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 雪のちらつく中、俺は依然として村の入り口で拘束されたまま座っていた。時折通り掛る人に声を掛け、一人でも多くの人に理解して貰い、食べて貰えるように。


「坊主、甘いパン食べたくないか?そっちの奥さんもどうだい?ああ、勿論拘束を解いてくれとか、他の人を説得してくれなんて言わないからさ」


「お兄ちゃん、あたし甘いパンって食べてみたい!」


 声を掛けた親子とは別の女の子が俺に話しかけて来た。こう言う時って女の子の方が度胸有るよな。


「おーいいぞ。バルダークさん、この子の家族何人?」


「ん?ああ、四人だ」


「お嬢ちゃん、白いのと赤いのと黒いのが入った奴どれがいい?全部あげても良いけど、それだと晩御飯食べられなくなっちゃうから一つだけ選んでね」


「う~ん・・・赤いのがいい!」


「ほい、ジャムパン四つね。お家の皆と仲良く分けるんだよ」


「うん!ありがとう、お兄ちゃん!」


 女の子がジャムパンを抱えて笑顔で家へと走って行く。俺が声を掛けた男の子は母親に食べてみたいと強請っているが母親は良い顔をしていない。


「はぁ・・・仕方ないわね。さっきの子と同じ物を頂戴。一つでいいわ」


「はい、ジャムパンですね」


 近寄ろうとしない親子にバルダークさんがジャムパンを手渡す。何だかんだ言って付き合ってくれてるこの人も義理堅いと言うか優しいよな。


「バルダークさん、有難う。あんたが付き合ってくれてなかったら、多分受け取る人はもっと少なかったと思う」


「気にするな。お前を連れて来たのは俺だからな。可能な限り付き合うさ」


「今物資を乗せた第一陣が鉱山都市から数えて一つ目の山の中腹に着いた。可能な限り急いではいるけど、登りはかなりきついな。下りに入ったとしても無理して荷車が壊れたら洒落にならんし」


「そうか・・・だが、元々無かった物だ、何とかするさ。食料の心配をしなくて済むだけ有り難いと言うものだ」


「全員が受け取ってくれればいいんだけどなぁ・・・・・」


「フッ・・・お前が出してくれた分だけ村で作った食料の消費が減る。受け取らない奴の分はそこから出せばいいだけだ。問題は無い」


「そっか・・・ここは夜が来るのが早いな・・・・・バルダークさん、夕食のパンを配るのも手伝って貰えるかい?」


「ああ、勿論だ」


 山の向こうに夕日が落ちる。一人でも多くの人を助けたい。一日、いや一時間でも早く物資を届けたいと、逸る気持ちを抑えて今の俺に出来る事を熟して行った。


*


*


*


 静まり返った領主館の執務室で乾パンから人型になって書類を漁った。全裸なのが心許無いが、致し方ない。脱税とか不正の証拠となる裏帳簿でも無いかなと、棚や机の引き出しを探した。まぁ、そんなもん簡単に見つかる訳も無く、取り合えず領主が尻尾を出すのを待つかと、昼間の言動に注意する事にした。不正してなかったら意味無いけど。


 この倉庫は少し埃っぽいな。棚や木箱を調べてみたが紙やインク等の備品置き場のようだ。俺が要るとしたら使用人のお仕着せ位かな?


 応接室は・・・特に無いか。壁に掛かった絵画の裏とかも見てみたけど隠し金庫も無いし。来客でもない限り使う事は無いのかもしれないな。


 領主と奥さんは別の部屋で寝てんのか。仲が悪そうには見えなかったけど、表向きだけなのかね?


 長男は酒飲みながらニヤニヤしててキモイ。次男は寝てるな。あ、娘さんと奥さんの部屋にはメアリーが俺を置いてくれなかった・・・いや、別に着替えを覗きたいとか、襲ったりとかしないからね?


 で、当のメアリーはと言うと、俺の事なんか気にしないで着替えるし、寧ろ見て下さいとか言い出す始末で、俺の方が困っている。今も無警戒にベッドで寝てるし。まぁ、変に警戒とかされても困るんだけど。


 領主館の探索初日は特に何も見つけられずに終わった。出来ればメアリーの仇も取ってやりたいんだけどなぁ・・・・・

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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