第2話 交戦は盗賊
「異世界転移ってやつぅぅーー!!!!」
そう叫んでみた康介だったが、ふと我にかえる。
流石に、“異世界”なんて現実的ではない、と。
ただ、異世界でなくとも、康介が今いるここが異郷の地であることには変わりない。
何が起こるかわからない異郷の地。
本当ならまず大人しくしておくのがいいのかもしれないが、康介の中では周りを探索したいという好奇心が勝ってしまうのであった。
「とりあえず、レッツ探検といくか」
そう呟きながら歩きだす。
5分ほど歩いていると、この森は山の中だということがわかった。
康介の横部にはきつい斜面があったり、
緩やかにだがここが山だと思わせるような斜面があったりとしたのだ。
しかし、だからといってまだここがどこかは分かりようがない。
「おっと、そうだ……」
記憶喪失になったときは、まず自分の持ち物を確認しろなんてよく聞く。
自分の状況がわからない今の康介も記憶喪失と同じようなものだろうから、この教訓に準ずるのがよいだろう。
康介が今持っているものは、今着ている制服、ポケットの中にスマホ、そしてリュック。
使えそうなのはスマホくらいだろうか。
まだつかえそうなのはないかと、しゃがみ込んでリュックの中を調べようと…
「おい、なにやってんだ?」
「!?」
「ここがガレット盗賊団の縄張りってわかってんのか?」
(なんだなんだ?)
康介が辺りを見渡すと周りには4人の野蛮な男たちが囲んでいた。
奴らの態度的に、
「ここは僕たちの縄張りさ、案内しよう!」なんて風に康介に好意的でないことは明らかだった。
さて、どうしたものか。
だが、あえてここはあまり威嚇せず、好意的にいくのがいいと康介は判断する。
「そうか、それは悪かった。あんたらに危害を加えるつもりはないし、何でここにいるのか、自分でもわからない状況なんだ。争いごとはよくないし、穏便に済ませよう?」
なんて、言ってみるのがいいだろうか。
仮にこちらから武力行使という策をとるとしても、さすがに、喧嘩の腕に自信のある康介でも4対1、それに加え実力の知れない屈強な男たち相手にノーリスクで勝てるとは思っていない。
さらに奴らは自分らを盗賊団と名乗った。
4人編成の集団で構成された盗賊達のことを盗賊団とは呼ばないだろう。
(いや、待てよ……)
人気海賊漫画の海賊たちも5人に満たないメンバーで海賊団を名乗ってるなんてことはことはざらにある。
ということは、4,5人ぐらいから~団と自分らを名乗っていいといえるだろうか。
なんてことはどうでもいいのだが、話をまとめると、仮にこの4人を倒しても他の仲間もいるかもしれない。
ということは、危うく大きな盗賊団を敵にまわすことになる可能性があるということだ。
よって、康介がたたき出した結論は穏便にこの場を見逃してもらい、あわよくば森を案内してもらうということだった。
「悪いな、俺も自分の状況が上手く飲み込めてないんだ。まず、ここってどこなんだ?」
「ガレット盗賊団の縄張りって言ってわからねえか?」
「とりあえずごちゃちゃ言ってねえで、身ぐるみ剝ぐぞ、こらァ」
前言撤回。
相手は盗賊、山にいるので、山賊。人を襲うことが本業なのだから当たり前といったら当たり前だが……
穏便な交渉はできないということで康介は、はぁと小さくため息をつく。
「ああ、そうかよ」
話が通じないのならば仕方がない。
「正当防衛だ。怪我して逆恨みとかみっともねえことすんなよ!」
そう叫び、康介はとびかかってた一人の男を軽くよけ、その腹部に強烈な一撃を加えた。
不良現役時代も無防備な馬鹿どもに多くくらわしてきた、“ド根性腹パン”。
あと3人。
「おいおい、どうした?こんなもんか?かかって来いよ」
なんていかにもな挑発をしてみるが、流石相手はバカだ。
「このっ」なんて言いながら一人突っ込んできた。
一人ずつ来てくれると康介からしても楽だ。
康介は相手が腕を振りかぶるより早く、身を横にスライドさせながら顎にアッパーを食らわせる。
「おいおい、何やってんだ!なめてるからこうなんだよ」
そう言った4人グループのリーダーのような男がどこからかナイフを取り出し康介に向けた。
「安心しろや。その珍しそうな服は汚さないように殺してやらぁ!」
「いや、安心できるか!」
なんて、ツッコミを入れてる場合ではない。相手は2人に減ったが、状況は変わらず康介が不利だ。
2人のうち一人はナイフを持っている。近づけば怪我をすることは免れないだろう。ならばやることは一つ。
「逃げる!!」
康介は振り返りざまナイフを持ってないほうの男の攻撃をよけ、その顔面を殴りつける。そして、そのまままっすぐ走っていった。
「おい、待て!」
康介は追いかけてくるナイフ男から一目散に逃げる。
しかし、走っていく康介の目の前には大木がある。
このまま走ることをやめなければ、康介も大木に激突してしまうだろう。
それを確認したのかナイフ男はにやけながら言う。
「そっちは行き止まりだぜ、ここからどうすんだよ、おま……」
その瞬間、ナイフ男はいきなり顔面に蹴りを食らわせられてダウンした。
康介は素早く倒れた男に馬乗りになり手のナイフを奪い投げ捨てる。そして、顔面に肘を何発か落とした。そして、男が完全に気を失ったのを確認した後、ゆっくりと腰を上げた。
「馬鹿か。俺がただ逃げてるだけだと思ったかよ」
タネはこうだ。
康介は逃げてると思わせて大木を蹴って、方向を転換する。その勢いで追いかけてきたナイフ男に飛び膝蹴りをくらわせたのだ。
当然、ナイフ男も急に方向転換をされ蹴りをくらわせられたら、攻撃を防ぐことはできるはずもない。
「ふー、うまくいったな」
これでやっと、康介も一息つける。
だが、新手の可能性があるため油断はできない。
そう思った矢先だった。
「これ以上盗賊とやらと交戦すんのは避けたいんだが……フラグ回収早すぎね?」
誰かに言ったわけではない。
ただ、自分の運の悪さに嫌気がさしてしまっただけだ。
なぜなら、康介の周りには5人の男たちがいたからである。
さらにその男たちは手にピストルを構えていた。おそらく盗賊団の新手だろう。
さっきの4人と同じ服装を着ている。
盗賊団でお揃いとか仲良しか、なんて心の中でツッコミをいれる。
「見てたぜ、うちの大切な仲間ヤッてるところをよぉ」
1人がそう言う。やはり増援だった。
「次から次へと……第2ラウンドかよ。転移そうそう落ち着いてられねえみたいだな」
平和な暮らしを送ると心に誓った康介だが、自分には平和どころか危険な状況がお似合いらしい。
正直、ピストルを持った5人に勝てるほど康介も化け物じゃない。
「動くな」
そう言われ、黙って従うしかない。絶体絶命。動けば撃たれて死ぬ。動かなくてもその後おそらく殺されるだろう。
何か打開策はないかと考える康介だったが、彼のもとに神の一手が降り注ぐことはなかった。
その時だった。
「そこまでよ!」
空から誰にでも聞こえるような、透き通った声が降ってきた。
康介を含めその場にいる全員が空を見る。
とその瞬間、誰かが大木から身を投げる。
「へ?」
何が起こってる?
少女だった。
まるで金の雨かのように、長い金髪を輝かしながら空から降ってきたその少女は、康介の目の前で華麗に着地を決める。
そして、今度は静かにだけれども康介には聞こえる透き通った声でこう言った。
「ここはわたしに任せなさい」
そうして、立ち上がり、振り返りざま女神のごとく微笑えんだのだった。
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