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CreateWorld~絶対死なない半異世界生活~   作者: 夢幻星流
第2章「魔獣のいる村」
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第1話 魔獣発生!?


 馬車に乗り山道を下っていく康介一行。馬車というと優雅なイメージを持つかもしれないが、残念ながら今はそんな状況ではない。

 康介は、馬車がガタガタと激しく揺れながら猛スピードで山道を下る中、その荷台で腰を低くして、その揺れに耐えていた。


「やばいやばいやばいっ!!」


 その瞬間、馬車の荷台の後ろからガタンと大きな音が響く。

 康介が恐る恐る後ろを見ると、そこには奴らが次々とこの荷台に入り込もうとしている姿が。


「くそっ!!」


 康介は奴らを足で何度も踏みつけ、なんとか荷台から体を離れさせることに成功する。

 しかし、そうするとまた他の奴が荷台に上がってこようとする。


「キリがねえ……」


「ヴェント!!」


 すると、その詠唱と共にそいつらは身を投げ出して吹き飛んだ。 

 ナイス援護と言いたいところだが、残念ながらそんな一言を言っている暇はない。

 新たな個体がさらに荷台に入り込んでくる。


「キリがねえ」


 康介はそれを払い除けようとするが、そのうちの一体が康介の腕に飛びつきガブリとその肉を抉った、

 

「っ!いってぇな!!こんにゃろー!」


 康介は叫びながら、大きく腕を振りかぶり自分の腕を噛みつく生物を外に投げ飛ばした。大きな身体が荷台の外に飛んでいく。


「あぁ、クソが!!キリがねえってんだ!!」


 次々とやってくるその生物に対し、康介は文句を言う。

 そして、そんなうちにその生物に噛まれた腕の傷は塞がっていく。


 今、康介達がいるのは山の下り道。

 そして、謎の生物から逃亡中。


 ファルの提案で食事をとろうということになった康介達が何故この様な状況になっているのか。


 それには、ちょっとした説明が必要になりそうだ。


________________________________________



 ファルのおすすめ場所に向かおうと決めた康介一行。ここらへんの話は面白いことはあまりないため、割愛するとしよう。


 敢えて要約するとすれば、康介たちは腹の足しになるだけの木の実を食べ、その後、隣の山に向かった、なんてところだ。


 そして、その道中だった。


「誰か!!たっ、助けてくれぇーーー!!」


 その、聞こえてきた叫び声によって、康介たちの足は止められることになる。


「おい、なんか声しなかったか?」


「え、ええ。なにかあったのかしら?」


 康介とシャーロットがあたりを見回していると、ファルは今まで進んでいた方向と反対を指差し、


「あ、あっちに人の命を感じます!そ、それを囲むようにして、な、なにかがいます!?」


 道もない背の高い草が茂っているような方向だ。


「行くのか?」


 怪訝そうな顔をする康介だが、シャーロットは、


「行ってみましょ!困ってる人がいるかもしれない」


「はあ、本当に休む時間がねえな。もうヘトヘトだっつーの」


「コウスケさんならさっきたくさん寝たじゃないですか。10時間は寝てましたよ。ほらまだ疲れてなぁーい」


「悪いがそんな子供だましには騙されないぜ。俺は10時間以上寝ると頭が痛くなる性質なんだ」


「二人とも!そんなこと言ってないで早く行くわよ!ファルちゃん、案内お願い」


「ほら、ファル。早くしろ。みんな待ってるぞ」


「イ、イラっときますね。ワタシは大人なのでそんな挑発には乗りませんが」


 ファルは頭に怒りマークを浮かべながらも、先陣を切って、人がいるというところへ走り始めた。

そして、そこからほんの少し歩いたところに人影が見える。


「あ、あれか」


「どうかしましたかー?」


 少し道が開けた場所に一人の男性がいた。しかし、状況は思ったより緊迫している。男性は黒い体をしたオオカミのような動物4匹に囲まれて、尻餅をついていたのだ。

黒い体毛に赤い目。口を開くと大きな牙が覗く。そして何より一番の特徴は……


「キィーーーーーーーー!!!!」


 その何とも言えない人の不快感を煽るような鳴き声。


「な、なんだこいつら……」


 見たことのない目の前の生物に動揺する康介は、その場を一歩後退る。

と、その瞬間、康介の横から二つの影が前に飛び出した。


「はっ!!」


「ヴェント!」


 その二つの影……否、シャーロットとファルは、それぞれ剣を抜き、詠唱をし、目の前のオオカミの首をはねたのだった。

 そして、あっという間に残りのオオカミも殲滅してしまう。


「へ……?」


 あまりも一瞬の出来事。その状況にさらに困惑する康介は思わず気の抜けた声を漏らす。

 そんな康介の声だけがポツンとその場に残ったのだった。


____________________________________________



「どうもありがとうございました!」


 そう、シャーロットたちにお礼を言うオオカミに囲まれていた男性。彼は腕をオオカミたちに嚙まれてしまったようで、ファルがその場ですぐに傷を回復してあげていた。


「いえいえ。大きな声が聞こえたので。間に合ってよかったです」


 そんな彼からの感謝の言葉にシャーロットは笑顔でそう言った。

ファルも優しく微笑む。


「困ったときはお互い様ですよ」

 

 それらの答えに、男性は目を輝かせて口を押え、よろよろとその場にしゃがみこんだのだった。


「本当にありがとうございました……もう死を覚悟したため……感謝してもしきれません……」


 その様子を見て、康介がトントンとシャーロットの肩をつついた。

 すると、優しく微笑んでいたシャーロットは不思議そうな顔で康介に振り向く。


「ん?」


「空気壊すようで悪いんだが、結局さっきのオオカミなんだったんだ?」


 今起こってることに何一つ理解が及んでいない康介は遂に小声ながらに疑問を口にする。

その質問にシャーロットは口を開いた。


「……魔獣よ」


「ま、魔獣って、噂に聞くあの魔獣か?!」


「ええ。その魔獣よ」


「えっとー……で、どの魔獣だ?」


 康介の様子に目をつむり、呆れたような顔を見せるシャーロット。


「そ、そうね……魔獣は魔獣よ。うまく説明はできないけど、この世に人がいるように魔獣だっている。けど、魔獣は人を襲い、人を食す。だから駆除対象とされているのよ」


「なるほどな。だからあんな躊躇なく殺したのか。けど、見てから行動するまでに迷いがなかったことをみると、あの魔獣は余程有名な魔獣なのか?見た瞬間、魔獣ってわかるくらい。俺にはちょっと変わったオオカミにしか見えなかったし……」


「まあ、そこそこに有名ね。名前は……黒狼こくろう


「めっちゃかっけー!けど、そのままだな!?」


 黒狼。黒い夜に現れる幻のオオカミみたいでいいネーミングセンスだ。

 と、こんな風にシャーロットに説明してもらったことで、今起こったことを大体理解した康介は、改めてその男性に笑いかけた。


「そっかー、よかったな!おっちゃん」


「は、はい。本当にありがとうございました」


「うーん……」


 すると、ふとファルが怪訝そうな顔をしてつぶやいた。康介はそんなファルの様子を疑問に思い、


「ファル、どうした?」


「いえ、少し疑問に思っただけです」


「疑問?」


「ええ、こんなところに魔獣が出るなんて話聞いたことがありませんので……」


 すると、男性もファルの言葉にうなずく。


「私は近くの村からいつもここまで薪を集めに来るのですが、こんな風に魔獣に襲われることは初めてです……本来、私達の生活している村とその周辺の森と魔獣が多く生息している森の間には結界が張られているため、魔獣がここにいることはあり得ないはずなんです」


「ってことは、何かしらが原因でその結界が破られたってことね」


 結界が張られていて魔獣が本来いないはずの地域に魔獣がいる。ただの偶然で済ませられる話ではないだろう。

 何か嫌な感じがする。


「もしかしたら他にも魔獣がいるかもしれねえ。ここは、俺たちがおっちゃんが村に戻るまで護衛すべきなんじゃねえか?もし、村の結界もなくなってて、魔獣が村に入り込んでるなんてことになってたら大変だ」


「そうね、そうしましょう」


「ちょ、ちょっと待ってください。とてもありがたい話ですが、申し訳ないです。私一人のためにそんな……」


 そう申し訳なさそうに言う男性に対し、康介は優しく笑いかける。


「さっき俺たちのチビも言ってでしょ。困ったときはお互い様です」


「そうです!困った人を見捨てるなんてことできませんからねって、ん?ちびって誰のことです?」


「あ、ありがとうございます」


「よーぉっし、さっそく行きましょう!あ、えっとー名前は……」


「あ、バスと申します」


「いい名前ですね。俺は荒木田康介て言います」


「……コウスケさん、誰がチビですって?」


 ファルが怖い顔で睨んでくる中、そんなことを意に介さず、バスに握手を求める康介。

 代わりにその両者に挟まれているバスが困惑してしまっている。


「ところでバスさんはなにでここまで来たんですか?」


「え、え、えっとー。ば、馬車ですが……」


「よしじゃ行きますか!案内してください」


「なーに、無視してるんですか!?」


 遂に我慢の限界と、ファルの叫び声が空に轟く。

すると、康介はファルから逃げるようにして走り出した。


「ちょっと!まちなさーい!」


 それをファルは追いかける。それを見て、慌ててバスも続いた。


「馬車の位置わかりますか?!ちょ、ちょっと待ってください」


 しばらく黙っていたシャーロットは、ニヤニヤと笑いながら走る康介とそれを追うファル達を見て薄く笑い、


「あの二人本当に仲がいいわね」


 そうつぶやいたのだった。


 ____________________________________________


 こうして、時は流れ、康介たちはバスの馬車に乗っているというわけである。

 最初はなんてことのない馬車の旅だったのだが、問題は唐突に起こるのであった。

 馬車の横からドンッと大きな音がして、康介は首を傾げた。


「何の音だ?今の」


「さあ?」


 そう、同じように首を傾げるシャーロットだが、その隣のファルは目をカッとあけ、後ろを振り向いた。


「魔獣!!」


「え、今なんて……」


 その瞬間だった。

荷台の後ろの扉がドンと大きな音を上げて吹っ飛んだのは。

 そして、その壊れた扉を踏みつけるように、ゆっくりと足を忍ばせるのは、先ほど見た覚えのあるオオカミ――魔獣、黒狼だ。


「ヴェント!!」


 ファルはその魔獣を見るや否やそう叫び、シャーロットも立ち上がってすぐさま戦闘態勢に入る。


「ファルちゃん、数は?」


「後ろからついてきているのは5体。並走してきているのが……ざっと20体ほど……」


「はっ!?おまっ、に、にじゅうって!?」


「ごめんなさい、コウスケさん少し黙って下さい。急に現れてワタシもびっくりしてますので。シャーロットさんは後ろから入ってきた魔獣をお願いします」


「わかったわ」


 康介が、解せん、と口をくの字にする中、ファルは外へ飛び出していった。そして、荷台の屋根の上に飛び乗り、腕を振り上げる。


「そんなに、お腹が空いてるならワタシの風をあげますよ」


 そう言い放ち、ファルは周りにいる魔獣たちに風の刃を食らわせていく。

 その刃を潜り抜け、何とか荷台の中に入ってきた魔獣達にはシャーロットの鋭い斬撃の餌食となるという運命が待ち受けていた。


「悪く思わないでちょうだい!」


 あっという間に剣で魔獣を滅していくシャーロットとファルを前に、康介は呆然とした様子でその場に座り込んでいる。


「ま、こんなもんね」


 シャーロットがそう呟き、このまま魔獣たちを倒せるかと思われたその時、ガタンと大きな音を上げるとともに車体が大きく傾いた。

 その勢いで立って魔獣と戦っていたシャーロットは大きく体勢を崩し、


「っ!!」


 シャーロットは頭を壁に大きく打ち付けて、魔獣たちに一瞬の隙を見せる。シャーロットに群がる魔獣たち。そして、再びガタンと車体が大きく揺れる。その衝撃に思わずシャーロットは荷台から外に。


「シャーロット!」


 それとほぼ同時、此度の大きな揺れにより荷台の屋根にいたファルも体勢を崩し、その身は大きく馬車から投げ出されてしまうこととなる。


「おい!ファル!」


 座ってい為、何とか体勢を保てた康介は二人の名を叫ぶが、返事はない。外を見ると、二人とも完全に馬車から外に投げ出されてしまったことが確認できた。とはいえ、康介よりはるかに強いであろうあの二人の心配はさておき、問題となるのは、


「俺一人ってマジか」


 康介がそうつぶやいたのと同時、荷台の車体の異変に気づく。荷台の車輪の一つが壊れて外れてしまっていたのだ。

 

「ガァッ!!」


 そして、聞こえる魔獣の唸り声。


「おいおい……不味くねえか?」


 2人に任せていればどうにかなると思っていたが、康介にも望まぬ形で出番がやってきてしまった。


「クソっ!!どうにでもならぁーー!!!」


 そうして、康介は荷台に上がってきた魔獣に突っ込んでいった。

 魔獣は自分に迫ってくる康介を見て、目を血走らせては、一斉にとびかかってくる。

 その目はまるでハンターのように、目の前の康介をただの食糧としか思っていないようにみえるが、


「おらっ」


 康介はそのうち一体を避け、強烈なパンチを喰らわせる。ガレットと死闘を繰り広げたおかげか、康介もかなり身体能力が上がっているのを感じる。

 康介も、ただ狩られるだけの餌ではないのである。


「ってなわけだ、残念!!」


 そうして、一体を外に薙ぎ払う。もう一体も投げ飛ばそうと、飛びかかってきたところを掴み押さえつけた。とその時、魔獣は康介の首筋をガブリとかぶりつきその肉を食いちぎる。康介の首から血がはじけ飛んだ。


「っ!痛えな!こらぁ!!」


 しかし、食べられた康介の首の肉もすぐに再生。康介はそのまま魔獣を投げ飛ばした。


「ははっ、余裕だぜ。ドンドンかかって来いや、こら!」


「「キュイイーン!!!」」


 すると、外からなにかとんでもなく大きな音が轟いた。

 何事かと思って、外を見やるとそこには、夥しい量の黒狼が……


「はは……」


 もはや笑うしかない。シャーロットとファルが不在の中、この量の魔獣に攻撃されて生き残れる自信が康介にはない。否、康介は不死身の力で生き残れるかもしれないが、今この馬車を操縦している男、バスのことを守り切れる自信は皆無だ。


「そういえば、ファルが言ってたな……外に20体いるって」

 

 しかし、何を言おうと康介には何もできない。魔獣が荷台に上がってくるのを必死に止めようと足掻くことしかできないのであった。



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