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ベッドの上で泣く全裸の少女を抱きしめる俺・・・・・これってライザの時より拙い状況では?
「あ、あの・・・ごめん!直ぐに着る物用意して貰うからちょっと待ってて・・・・・」
「いやぁ・・・行かないでぇ・・・・・」
顔をくしゃくしゃにして俺に抱き着き、服を握りしめる彼女。
「いや、直ぐに戻るからね?ほら、服は着ないと」
「いらない!そばに居てくれるって言ったもん!いっちゃダメ!」
え~・・・何だこの反応?なんか変だぞこの子。服が要らないとか、如何言う―――
「ブレッド様、お嬢様が目を覚まされたと聞きました。お茶の用意が・・・・・失礼しました。終わりましたらお呼び下さいませ」
絶妙なタイミングだな、おい!いや、そうじゃなくって!
「ちょっと待ったあああぁぁぁ!!メアリー、この子の服を持って来てくれ。それから変な誤解すんな、俺は何もしてないからな」
「はぁ・・・私は別にブレッド様が何方と何をしようが気にはしませんが・・・いえ、私にもして頂けたらとは思いますが」
「にもってなんだよ!しないし、してないから!いや、そうじゃなくて服!兎に角服持って来てって!!」
「そうですか・・・では、探してまいります」
不満そうな顔をして軽く頭を下げて出て行くメアリーの背中に大きな溜息を付いた。
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で、今現在一階の食堂でメアリーの用意してくれたお茶を飲んでいる所だ。メアリーは二階の捜索をしてくれている。そして、お姫様はと言うと・・・・・俺の膝の上で俺の出したクッキーの俺を食べながらお茶を呑んでいる所だ。満面の笑顔で。
「これ、おいしいね、お兄ちゃん!」
「そうか~それはなによりだ~・・・・・」
「なによりだ~・・・あはははは!」
彼女に食われ続けた事で急速に進化した俺は、パン以外にも小麦由来の製品を出せるようになった。と言うか、自分でも自分の能力を完全に把握しきれていない程に進化してしまった。
しかし、彼女の身体のサイズがメアリーと殆ど変わらなくて助かった。メアリーが一階中の部屋を探したが着られそうな服は無く、仕方なくメアリーの着替えを彼女に着せている。
見た目十五歳位の女の子を膝の上に乗せてお茶している俺の目は、今完全に死んでいるだろう。飲み食いする必要ないんだけど、飲まなきゃやってられないんだよ。寧ろ酒でも飲みたい位だ。
完全に見落としていたんだ。生まれてから百五十年間、殆ど人との接触も無く、ベッドから出た事が無いと言う事が如何言う事なのかを。
早い話が、彼女の精神年齢は幼女のそれと変わらないと言う事だ。そして自身では如何する事も出来ない運命を変えてくれる人が現れ救ってくれた。その結果、刷り込み的に俺に懐いてしまったと言う訳だ。
「ブレッド様・・・やはり着られそうな服は御座いませんでした」
「はぁ・・・だよなぁ・・・百五十年だもん、用意してある訳無いよなぁ。仕方ない、村人達に分けた物資の中に服も有ったから幾つか分けて貰おう。後、名前も付けてあげないと」
「そうですね。バルダーク様達に伝えてまいります」
「いや、もう既に動いてる。メアリーを連れてきた俺が皆に声を掛けてるから直に集まるだろ」
「流石です。では、私はお二階の方の片付けをしてまいりますので、何か御座いましたらお呼び下さい」
「お兄ちゃん、これもっとたべたい!」
「はいはい」
ザラザラとクッキーの俺をテーブルの上に置かれた皿に出した。彼女の呪いの効果は完全に消えた訳ではない。直ぐにでも外に出して村人達と会わせてあげたいが、それも叶わない。子供達とも遊ばせてあげたいんだけどなぁ。
え?ああ、そうだよ、俺が服を着せてあげたんだよ!仕方ないだろ!他に触れる人が居ないんだから!!あぁ・・・パンツ履かせてる時のメアリーの視線がああぁぁぁ!!・・・ハァ・・・何かもう色々捨てた気がするよ・・・・・マジで泣きてぇ・・・・・
ここまで読んで頂き有難う御座います。