第8話 残酷な真実
前回までのあらすじ
シャーロットと盗賊団のボス、ガレットの決闘中、
康介はシャーロットを探し、大声で彼女の名を呼ぶ。
しかし、康介が見たのはシャーロットがガレットに吹き飛ばされた光景だった。
「シャーロット!」
康介は走りながらまたそう叫ぶ。
「シャーロッ……」
この時、目の前の光景により少女の名を呼ぶことが阻まれる。
そう。そこには大男に金棒で殴り飛ばされたシャーロットの姿があったのだから。
「シャーロット!大丈夫か、おい。おい!!」
康介は大男を素通りし、倒れているシャーロットの元へかける。
勿論、大男も康介のその愚行を見逃すことはない。
「馬鹿…後ろ!!」
シャーロットがそう言うと、康介の後ろには大男が大きな金棒を振り落としている姿が…
「くっ!!!」
シャーロットは最後の力を振り絞り、雷のように落ちてくるガレットの金棒を剣で受け止めた。
「っ!」
腕が折れるのを感じシャーロットは歯を食いしばる。
「シャ、シャーロット……ごめん、俺……!」
「し、勝負に負けたのは私のせい。そして今のは…貸し一つよ。けど…返さなくていい。私の、最後の抵抗…自己満足…だから…」
が、シャーロットは今度こそその衝撃に耐えきれず、白目を剥き、
「逃げ、て…」
そう少女はそう言って倒れ込んだ。
「……おい……馬鹿、起きろ、起きろよ、頼む!!」
「うるせえな。気絶してるだけだろ……」
「あ?」
康介は血走った目で声のした方を見る。
こんなにも怒りが湧いたのはいつぶりだろう。華奢な少女を傷つけ平然としていられるのか理解できない。
「お前、何がしてえんだよ!!」
康介は叫ぶ。
「いきなり出てきやがって……こいつが何したって言うんだよ!!お前がそうやって傷つける権利があんのか!!」
「はっ!権利だぁ?んなもんねえよ。ただ俺は賞金を狙うだけだ」
「しょう、きん?」
「ほーぅ。なんだぁ、一緒にいるから仲間だと思ったが、その反応見ると知らねえくせえな。そいつはなぁ、王国最高の賞金首『王の娘』シャーロット・ベル・メディアン」
「王の…娘?」
「ああ、王国の王女らしい。しかし、王への反逆、クーデターを起こし多くの犠牲者を出したのち王室から絶賛逃走中。信じるかは、お前次第だがなぁ」
ガレットはそうして、シャーロットの顔写真が載った賞金首の指名手配書を見せる。
「そんなの……何かの間違いだ!ふざけんな、何かわけがあるに決まってるだろぉーが!!」
「知らねえよ。理由があろうが無かろうが金にはなるもんは金になる。そこに差異なんかねぇんだ。盗賊の俺らがそいつを狙う理由なんてそれで十分だろぉーが」
相手は盗賊。元々、道に居ただけの康介に襲いかかるような連中だ。理由なんか求めるのも間違いだったのもしれない。
康介は開いた方がふさがらないまま、倒れるシャーロットの姿を見た。
( コイツが犯罪者、だと?…まてよ、俺が何者か聞いた時、答えられなかったのは犯罪者だから……)
いいや違う。やはり、何かの間違いだ。初めて会った康介を助け、あんなにいっぱい教えてくれて…しかも、最後には力を振り絞って康介を庇った…
何か理由が……
「って馬鹿か、そんなこと考えても意味ねえだろ」
理由なんてどうでもいい。今は目の前の悪党を見ろ。
コイツはシャーロットをあんなにも痛めつけた。
人には喧嘩をする時などになんらかののストッパーがある。
人を殴るとき最初から本気で殴れるやつなんてそう居ないし、相手が死ぬまで殴れるやつなんて康介も見たことがない。
ただ、こいつらにはストッパーがない。やってることが不良の喧嘩などとはまるで違う。生きてる世界が違うのだ。価値観も、何もかもが
シャーロットが康介に「逃げろ」と言ったのも頷ける。
しかし、
「……逃げるわけにはいかねぇ」
康介は決心する。
どんな奴が相手だろうとコイツを放っておくことはできない。
シャーロットが負けた相手だ。康介じゃ逆立ちしても勝てないだろう。
だからといって、今頃逃げることもできない。
ただやるしかないのだ。
すると、康介のその様子を見て、ガレットは呆れたようにこう言った。
「おいおい、さっきから正義の香りをぷんぷん漂わせてるけどなぁ……この女が今こうして倒れてるのは……お前のせいでもあるんだぜ」
そう、はっきりと言ったのだった。
「…ぁ?」
何を言っているのだろうか、この男は。
「お、俺が?なんで……俺に何の関係あんだよ!!こいつは俺が守るべきだったとでも言いたいのか?そんなの──」
「……ちげぇよ。見てみろ、この傷」
そう言うと、ガレットは腕を上げ、康介に腹と胸の傷を見せつける。
「ぁ?それが……なんだ?」
「この傷はなぁ、その女にやられた傷だ」
「……何が言いたい?」
「お前が思ってるよりこの戦いは接戦だったんだよ。いや、最後はシャーロットが俺にトドメを刺すところまでいった。だから、今ここに立っているのはシャーロットだったかもしれなかったんだよ……お前のあの叫びがなかったらなぁ」
「…あ?……さけ、び?叫びって……!!」
康介は思い出す。自分がシャーロットのことを探す為に大声で叫んだことを。
そこから何が起こったか。
拮抗した戦い、一瞬の隙が命取りである超人同士の闘い。
そんな中、いきなり大きな声がして、それに反応してしまった方はどうなるか……
それは、大きな隙を見せることになってしまい……
もう、康介がその後のことを考えるまでもなかった。
「シャーロットのやつ、お前の声聞いてびっくりして振り向いてたんだぜぇ。せっかく俺を殺すチャンスだったのになぁ」
「……やめろ」
「お前の介入がなければ、シャーロットは助かってたんだよ!!」
「うるせぇーー!!」
そう言い、康介はガレットに飛びかかる。
なぜだろう、鉄球男と戦ってから妙に体が軽い。
康介は地を踏み締め、ガレットにとびかかった。
ガレットの言い分はわかった。
シャーロットが負けたのは自分のせいだと言うこともわかった。
だが、
(俺はただ、シャーロットが危険だと思って…)
自分のせいでシャーロットが、康介のせいで、俺のせいで、俺のせいで、俺の俺の
「うぉーーーー!!!!」
「やめとけよ」
ガレットはそんな康介を軽くあしらい、大きく康介を蹴りあげた。
康介は呻き声をあげる。
「吠えるなよ。負け犬がぁ」
そう、ガレットは康介を嘲笑うように金棒を振るう。
ボキ
あばらが折れたような音がした。
「お前さえいなきゃシャーロットは負けなかった」
(俺さえいなきゃーーーーー)
「うっ!?」
息ができない。ガレットは康介の折れたあばらを更に踏み潰した。
「お前、なんでここに来たんだ?逃げればよかったろ」
ガレットはそう質問するが、康介はその問いに答えれるはずもなく、ただうめき声を上げる。
「まさか、お前如きがシャーロットを助けれると思ったのかぁ?」
ガレットは康介の髪を掴み、宙を放り投げ、
「まさか、事情も知らねえ、仲間でもねえ、連れの男に足引っ張られるなんてなぁ!」
まるで野球をするように康介を金棒で打ちつけた。
その一撃は康介の頭に直撃する。
どこか鈍い音がした。
康介の頭から血がはじけ飛ぶ。
そして、康介の意識は闇へと落ちていき──
「お前、哀れだなぁ」
そう言われた気がした。
「俺、弱いやつには興味ねぇんだわ」
ボロボロになった康介を見たガレットはそう呟く。
すると、一部始終、この闘いを見ていたギミンは茂みから姿を出した。
「終わりましたか…」
そこには倒れているシャーロットとボロボロになっている康介がいた。
ギミンはシャーロットを抱え込みながら、
「この女、まだかすかに息がありますね。本当にしぶとい。で、こっちの男はどうしますか?連れて行きますか?」
「放っておけ。もう死ぬだろ」
そう言われギミンが康介を見やると、
(ひどい有様だな)
胸は潰れ、顔はぐちゃぐちゃで血だらけ。
腕も脚も本来ありえない方向に曲がっている。
「それにしても、まさかこの男にチラがやられるとは」
「あぁ、情けねえ話だ」
ガレットもそのことを知っていたのか、それとも察していたのかそう呟く。
「それでは戻りましょう、行くぞ、お前らも起きろ!」
そうして、2人は倒れている部下達と、シャーロットを連れて去っていく。
1人の少年を置いて。
ここまで読んでくれてありがとうございます♪
僕の小説を読んでくれてる方、何処かにいると信じて精進して参ります!
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