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さて、アデルのお二人さんが如何出るのかと眺めていたらウェイスランドの将軍さんが二人の前へと移動した。そう言やこの人の名前知らんな、如何でも良いけど。
「アゼリア様、あの者が魔王に御座います。如何かお力添えを」
「そのようですね。将軍、少々お時間を頂けるかしら?」
「はい、それは構いませんが―――」
「おい、おっさん!てめぇ邪魔なんだよ!俺様の前に立つんじゃねぇ!!」
「お・・・ぁ、し、失礼しました」
おいおい、将軍ともあろうお方が若造の覇気に負けて引いちゃダメだろ。
「全くこの子は・・・少々お聞きしたい事が有りますが宜しいでしょうか?魔王様」
「聞きたい事って闘神の事だろ?それだったら俺は闘神なんかじゃない。と言うか、それはお前等の祖先が勝手に作った呼び名でしか無いだろ」
「では、貴方に闘神様が降臨したと言う事実は無いと言う認識で間違い御座いませんか?」
「間違い無いな。そもそもお前達は勘違いしている。あの姿は誰にでも成れる可能性があるし、俺は偶々成り易かっただけだ。教えてやるよ、あの姿は種族を問わない、生命体としての最終形態でしかないんだよ」
「「「「「なっ!!」」」」」
俺の爆弾発言にその場に居た敵味方全ての人が驚きの声を上げた。
「そ、それが真実だと言う証拠は?」
狼狽えながらもアゼリアが俺に問い掛けてきた。だが証拠なんて出しようがない。だから俺は逆に問いかけた。
「そんなもん証明しようがないだろ。寧ろ俺が聞きたいね。何故初代アデルはその事を誰にも伝えていない?あの姿に至った〝アデル〟ならば知っていた筈だ!俺は知らされたぞ!この世の〝理〟の一部に触れた者なら知っていて当然の事だ!!」
「そ、それは・・・・・」
俺の問いに更に狼狽えるアゼリアに俺は畳み掛けた。
「知って欲しくなかったんだろう?知れば目指していた筈だ。お前達子孫には戦い以外の道を歩んで欲しかったんじゃないのか?お前達は初代の気持ちを無視して利用しただけだ!金と権力欲しさにな!!」
「フッ・・・耳を貸してはなりませんぞ、アゼリア様。奴は魔王、自分の都合の良いように話を進めているだけです」
「信じる信じ無いはお前達の自由だ。が、ウェイスランド軍には今直ぐ撤退して貰うけどな」
「フン、この壁が有る限り撤退は出来んし、貴様も攻撃出来んのではないか?維持出来なくなるまで待ってから貴様を倒せば良いだけの事ではないか」
「い~や、直ぐ撤退する事になるぜ」
俺がそう言った次の瞬間、俺の隣に拘束されたウェイスランドの国王が現れた。
「なっ!へ、陛下!!貴様、卑劣な真似を・・・・・」
朝一で寝起きの王様を拉致しといたんだよね。犠牲を出さずに収めるならこれが一番手っ取り早いからさ。
「そう言う訳だからウェイスランド軍は壁ぎりぎりまで後退しな。遠征費用とか賠償の話が終わったらこいつはお城まで送り届けてやるからよ」
「クッ!総員後退だ!!」
「さて、〝アデル〟の皆さん。あんた等は如何するよ?因みに教祖のアデルも今直ぐここに連れて来てやろうか?」
「な、何が望みです?」
「あんた等に要求する事はくだらねぇ権力を捨てて真っ当な宗教活動をする事と『神の慈悲』とか言うふざけた薬の製造及び販売の停止だ。アルバゴーン、イステリア、エルベフォンの教会が行っていた不正の証拠と不正を行っていた司祭達は既に抑えてある。そいつ等は全員、後日大聖堂前の広場に不正の証拠と共に送ってやるよ。その時〝アデル〟の街での不正の証拠も一緒にな」
「そ、そんな―――」
「おい!婆ぁ!!もう良いだろう!!あいつを殺しゃ全て終わんだろうが!!俺ぁもう我慢の限界なんだよ!!」
「ま、待ちなさい!!」
「おらああぁぁぁ!!」
ずっと大人しくしていた次期アデルがアゼリアの静止の声を振り切り、叫び声を上げながら結界に向かって駆け出した。さて、どんな〝力〟の持ち主か見せて貰うとしますかね。
ここまで読んで頂き有難う御座います。