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 ウェイスランド軍が国境に到着した日の夜。夕食後にメアリーが神妙な面持ちで話し始めた。


「あの・・・皆に話があるんですけど・・・・・」


「なに?どうしたの?」


「その・・・子供が出来たかもしれません・・・・・」


「「「「「えっ?!」」」」」


 メアリーのその言葉に、その場に居た俺達だけでなく、作業をしていた各地の俺達まで動きを止めた。


 沈黙の空気が漂う中、最初に言葉を発したのはセシリアだった。


「ほ、本当に?」


 セシリアの問いにメアリーは申し訳なさそうな顔をして答えた。


「まだ三回分遅れているだけなので確実では無いんですけど・・・体調の変化もありませんし・・・・・」


 そしてミレーヌが腰を浮かせながら声を上げ。


「もう決まったようなものじゃない!おめでとうメアリー!私お洋服作らなくちゃ!」


「おめでとうメアリー!私も出来る事手伝うから無理しないでね!」


 と、セシリアが続き、俺は―――


「ありがとう・・・ありがとう、メアリー・・・・・」


 膝の上に座るメアリーを優しく抱きしめ、涙を流しながら唯感謝の言葉を告げる事しか出来なかった。


 唯々嬉しかったんだ。食パンとして生まれたこの俺に子供が出来る事は無いんじゃないかと思っていた。だとすれば三人の妻達に申し訳ないとも思っていた。寿命が有るかも解らないこんな俺を愛してくれている妻達に如何詫びれば良いのかと。


 メアリーは俺の腕にそっと手を触れて


「ブレッドが喜んでくれたのは嬉しいのですが、良かったのでしょうか・・・私が最初で・・・お世継ぎの事もありますし」


 と言って俯いた。そして少しの沈黙の後、セシリアが


「何言ってるの!良いに決まってるじゃない!!一番最初にブレッドを好きになって、一番最初に愛されたのはメアリーなんだからメアリーが最初で良かったって私は思ってる!世継とか関係無い!後を継ぐとか本人が決める事でしょ?」


「そうよ、セシリアに言う通りだわ。そんな事より今は自分の身体を大事にしてね」


 と言い、ミレーヌが続いた。


「二人とも有難う。次は二人の番ね」


「どうかしら?元々魔族は子供が出来にくいし、案外メアリーの二人目の方が早いかもしれないわよ」


「そうよね・・・それに私はブレッドとまだしてないし・・・・・」


「「えっ?!」」


 今度はセシリアの告白でメアリーとミレーヌが驚きの表情で固まり


「ちょっと、ブレッド如何言う事?結婚してから何日経ってると思ってるの?」


「それは私も聞きたいですね。子供の振りをしていた頃を差し引いても、もう新期も終わりますし」


 二人の厳しい視線が俺を捕らえ、俺の額から汗が流れた。


「い、いや、その・・・メアリーとの時もだったけど、見た目がね?俺の元居た世界じゃ二人ともまだ子供にしか見えないと言うか何と言うか・・・その・・・・・」


「そんなの言い訳にもならないわ」


「そうですよ、私の時は私から半ば強引にしましたけど、いくらなんでもおかしいと思います」


 その後二人に小一時間説教された。だってしょうがないじゃん。見た目の事もだけどセシリアは正当な王位継承者だし。寿命が有るかも解らない、子供が作れるのかも解らない俺が迂闊に手を出すのは如何かとも思ったんだよ。後セシリア担当は金ピカだし。


 で、結局その日の夜にセシリアとする事になったんだけど、罪悪感が半端なかったよ・・・ずっと寝てたせいで成長の遅いセシリアの見た目は十二、三歳位だし・・・・・


 翌朝。満面の笑みのセシリアと、少し項垂れた俺をこれまた笑顔で迎えるメアリーとミレーヌ。ウェイスランド軍も動き始めたし、切り替えていかないとなぁ。


「それじゃ三人には悪いけど、朝食が終わったら膝の上から降りてくれ。いつでも出られるようにしておかないとな」


「うん、解かった。一人で無理そうなら私も呼んでね」


「セシリアの〝力〟は使って欲しくないから、そうならないようにするよ」


 もうあんな思いはしたくないしさせたくない。それに子供も生まれるんだ。夫として、親として、そして、一国の王として皆を護ると改めて覚悟を決めた。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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