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エミリーの誕生日を盛大に祝ったり、キースとアルバさんに子供が出来たと報告が来たり、冬支度で忙しくしている時にオストレイクの国王に呼ばれた。
「ブレッド殿、少々気になる話を聞いたのだが、真偽の程をお聞かせ願いたいのだ」
「何の事か解らんけど、答えられる事なら何でも話すぞ」
「なんでもイステリアのために別荘を建てたと言うではないか!それが真実ならば何故私に声を掛けてくれなかったのだ!水臭いではないか!」
「いや、別に別荘を建てた訳じゃなくてだな、迎賓館とそれを中心に他国の貴族用に邸宅を建てて貴族街を作ってる最中なんだよ。イステリアからの提案だったから迎賓館が完成した時にイステリアの貴族を招待したってだけで貴族街が完成したら他の国にも声を掛ける予定だったんだよ」
「そ、そうか、それでは何時完成するのだ?」
「今の所三軒完成しててだな―――」
「買ったああぁぁぁ!!その三軒は我が国で買い上げる事にするぞ!その内一軒は王家の別荘にする!!」
「お、おう・・・でも良いのか?うちの冬はこちらと違ってかなり厳しいぞ。掃除とか建物の維持をする使用人とかが可哀そうじゃないか?」
「そこはきちんと説明をして手当を上乗せすればよかろう。耐えられないと言うなら入れ替えれば良いだけの話ではないか」
「まぁそれもそうか。強制しないならいいかな」
そんなこんなで半ば強引にだが、出来たばかりの邸宅が三軒とも売れた。そして翌年の春には管理する使用人達が来て、夏には余暇を過ごす貴族も来る事になった。
そして冬前に完成した十軒の邸宅はイステリアとオストレイクが三軒、エルベフォンとカーナデルが二件ずつ購入。各国の貴族達の間で避暑地として順番待ちをする程の人気になるのだった。
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「こちらに来て大分と経ちましたけど、貴方のお眼鏡に叶う方は居りましたか?オスカー」
「数名は見込みの有りそうな者も居りますが、後を継げる者となりますと本人の意思が重要になりますし中々・・・・・」
「貴方は何の話をしているのですか?私はそのような事は聞いておりませんよ」
「は?一閃流の継承者の話ではないのですか?」
「そんな物は貴方が継いだ後に貴方が決めれば良い事ではありませんか。私が聞いているのは貴方のお相手の事です。自分で決められないのでしたら私が決めてしまってもよいのですよ?」
「それは・・・その・・・・・」
「先日来た文の中に貴方との縁談の申し入れが有りました。私は貴方にとってもこの国にとっても良い話だと思っています」
「この国にですか?その方は何方なのでしょうか?」
「イステリア王国第二王女アンリエッタ殿下です」
「あ・・・あの方ですか・・・・・」
「私はこの地を安住の地と決めました。私が生きている間に剣を振るう事はもうないでしょう。ですが、貴方は、貴方達は如何しますか?ブレッド様は未来を見据えて動いています。いつ寿命が尽きるか解らない自身の亡き後もこの国が存続し続けられるようにです・・・・・私の後を、一閃流を継ぎなさいオスカー。この剣を受け取るのです。そして来るべき日のためにアーサーの技と私の意思を後世に残し、陰ながらこの国を護るのです」
「そ、その剣は・・・・・解りました奥様・・・謹んで御受け致します」
ヘルガさんが差し出した一本の剣をオスカーさんは片膝を着き両手で捧げ持つように受け取った。
「受け取りましたね?今更無かった事には出来ませんから。ブレッド様、イステリアにお受けしますとお伝え下さい」
『ああ、解かった。先方にはそう伝えておくよ』
一閃流を継ぐのと縁談を受けるのは別の話だと思うんだけど良いのかね?
「なっ!?」
「貴方の子を抱く日を楽しみにしてるわね、オスカー」
追い込み方がエグイなこの人は。畳み掛けて考える暇も与え無いのかよ。
「グッ!・・・は、はい・・・・・」
翌年の春に遣って来たアンリエッタ殿下とオスカーさんのお付き合いが始まり、冬が来ても彼女がイステリアに帰る事は無かったと言う。
そして暫くの間オスカーさんの俺に対する態度がきつかった事は言うまでも無い。いや、俺が計画した訳じゃないからね?
ここまで読んで頂き有難う御座います。