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「見張りご苦労だったな、ブラボー。もう行っていいぞ」
「いや、そんな事より良いのか?何なら俺がやっても良いんだぞ」
「これは俺が決めた事だから、お前達分身にやらせる訳にはいかないよ。ちゃんと自分自身で背負わないとな」
「そうか・・・そう、だな。それじゃ、せめて俺にも見届けさせてくれ」
オリジナルの俺はブラボーに預けていたアデルと次期アデルに止めを刺すためにイステリアの南部の山奥に来ていた。
二人は結界の中で気を失ったまま横たわっている。
「さて、やるか・・・『ロールグレネード』!」
結界上部四か所のロールパンから同時にロールパン型の榴弾が二人のアデルに向かって発射され、爆音と共に二人の身体は破壊されて無残な姿を晒した。
結界を解除し二人の躯を持ってきたスコップで穴を掘って埋葬した。ブラボーは一言も発する事は無く、唯見守っていてくれた。
「付き合ってくれて有難うな、ブラボー。俺は帰るけど、お前はまだ旅を続けるんだろ?」
「ああ、もう直ぐ次の国、オストレイクとの国境の町に付くよ。到着したらイステリアの担当はゴルフになるのか?」
「その予定だけど、コードネームの無い奴も多いんだよな。まぁ、個別の認識は出来てるから気分で付けてるだけだけど」
やるせない気分を紛らわそうとブラボーと少し軽口を叩いてからお互い転移で移動した。もっと他に遣り様が有ったかもしれない。だが、後悔はしていない。喩え血塗られていようとも、自分で決めたこの道を進んで行くと決めたのだから。
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南砦の門前に立つフォスターにウェイスランドの国王を引き渡した。
「こいつはあんた等に預けるから連れ帰って賠償とかの交渉を進めてくれ。終わり次第俺が送り届けるからさ」
俺が運んだ方が早いけどこいつ等にも面子とかあるし、手柄は必要だからな。
「あ、ああ、解かった。それで、アデルは?」
「宣言通り始末したよ・・・生かしておけば俺達にとって脅威に成りかねないからな・・・・・」
「そうか・・・奴にはこの傷の借りを返したかったのだが・・・一応礼は言っておく、助力感謝する」
「これからは俺が国境の監視と警備をする事になってるから、国外より国内の警備を強化してくれるか?」
「それは陛下にお伺いを立ててからになるな。私の一存では決められん。それよりロザンナは如何している?」
やっぱり聞いてきたよ。まぁ、今までみたいに騒がないだけましか。
「ロイドの町役場で夫婦揃って町長のザイツェンさんの補佐をしてるよ。良かったら会いに来てくれるか?ロザンナさんも家族の皆に迷惑を掛けた事を気にしてるからさ」
「そうか・・・今回の件が片付き次第会いに行くと言っておいてくれるか?それと、お前の気持ちに気付いてやれなかった私も悪かったともな」
「ああ、伝えておくよ。それじゃ俺は行くけど、まだ何かあるか?」
「そうだな、一つだけ。あの姿に誰でも成れる可能性が有ると言っていたが、あれは本当か?」
「ああ、嘘は言って無い。だが、目指すだけ無駄だぞ?俺やアデルのように成りやすい奴は殆ど居ない。フォスター、お前の場合は年齢的に不可能だから諦めな」
「ああ、目指すつもりは無い。貴様との差を埋める事など出来ぬと、今日改めて気付かされたからな。全く・・・出鱈目な奴だよお前は」
「クックックッ・・・お褒め頂き恐悦至極に御座います、将軍閣下。では、また何れ」
フォスターと少しだが解り合えたかもしれない事が俺の心を少し救ってくれた気がした。
ここまで読んで頂き有難う御座います。