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 ただいまおかあさん―――


 お帰り二コラ、如何したの―――


 おかあさん・・・どうしてぼくにはおとうさんがいないの―――


 御免なさい・・・寂しい思いをさせてしまって・・・その時が来たらちゃんと話しますから―――


 ぼくはだいじょうぶだから・・・だから、そんなかなしいかおをしないでおかあさん―――


*


*


*


 建国から五年の月日が流れた。この間に有った事と言えばアンリエッタ王女とオスカーさんが結婚して子供が生まれたり、アルバさんやキースの所にも子供が生まれたり、メアリーが二人目とミレーヌとの間にも子供が生まれたりと国中でベビーラッシュに沸いた。


 メアリーとの二人目も女の子で名前はナターシャ。ミレーヌとの子は男の子で名前はウィルとした。


 娘のエミリーは『お姉ちゃんだから』が口癖で、弟妹達の面倒を見ている。ちょっと危なっかしい所も有るけど元気で優しい子に育ってくれて嬉しい。


 国内整備も順調でロイドとゼルゲルの中間の村も完成し、寒さに強い羊と豚を中心にした畜産業を中心に発展していってる。


 そうそう、ロイドと言えば―――


「今日からこちらで働く事になったジャンって言います!皆さん宜しくお願いします!!」


「おう、お前の事はブレッドさんから聞いてる。うちは孤児院出身ばかりだから堅苦しいのは無しだ。お前には事務を中心に覚えて貰って、人手が足りない時だけ搬出入を手伝って貰うからな」


「はい!」


 ロイドの孤児院で成人を迎えたジャンが独立した『キース運輸』で働き始めた。買い物とか任されていたから簡単な計算は出来ると言う事で足りない事務員としてだ。


 覚える事は多いだろうが真面目な彼の事だ、きっとモノになるだろう。


*


*


*


「こちらゼータ。オリジナル、見えているな?」


(ああ、勿論だ。が、最初のお客さんは魔物だと思っていたんだがな・・・・・)


 山奥で無人の廃墟となっていた元魔族の村に一人の男が北の山を越えて現れた。


「これは一体如何言う事だ・・・誰か!誰か居らんのか!!」


 その男は誰何の声を上げながら村を散策していた。


 二足歩行の蜥蜴、リザードマンの様な出で立ちだが、蜥蜴とは明確に違った部位を持っている。側頭部には角が後方へと向かって伸び、背中には一対の翼が生えている。おそらくはドラゴニュート、竜人だろう。


「・・・間に合わなかった、のか・・・何と言う事だ・・・済まぬ王よ!!我が不甲斐無いばかりに!!」


 男はその場に崩れ落ち、悲痛な謝罪の叫び声を上げた。


「如何するオリジナル。声を掛けた方が良いと思うか?」


 ゼータの問いに俺は躊躇していた。彼の発する言葉から敵では無いようだが、下手に姿を見せて彼を刺激した時、彼がどの様な行動に出るか測りかねていたからだ。


 物語に出てくる竜人と言えば戦闘種族として最強と記憶していた。それだけならまだしも彼の身体は俺と同じように金色の光を発していたのだ。


 万が一にも敵対するような事になれば、純粋な戦闘職でない俺が彼に勝てるとは思えない。オリジナルが負ける事は許されないし、だからと言って分身達では何人居ても太刀打ち出来ない事は明白だ。


「・・・・・王よ、同胞達よ、其方等の無念必ずや我が晴らしてくれようぞ・・・この命尽きる前に脆弱な人族を一人残らず消し去ってくれる!!」


 俺が考え込んでいる間に彼がとんでもない事を言い出した。


「オリジナル!一刻の猶予もなさそうだ!俺が出るからバックアップを頼む!!」


(解った・・・だが無理はするなよ)


 ゼータが建物の陰に乾パンを撒きながら彼へと近付いて行くと、彼が誰何の声を掛けてきた。


「誰だ!」


「俺の名はブレッド。少し話をしたいのだが―――」


 建物の陰から両手を上げたゼータが彼の前に出て話始めると彼は―――


 貴様か―――


 と呟き―――


「え?・・・ぁ・・・・・」


 次の瞬間に彼はゼータの視界から消え、俺は背中から強い衝撃を受け―――


 鋭い爪と鱗の生えた腕が自身の胸から生えている視覚を最後にゼータは消滅した。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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