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オストレイク王城国王執務室。
「陛下、イステリアから大使が謁見の許可を持てめて来ておりますが如何致しましょうか?」
「ふむ・・・この春から色々と噂を聞いておる事だし会ってみるのも良いか。明日の午後なら時間も取れるであろう」
「では、そのように予定を組んでおきます」
「うむ、頼んだぞ」
と言う訳で、イステリアの協力を得てオストレイクの王様との謁見の約束を取り付けた。一人で行ったら会って貰えないだろうし、行き成り王様の前に現れたら揉めるからね。
で、翌日イステリアの大臣と一緒に謁見したんだけど、色々根掘り葉掘り聞かれたから答えられるだけ答えてきたし、こっちの要件も伝えて来たよ。勿論この国の教会は制圧済みです。
そしてオストレイクも俺に付く事が決まった。デルタが向かったエルベフォンの南の国、カーナデル王国とも近い内に接触する予定だ。
先ずはウェイスランドとアデルを包囲し、孤立させる。大陸制覇はその後だ。
「いやぁ、助かったよ、タルコスさん」
「いえいえ、ブレッド様にはお世話になっておりますからこれ位は。それに転移で送り迎えまでして戴けるのですから何の苦も御座いません」
「そう言って貰えると助かるよ。近い内に国王さんに礼を言いに伺うって伝えて貰える?」
「勿論ですとも。陛下もブレッド様に直接礼を言いたいと申しておりましたから、何時でもいらして下さい」
イステリアの国王と言うか、王家の人達には教会の件で気に入られている。孤児院を俺が経営している事も要因の一つだ。イステリアは製塩と漁業で成り立っている小国なのだが、孤児の殆どが漁で親を亡くした子達なのだ。
近年は造船技術の発達で海の魔物に襲われる事も少なくなったが、まだまだ魔物の攻撃に耐え切れる船が揃っている訳ではないのだそうだ。
孤児達の中には将来漁師になりたいと言っている子達も少なくない。あの子達が大人になるまでに国で漁船を用意してやりたいものだと国王は言っていた。
力になれれば良いんだけど、俺は船に詳しくないんだよなぁ・・・前世で何の仕事してたんだろ?記憶が殆ど無いんだよなぁ・・・・・
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ロイドの町役場に二人の男女が訪れた。身形の良い、一目で高貴な身分と判る服装の二人は職員の案内で奥の応接室へと通された。
「ようこそ御出で下さいました。私はロイドの町を任されているザイツェンと申します。戴した御持て成しも出来ませんがどうぞお座り下さい」
「そう畏まらんでも良い。この国では身分の上下は無いと聞いている。私自身も堅苦しいのはあまり好きではないのでな。それに、今日は公務で来た訳では無いのだ・・・そこの二人、私達の娘と義理の息子に会いに来ただけなのだから」
「二人とも、顔を上げて頂戴・・・ザイツェン様、申し訳ありませんが暫く席を外して頂けますでしょうか?」
「はい。では、何か御用の際は声をお掛け下さい」
ザイツェンさんが部屋を出て扉を閉めると、室内から女性二人の泣き声が聞こえて来た。まぁフォスターと奥さんのマリアンヌさんがロザンナさんとアルバさんに会いに来た訳で、その一部始終を俺は見ていたのだが、それを口外するような無粋な真似はしない。
その後は町中を四人でぶらついてベンゾさんの屋台に寄ったり各商店や孤児院を見て回っていた。
「良い町だ・・・魔王、今も何処ぞで見聞きしているのだろう?もう、十分だ」
「なんだ、もういいのか?何ならゼルゲルの方も視察してもいいんだぞ」
フォスターに呼ばれたので転移でフォスター達の前に姿を現した。
「ああ、それはまたの機会にしておこう・・・確かに貴様の言った通りだった。この町は私達では成し得なかった理想とも言える場所であったよ。尤も、規模は小さいがな」
「まぁ、その辺は今後の課題だな。アルバゴーン王都の規模でも出来れば良いんだけど・・・正直ロドリゲスはよくやってると思うよ」
「陛下にはそう伝えておこう。では帰るとしようか、マリアンヌ・・・・・二人とも壮健でな」
「子供が出来たら教えてね。孫を抱く日を楽しみにしてますからね」
転移でブラッドリー夫妻を自宅へと送った。アルバさん達の子供か・・・フォスターの爺馬鹿っぷりがみられるのもそう遠くないかもしれないな・・・あの見た目だから怖がられて落ち込むかもしれんけど。
ここまで読んで頂き有難う御座います。