第7話 大きな失態
前回までのあらすじ
大通りに着いた瞬間、盗賊たちと闘争になってしまった康介とシャーロット。シャーロットが相手のボスであるガレットに吹っ飛ばされるのを見た康介は、シャーロットを助けに向かおうとするが、そこにチラという盗賊が立ちはだかった。
激戦の末、チラに勝利した康介だったが…
時は戻り、場面はガレットとシャーロットの戦いに戻る。
「っ!?」
「ははっ、どうしたぁ!!」
シャーロットはガレットからの攻撃を剣で受けようとするも身体ごと吹き飛ばされてしまう。
「かっ!!」
「こんなもんかぁ?あぁ?」
痛い。左腕が痺れる。なんて、力なのだろうか。
立ち上がることができないシャーロットをよそにガレットはずしずしとその巨体を運ばせ、シャーロットに近づいていき、
「派手に吹っ飛んだなぁ。どうだ?イッたか?」
「……よく、意味がわからないわね」
「ははっ、この状況でも言い返す元気があるのかよ。ほら、立てよ!!」
そして、ガレットは金棒を持たない左の手のひらを開き、5秒数えるように一つずつ指を下ろしていく。
「……」
その間にようやくシャーロットも立ち上がり、
「トドメを刺す、チャンスだったはずよ。何を企んでいるの?」
「はは、なんも企んでなんかないさ、このまま終わったら、つまんねえだろ」
ガレットはそう言ったあと、ニヤリと笑った。
「罠、だろ?」
「なんのことかしら」
「はっ、弱ったふりして構えてやがったくせによ。あそこで俺が攻撃してれば斬られてた。違うか?」
「見直したわ。あなた、やっぱりただ者じゃないわね」
シャーロットは剣を再び構えなおす。ガレットのいう通り、倒れたシャーロットはガレットの攻撃に対抗策を講じていた。ガレットが攻撃をしていれば、こちらから斬り返していた。
シャーロットの持つ剣技のうちのひとつであった。
それを見破られてしまっていては、相手からの攻撃に対抗する手段は限られてくる。攻撃を避けることも受け止めることもできなくは無いが、それも長くは続かないだろう。
ならば、こちらから仕掛けるまで!
「覚悟!!」
シャーロットは真っ直ぐガレットに突っ込んでいくようにみせ、相手が金棒を振った瞬間、それを避けるように大きくジャンプし、
「はっ!」
「っ!?」
シャーロットの斬撃は見事ガレットの胸から左肩をえぐる。
「さっきのお返し。そのにやけ面もいつまで続くかしらね」
シャーロットは続いて金棒をかがんで避け、剣で胸を突こうとするが、
「舐めんなよ?」
ガレットはシャーロットの剣の刃を左手で握り押さえつけ、右足でシャーロットに蹴りを入れた。
「かっ!?」
シャーロットはまたもや吹っ飛ばされる。
「にやけ面?やめねえよ!久しぶりにいい戦いができそうで最っ高にハイな気分なんだよ、こっちは!!」
それは、まさに戦闘狂の言い分。
ガレットは自分の力を誇示するかのように金棒を地面に叩きつけた。その姿はまるで野獣。
しかし、それに怯むこともなく、シャーロットはすぐさま剣を構え、風のような速さでガレットへ突進する。
「無駄だーー!!」
それに対してガレットはさらにそれを上回る速さで金棒を振るう。
それでも、シャーロットも止まることなく、剣をふるい──
「"一閃"!!」
そして、両者は正面からぶつかり合い、すれ違い──
お互いが背を向け合うかたちになった。
一瞬、時間が止まったかの様に両者は動かなかったが、
「がっ!?」
そう息をこぼしたのはガレット。
彼の腹からは血がポタポタとこぼれ出す。
「やるなぁ、いい1発貰っちまったぜ」
「胸と腹の傷、下手に動けば致命傷になりうるわ。降参を勧めるけど?」
「はは、馬鹿言うなよ!こんなのかすり傷だ。俺はまだまだいけるぜ。お前こそ今の渾身の一撃で決めるつもりだったろ?スカしちまって、正直慌ててるんじゃねえか?」
そう言い、ガレットはシャーロットに飛びかかる。
シャーロットはそれを避け、
「あなたこそ、さっきから話術で私の心を乱そうと必死じゃない」
「はは、バレたか?不毛な言い合いだったな。それじゃあ、こっからは本気で行くぜ?」
「望むところよ!」
両者は武器を構え、相手の出方を見る。
「あぁ、そういえば自己紹介がまだだったなぁ」
ガレットは目を見開き、自分の存在を鼓舞し、
「ガレット盗賊団統領、ガレット・バロウ」
「……私はただの旅人、シャーロットよ」
そうして、2人は名乗り、お互いの武器を振るいあう。
金棒と剣がぶつかり合う両者一歩も引かぬ攻防。その金属音が、森中に轟く。
最初こそガレットの力に押し負けていたシャーロットだったが、段々とその強烈な攻撃を剣でうまく受け流すなどと対応しはじめる。
そして、攻撃を受け流しつつ、隙あらば斬撃を浴びせていく。
ガレットの大きな身体は華奢な少女により徐々に押され始められつつあった。
「……く!」
その時、なんとか体勢は保っていたガレットだったが、決定的な隙を見せてしまい、
「終わりよ」
シャーロットは容赦なく剣を後ろに引き、トドメを刺す体勢に入る。
その時だった。
「シャーロットーーー!!」
「…ぇ?」
シャーロットは少し遠くから聞こえる声を聞き、その方向に軽く振り返る。
すると、そこには声を張り上げた少年の姿があった。
シャーロットは彼の無事を確認でき安堵する。
しかし、
「大チャンスを逃したな」
(はっ、しまっ……)
刹那の隙を見せたシャーロットは、ガレットにトドメを浴びせることは叶わず……
そう呟いたガレットの強烈な一撃が容赦なく、シャーロットを打ちつけたのであった。
これはその少し前の話。
くるくるくるくるくるくると回っていく。
意識が渦巻き、視界は朧げ。
しかし、頭の中はクリア。
拳がヒリヒリと痛み、気がついたら目の前には、3メートルほど先、男が仰向けになって倒れている。
「ぁ…?」
何が起こったのだろう。
自分は鉄球使いの盗賊と戦っていて、鉄球を避けて避けて避けて、どうにか相手に1発くらわせた。
記憶は曖昧だが、こんなもんだろうか。
「お、終わったのか?意外と、呆気なかった、ような、気が…くっ!」
何か忘れてるような気がする。
頭がクラクラする。
だが、不思議なことに身体は軽く、スッキリしている。
その不思議な感覚に康介は気を取られ、しばらく立ち尽くし、ぼーっとしてしまい……
「っ!そうだ!そんなことより、シャーロットは無事か?!」
康介は、シャーロットを探すが、
(くそ、どこだ?)
闘いの最中、鉄球を避けつつ大通りから遠さがるように森の方へ逃げていた康介。
その為、康介には大通りで戦っているであろうシャーロットの姿が見えなかった。
「シャーロットーーー!!」
康介は走りながらそう叫ぶ。
ただ叫んだ。
その失態に気づかぬまま。
そう叫び続けたのだった。
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