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「似てるっちゃあ似てるかな?やっぱ長年戦争が無いと性格も温和になんのかね?まぁ、表側だけだけど・・・・・」
アデルの街中を散策しているんだけど、住民達は皆笑顔だし、ゼルゲルやロイドみたいに活気が有って良い街なんだよな。まぁ、それはメインの大通り付近の話だけど。
何て言うか貧富の差が激しいんだよ。大通りを離れ、外壁に近付く程に人の服装や建物がみすぼらしくなって行く。街を囲む四角い外壁の四隅にはバラックが犇めき合い、ぼろい貫頭衣を着て腰を麻紐で結んだ住民達が生気の無い目であちこちに転がっていて三日に一度の炊き出しで生を繋いでる状況だ。
こんな生活をしている人が何人いるのか、そして一日に何人の人が亡くなっているのかすら解らない。碌な産業の無い街が肥大化した弊害なのかもしれないが、だとしてもこれは酷過ぎる。国民の三分の一から半数近くが貧民なんじゃねぇの?
普通はこんな状況だと暴動が起きると思うんだけど、暴動処か戴した犯罪も起きていない。その理由は法衣を着た連中が巡回しているからだ。通報されたり、教会関係者、司祭達に見つかれば神の名の下に即処分される。大規模化する前に潰されると言うのもあるが、教祖の〝アデル〟の持つ『祝福』には敵わないし、逆らえないと言うが最大の理由だ。
未だに教会最深部には到達出来ていないけど、そこに居る筈の〝アデル〟と、その親族達による絶対君主制の歪な国ってのがこの国に対する俺の感想だ。
「う~ん・・・・・流石にこの規模は連れていけないし、如何すっかなぁ・・・・・」
南門からその先に広がる畑を眺めながら呟いた。チャーリーは更に南へと行ってしまった。今はこの俺、エコーがこの街の担当だ。
食事を与えるだけなら簡単だが、住む所と仕事もとなると話が変わってくる。何にしても何時でも〝アデル〟を抑えられるように最深部に到達してからだなと、街の中心に聳え立つ大聖堂へと足を向けた。
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俺は今ヤンクさんからの救援要請を受け、ロレンツとその部下達と共にローグ商会へと向かっている。例の粛清の影響でローグ商会に注文が殺到しているらしいのだ。
「ああっ!ブレッドさん!ロレンツさん!呼び出して済みません!兎に角配達とか手伝って下さい!!うちだけじゃ手が足りないんですよ!!」
「おお、それじゃ、俺は袋に小麦粉詰めて行くからロレンツ達は配達の方頼むよ・・・ってロレンツ?」
なんかロレンツが俯いて震えてんだけど、どうした?
「クックックッ・・・来た・・・ついに来たぞ!!おい!てめぇら!!配達先で粗相すんじゃねぇぞ!!こいつはただの配達じゃねぇ!ブレッド様のお力を世に示す戦だ!!野郎共!抜かるんじゃねぇぞ!!」
「「「「「おう!!」」」」」
「ヤンクさんはこいつらに配達先の指示を、ブレッド様は私と倉庫に向かいましょう」
「「お、おう?」」
「クックックッ・・・面白くなってきたぞおおおぉぉぉ!!ハハハハハ!!」
笑いながら倉庫に向かうロレンツと呆気にとられて顔を見合わせて首を傾げる俺とヤンクさん。何でそんなにテンションたけーの?
「何しているんですかブレッド様!ヤンクさんも!時は待ってくれませんよ!!」
「お、おう。それじゃ俺は倉庫に行くから」
「え、ええ。よろしくお願いします」
戸惑いながらもロレンツについて行く俺と指示を出すヤンクさん。時々、ロレンツは二重人格なんじゃないかって思うんだよなぁ。いや、あっちの方が本性なんだろうし、見た目ともマッチしてんだけどね。
ここまで読んで頂き有難う御座います。