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後日談 01

 その異様な光景を最初に発見したのは二十名の護衛を率いる冒険者の隊長と、道中の護衛を依頼した商会長だった。


「予定より早く着きそうで良かったですね、商会長」


「ええ、今回は何時もより魔物も出ませんでしたし運が良かったです。尤もあの坂を登り切るまでは気は抜けませんけど」


「解ってます。俺達も慣れたもんですけど、最後まで気は抜きませんからご安心を」


「勿論信用していますよ。でなければ何度も依頼しませんから」


「その信用に応えるためにも、そして次回も依頼して頂くためにも、帰りも気を抜く事無くやり遂げて見せますよ」


「宜しくお願いします・・・・・これは帰ってからお話ししようと思っていたのですが・・・良かったらうちの専属になりませんか?勿論他のメンバーも含めてですよ」


「あ・・・有難う御座います。今夜にでも仲間に相談してみます」


 隊長と商会長が警戒をしつつも話しながら緩い坂を登り切った時、その目に映る光景が信じられずにその場で手綱を引いた。


「おっと!・・・隊長!こんな所で止まるなんて何が有ったんですか?!」


 何時もなら止まる事無く先へ進む筈なのにと、護衛の一人が隊長へと疑問を投げかけた。それに対して隊長は


「・・・何も、無い・・・・・」


 と答え


「は?何も無いなら先に進みましょうよ」


 隊長の答えに先へ進む事を部下が促すと、隊長は振り返り


「違う!!無いんだ!何も!何時もなら見える筈の防壁も!その中に見える王城も!!な、何もかもが・・・王都が無くなっちまってんだよ!!」


 悲痛な叫び声を上げた。


 ブレッドとデュランの二人を除いた『ウェイスランド王都消滅事件』の第一発見者である彼等は、自分達の目に映る光景が信じられず、かと言って確認するために近付く事も出来なかった。目に映る光景が真実だとしたらと、恐怖に捕らわれ坂の上で眠れぬ一夜を過ごした。


 そしてそのまま朝を迎え、目の前の景色が、王都が消え去ってしまった事が現実なのだと涙を流し、項垂れながら元来た道を帰って行った。


*


*


*


 ウェイスランド王都消滅事件の翌々日、俺はデュランさんを連れて周辺国に知らせて回り、ウェイスランドで国境付近に領地を持つ貴族の所にも知らせて回った。まぁ信じて貰えなかったけど。


「別に信じなくても良いけど、王都周辺の町や村で騒ぎになるのは時間の問題だから。あんた等残った貴族が統治しないと暴動が起きてもおかしくないからな?せめて人を送るなりして確認位はしとくんだな」


 言うだけは言ったとその場を後にし、周辺国には当面は介入しないようにと告げて暫く放置した。


 で、十日後にはあっさり泣きを入れて来やがったので生き残りの伯爵三名を連れて王都跡地へ。


「こ、これが王都だと?!一体何が有ったと言うのだ!」

「魔王!貴様がこれをやったのではないのか?!」

「陛下・・・・・残された我等は如何すればよいと言うのですか・・・・・」


「そこの貴様、言葉を慎め。其方等はブレッド陛下の恩情で生かされていると言う事を忘れるな」


「止せ、デュラン。あんた等が信じられないのは解る。だが、これが現実だ。現状俺が周辺国を止めているが『好きにしていい』と言えば直ぐにでも攻め込んでくるだろうな。その時、あんた等の持ってる領兵だけで持ちこたえられるのか?」


「あ・・・いや、それは・・・・・」


「不可能だろう?その時ウェイスランドは切り取られて消滅する。当然あんた等貴族は皆殺しで領民達は二等国民、奴隷に近い扱いになる訳だ。だが、あんた等三家が力を合わせて国を再建すると言うなら力を貸そう。周辺国は俺が抑えるし、同盟や通商条約も結べるように口を利いてやるが如何する?」


「・・・・・少し、考えさせて貰えるか?」

「家臣達にも相談しなくては・・・・・」

「む、無理だ・・・我等だけでこの広大な地を治めるなど・・・・・」


「ブレッド陛下、こ奴等なんぞ放っておいて周辺国に任せた方がよさそうですぞ」


「そう言うなって。取り合えず五日だけ待ってやる。期限を超えても返答の無い場合はこの話は無しだ。自分達の決断に大勢の命が掛かっている事を忘れるな。いいか、良く考えるんだぞ。『トランスファー』!」


「全く・・・陛下は優し過ぎる。あ奴らが力を付け周辺国に攻め込まないとは限りませんぞ」


「その時は俺とお前で二度と逆らえないように徹底的に痛めつけてやればいいだけだ。違うか?」


「クックックッ・・・まぁ、その通りですな。ああ、これが『飴と鞭』とか言う奴ですか」


「いや、何方かと言うと『馬鹿と鋏は使いよう』だな。あんな奴等でも上手い事利用していかないと人手不足は解消されないからな」


「いやはや、流石ですな。我には思いもよらぬ発想だ」


「俺とお前、足りない部分をお互い補って行けばいいのさ。それじゃ帰ろうか」


「ハッ!」


 伯爵達を送り帰し家に帰った。後日、と言うか三日も経たずに彼等が泣きついて来たのは言うまでもない。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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