメイドさん。まぁ、彼女のお陰で王都に潜入出来そうだし、王様に献上して貰えれば王城にも潜伏出来るかもしれないな。
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「と言う訳で、俺の軽率な判断で王国軍が春には攻めて来る事になっちまった。誤って済む事じゃないがロイドの町の手前で止めて見せるから許してくれ」
一つ懸念事項があるとすれば、ここ二日間で一度も身体が光っていない事か。もしかしたらレベルが最大になったのかもしれない。幾つか解らんけど。
「気にする事は無いんじゃないか?何しろ山三つだ、軍隊がここに来る前に逃げてしまえば良いだけの事だろう?」
「そうよね?セシリア様がが動けなかった今までとは違うんだし、何なら南の暖かい土地なんて良いんじゃない?」
「どうせならあたしは海が見てみたいなぁ・・・・・」
「お前等は楽観視し過ぎだ。そう簡単に我々魔族を受け入れてくれる土地が有るとは思えん」
「俺もそう思う。兎に角防衛施設の方はこのまま作って行くから、鉱山都市から持って来た鉱石類を使ってスコップとか量産して貰えますか?」
「鋸と斧と鉈にスコップだったな。作り続けるようには言ってあるが・・・・・」
「鍛冶師が足りない、か・・・・・」
「まぁ、元々冬の間はやる事が少ないからな。暇な者が手伝えば良いだろう」
そうは言っても素人が手伝える事なんて高が知れてる。俺が覚えるにしても、真面な物が作れるようになるのにどれだけ時間が掛かるか解らない。
「いっその事、春になったっら鉱山都市に引っ越しちゃいます?あそこなら立派な防壁もあるし資源も豊富ですし。何より運搬に時間を取られる事も有りません。それにロイドの町と交易すれば人族との和解に一役買えると思うんですよ」
「お前は慎重なのか大胆なのか解らんな・・・・・だが、悪くない提案だ。要はお前が王国軍を抑えきれば良いだけの話だしな」
「だが、皆が納得するとは思えん。メアリーが来た時もブレッドが一緒でなかったら如何なっていたか・・・・・」
「それについては考えがある。ブレッド、お前がセシリア様を娶れ。正式に魔王を襲名すれば誰一人として文句は言わんだろう。幸いセシリア様もお前に懐いているしな」
それ、近い内に言われると思ってたよ・・・・・呪いの効果も多分無くなってる。と言うか、セシリア自身で能力の制御が出来るようなってるから、自由に出歩けるようになってるけど俺から離れないしさぁ・・・・・嫌って訳じゃないんだけど、何かメアリーにも悪い気がするんだよね。あれだけ慕われてて他の人と結婚するとか何かもやもやするんだよなぁ。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




