番外編 もう一つの物語
戦いの後、裏で起こっていた出来事。
私もこのキャラの存在を忘れてましたので書きました。
「まずい……ガレット様がやられた……」
アジトの地下一階を走るギミン・ミアック。
ガレット盗賊団の隊長のうちの一人。
彼は今、ガレットの戦いっぷりを自らの魔術で作り出した監視鏡(今でいう隠しカメラのような機能)で覗き見していたのであった。
そんな中、監視鏡から見えた最後の景色は、女の剣士シャーロットに斬られガレットが倒れ込んだところまでだった。
「爆風で監視鏡が壊れたのか。くそ、このアジトも終わりだな……」
シャーロットの斬撃は地下2階にある地下室の天井から、地上まで穴を開けるような貫通力であった。
その斬撃によって今このアジトは壊れかけていた。
「逃げなくては……待て、ガレット様が生きているなら……」
と、ギミンは地下室に戻ってガレットのところに急ごうとするが……
「ふっ、バカだな。もうあの方は死んだだろう。だが、何故だろうな……」
本当にあの男が死ぬのだろうか。
ギミンの中には確信があった。
(あの男は勝算の高い戦いしか望まない……)
ガレット・バロウという男の特徴。
それは、自分より明らかに格上の相手とは最初から戦わないということ。
ギミンはガレットがそのような考えだからこそ今までついていっていたのだ。
まあ確かに、無謀にも勝算の低い勝負に挑むこともあった。ただ、敗北を喫しても必ず死なないで逃げだす。あの人はそんな男だ。
「ふっ、そんなことどうでも良いか。まあどうにしろ、俺にあの方を助ける暇はない」
ギミンは崩れていくアジトの廊下を駆けながらそう呟いて薄く笑った。
そうして、走っていると人が一人倒れている姿があった。
「っ!ザッハ!!」
そこに倒れていたのはガレット盗賊団隊長を務める魔術師ザッハであった。
彼はこの盗賊団でガレットの次に強い人物だ。武力においてガレットの右腕はこのザッハとまで言われていた。
そして、そんな彼までもが今こうして誰かに倒されている。
「どうやら、俺たちはとんでもない奴らを相手にしてしまったみたいだな……」
「っ!!」
すると、倒れていたザッハが目を覚ます。
「起きたか!早くここから逃げるぞ。瓦礫に下敷きにされる前に!」
「……」
しかし、ザッハはギミンの言葉に応答せず天井を見上げていた。
「立ち上がれないのか?わかった。俺の背中に掴まれ!」
そうして、ギミンはザッハの腕を自分の肩にまわし、起き上がらせようとする。
すると、遂にザッハが何かを呟いた。
「……いい」
「なんだ?!聞こえない」
「もう……いい」
「は?」
ザッハが発した言葉。それは、もう生きることを諦めるような発言であった。
「私は……戦いに負けた。ガレット様との約束が果たせなかったのだ。もう、俺の生きる意味はない。せめて、私が守りきれなかったこのアジトと共に……私は……」
「何言ってんだ!早く逃げないと本当に壊れてしまうぞ!!」
「もう、いいのだ。こんなところで私の相手をしていては……お前も死んでしまう」
ザッハはそう言いながら、その場を動こうとはせずに天を見上げていた。
しかし、ギミンはその様子を見てもその場を離れようとはしない。
「何をしている……?早く逃げろ」
「……なあ。俺が初めてこの盗賊団にきた時のことを覚えてるか?」
「悪いがお前がなんと言おうと、私はここを動く気はないぞ」
しかし、ザッハにそう言われてもギミンは続ける。
「俺はここに無理やり攫われてやってきた。一人孤独だった俺に最初に話しかけてくれたのはお前だった。ザッハ」
「……」
「正直、最初はほっといてくれって思ってた。だけど、今思えば、俺はお前だけには本音を話していたと思う。ガレット様の悪口だって、わからないことだってなんでもお前に話してたよ……それで、お前は俺に魔術を教えてくれて、それがなかったら今頃俺は生きてない」
「……」
「ありがとな。だからこそ思う。この盗賊団も終わってまた俺は一人か、ってな」
「……」
「なんだかんだ、俺はこの盗賊団が好きだった。ここは俺の唯一の居場所だったから。正直、これから一人で生きていけるか、不安しかない」
「……そうか」
「正直に言う。ガレット様は死んだ。だから、お前の心の拠り所はもうない。お前の気にしている使命なんてものももうない」
「そんなこと分かっている!だから……俺はここで死ぬんだ」
「そこで、お願いだザッハ」
「なんだ?!さっきから何が言いたい?」
「俺はこのあと当てのない旅をする。どこへいくかもわかんないし、何が起こるかもわかんない。けど、俺だけじゃできることが少なすぎるんだ。俺は少し、小賢しいくらいで戦いもまともにできねえ」
そして、ギミンは無理やりザッハを起こした。
「だから、ザッハ。お前俺と来てくれ」
「はっ、ははは!!正気か、お前?」
予想外の言葉だったのかザッハは声高に笑った。
「誰かに負けて萎えてるのかもしれないが、せっかく拾った命。こんなとこで散らすにはもったいないだろ」
すると、ザッハは自分を立ち上がらせようとするギミンの手を払い、自分から立ち上がった。
「確かにあの娘にやられただけでは終われませんね」
あの少女に負けて、この人生を終えるなど確かに馬鹿らしい。まだ、自分にはできることがあるはずだ。
と、その時。天井が崩れ、瓦礫が二人の頭上に落ちてきた。それを見てギミンは咄嗟にその場を離れようとするがもう遅い。
そうして、ギミンの思考が停止したその時、
「アクアヴォルティチェ」
その言葉とともにザッハとギミンを水の渦が包み込み、瓦礫を弾く。
「早速、お前がいなかったらまずかったな」
「ふっ、私に付きまとっていなければ、まず瓦礫が降ることはなかっただろうに」
「よし、じゃあこのまま俺を守ってくれ」
こうして、ザッハはギミンと一緒にアジトの外を出たのであった。
この後、この二人は道で寝ていた鉄球男チラも仲間に誘い、旅をすることになるのだが、
これはまた別の物語である。
これで、1章は本当に終わりです。
第2章も書くのでよろしくお願いします。
1話からここまで読んでくれた方!もしいるなら、感想、ブックマーク評価待ってます!!




