表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
CreateWorld~絶対死なない半異世界生活~   作者: 夢幻星流
第1章「初めての異世界」
22/32

第21話 『王の娘』シャーロット・ベル・メディアン

大幅に修正を加え、この話3回上げ直すという、ことが起きました笑



 シャーロット・ベル・メディアンは王の娘として、生まれた。


 だからお城から外に出ることも許されなかったし、剣術のお稽古でお庭に出ることができるようになったのは、4歳のころからで、それまでは部屋から出ることもなかったと思う。


 唯一、庭に出て行う剣術の練習も1人ではできなくて、誰か信頼のある人の付き添いがなくてはいけなかった。


 それゆえ、シャーロットは外の世界を夢見ていた。絵本で読むような神話からしか外の世界を知れない。


 そんなのは嫌だった。自分の目で確かめたいことも確かにあるのだ。


「シャーロット様がいない!?また、勝手にお出かけになったのですか?」


「今すぐ探しなさい!何か起こったらただじゃすみません!!」


 まあ、簡単に言うとシャーロットはそんな外に行ってはいけないとか、そういう掟を破ってしまう悪い子供だったのだった。


 自分のことを焦って探す召使い達を見ながら、かくれんぼを楽しんでいたのだ。


 隠れるのには自信がある。自信があると言っても、この広いお城の中だ。隠れることは誰でもできるだろうが、当時のシャーロットはそんなこと思いもせずにそのことを、自慢気に思っていた。


「こんなところに!!あ、こらー!お待ちなさーい!!」


 そんな毎日。今思えば、誰かに構ってもらうのが嬉しかったんだと思う。


「あーあ、つまんないなぁ。なんか面白いことないかな……」


 新たな隠れ場所を見つけ、一息つく。


「こんなとこに居たのね」


「わっ!!」


 すると、シャーロットは何者かに脇から腕で持ち上げられる。こうして、シャーロットはいとも簡単に、相手に主導権をにぎられてしまうのだった。


「お、お母様!?」


しかし、母だけは違った。母は何故かいつもシャーロットの隠れているところにやってくる。


シャーロットは懸命に後ろを振り向こうとしながら、空中で足をバタバタさせる。


「なんで、わかったの!?ここは初めて使う隠れ場所なのに!!」


「あなたのいるとこぐらいわかるわ。早く、行くわよ。こんなとこに居ては怒られてしまう。剣術の練習があるでしょ?」


「……やだよ、剣あんまり好きじゃない。やってなんの意味があるの?」


「剣は己を守り、大切な何かを守る。そのために必要なのよ」


 そう言いながら、シャーロットの母、カティアはシャーロットを稽古場に連れていったのだった。




 そして、ある日、シャーロットはいつものごとく、自分の部屋を抜け出して、庭の外に出ていた。王城の敷地内の森に1人でやっていていたのである。

 否、1人でやってきたつもりだったのだが……


「なんでお母様がこんなとこに!?」


「逃げようとしても無駄よ。ほら、稽古に行くわよ」


 そんな時だった。森の茂みから何かが現れたのは。

それは、熊だった。背丈はカティアの倍くらい。


 はっきり言って、死を覚悟した。恐怖で体が震えて、シャーロットはその場に座り込んだ。


「やっ……」


「シャーロットさがってなさい」


「え?」


 すると、シャーロットの目の前には、木刀を持ったカティアがシャーロットを庇うようにして立っていた。


「っ!!」


 そして、カティアは大きく跳び上がり、手で持って木刀を熊に振り落としたのだった。

 鮮明な血が飛沫をあげ、熊は倒れ込む。


「す、すごい……」


 カティアのその華麗な姿を見てシャーロットは目を輝かせた。

 そして、カティアはシャーロットに振り返る。


「シャーロット……危ないから、もう外に出てはダメよ……」


 木刀についた熊の血をとるように、木刀を一度振るカティア。

 その姿はまるで、シャーロットが絵本で読んだ勇者みたいだった。


「うん!!」


「何、急に素直じゃない」


 いつもと違うシャーロットの姿にカティアは、不思議に思ったのか笑った。


「ほら、稽古はいいわ。今日はもう帰るわよ」


 子供には少し残酷な光景を見せてしまったので、それを気遣ったのかカティアは、そう言った。


 しかし、


「お母様、私、お稽古いく!」


「え?」


 一瞬、カティアは驚いたように聞き返した後、にこりと笑った。


「そう、じゃあ行くわよ」


 これが、本当の意味で、シャーロット・ベル・メディアンが剣と出会った瞬間だった。


 それからは、剣に没頭する日々。

 今までは言われるがままにこなしていた稽古が、とても楽しく感じた。



そうして、年月が経ち、ある日の夜のことだった。


 「この剣をあなたに授けるわ。あなたは私の後継に相応しい」


 まだ10歳だったシャーロットにはその言葉の深い意味はわからなかっただろう。

 カティアがこのタイミングで娘に自分の愛剣を渡す理由が。


「この剣は、相応しい者にしか抜けない特別な剣、『青霊剣』ミゲル。まだ最初は抜けないかもしれない……だけどこれだけは忘れないで。剣は己を守り、大切な何かを守るためにある。この言葉を常に心に持ちなさい。お母さんとの約束……」


 そう言ったカティアは笑っていたけど、その目は悲しみの色をしていた。



 そして、その翌朝。

 カティアは死んだ。病気だった。


 この急な訃報に、王城は震えた。

 否ーー王国内の全ての人々が、隣国戦争を率いた伝説の剣士、カティア・メディアンの死を悲しんだ。



 国王である父も同じく、妻の死を悲しんだ。


 父は温厚でみんなから慕われている国王だった。

しかし、その日を境に父は人が変わったかのように豹変した。

 

 父は野望を持つようになった。

他の国の土地を欲し、全てを手にしようとした。

 本当に人が変わったようだった。


 現状、王国に他国と戦争をする強力な戦力が騎士団以外にない。しかし、騎士団はいわば、自衛軍であり、王国内のトラブルや他国の軍が攻めてきた時に国を守るという名目で戦闘が許される。

そのため、王国側から他国に戦争を仕掛けることはできない。

 そこで、父は元々王国にあった騎士団とは別に、王国傭兵団なる部隊を作り出し、他国の植民地化に乗り出した。王国はこの傭兵団に仕事を依頼するという形で、傭兵団は領土戦争に参加したり、王城の護衛などをする。他国からこの傭兵団に"報酬"を渡すことで他国間の戦争に出兵することもあった。報酬と言っても、それは王国への報酬であり、他国の領土を一部譲ってもらう代わりに戦争で力を貸すなんてこともあった。


 そして、勿論カティアの死を悲しんだのは、シャーロットも同じである。あまりのショックに、毎日、部屋に篭る日が一年続いた。 


 剣を振ることもやめてしまった。


 だけど、11歳のある日、ふと母からもらった剣を見て思ったのだ。


「お母さん……私はどうすれば……」


 わからなかった。何もかも。


 だけど、一つだけは分かった。


 母がシャーロットに残してくれたこと。

それは、この一本の剣だと言うことを。


 だから、シャーロットは一度やめた剣をもう一度続けてみることにした。


 剣を振っていると、母が何処かで自分のことを見てくれているような気がしたから。

 

 母からもらったこの剣を抜けば、母が自分に会いに来てくれるのではないかとさえ、思えたから。


 だから、剣を極めて、母から貰ったこの剣が抜けるように、この剣に認めてもらえるように、剣を振り続けた。



 そして、15歳の時、シャーロットは成人となり正式に王国の王女として活動をすることとなった。


 シャーロットは父のする侵略計画が好きじゃなかった。しかし、幼かったシャーロットにはそれを止めることもできはしなかった。


 そうして、一つの国は滅び、王国の領土となった。


 シャーロットは剣を振り続けた。


 そして、その領土を奪い合い返そうと、ある民族が王国に戦いを挑んだ。しかし、その民族は滅びた。


 シャーロットは剣を振り続けた。


 この民族の滅亡をもって、父の他国侵略はめっきりなくなった。これで、悪夢は終わったかのように思えた。

 しかし……逆だった。


「王国の国民たちよ!我らは新たな挑戦をしようと思う!我らが住む世界とは違う……異世界を、我らの手のものとしようではないか!!新世界を共に創り出そうぞ!!」


 このままでは、父が母のいた頃の父ではなくなってしまう。これ以上、父を汚すことはできない。


 シャーロットは剣を振り続けた。


 自分にできることは何か?

 今度こそ、自分が父を止めなくてはならない。

 しかし、考えても、そんなことはできはしないと、頭の中を行ったり来たりする。


 だけど……


「……お父さんを止めれるのは私しかいないんだ」


 だから、シャーロットは剣を振った。


 母から背中を押されたような気がした。



「話とはなんだ。シャーロットよ」


「父上、私は、昨今の……いえ、母上が亡くなってからの父上の政策に対して疑問がございます。なぜ、他国を侵略しようなどとしたのですか?」


「全ては国民のためだ。領土が広がれば、国民も嬉しかろう」


「そう……ですか……失礼ながら、私には父上が本当に国民のことを思ってそんなことをしているようには思えません」


「そうか、それは残念だ」


「私はずっと疑問に思ってきました。戦争などいいことのわけがないと。だから、父上がここ最近、戦争をやめたことに正直、安心していたんです」


 父は私の言葉を黙って聞く。ただ、シャーロットを見つめて、何も言わない。


「だから、言わなくちゃいけない。私は、異世界侵略に反対します」


 はっきりと言った。


「異世界なんていうわけのわからない領域にまで手を出して、どれほどの損害が出るかもわからない。国民が危険に晒される可能性だってある。異世界にいる人々にも危害が及ぶ。今までの比にならない被害が待ち受けているかもしれない。そこまでして、父上は何を手にしたいのですか?!」


 父はしばらく黙っていた。そして、シャーロットを見つめたまま、ついにその重たい口をゆっくりと動かした。


「お前は何か勘違いをしているようだ」


「かんち……がい?」


「危険を犯してこそ、素晴らしい成果が得られる。確約された平和にしがみつき、革新を求めない者に待ち受けているのは滅亡だ。今、我々はその分岐路に立たされている。異世界見聞録に記されていることによれば、異世界には宇宙という領域があると聞く。それは、永遠に広がる無限の空間。この世界が未だ到達できていない人類の最高地点。だか、今それは目の前にある。準備は整ったのだ。それなのに、なぜ歩みを止めることができよう」


「そ、そんなの……あなたの勝手じゃない!」


「……シャーロット、お前に私は止められない」


 これ以上は何も言えなかった。

この場では黙って従うしかなかったのだ。



 そして、月日は流れ、肝心の計画、インパクトの概要について発表された。


 この世界中の魔力、聖力で錬成されたエネルギーを異世界に放出し、異世界をこちらの世界と連結させ、あちらの世界をこちらの世界に同一化させる。


 それは、実質異世界の人々を抹殺するという計画だった。 


 異世界にだって命がある。それを、何故シャーロットたちが奪うことができよう。

 あまりに身勝手で残酷で、シャーロットには受け入れがたかった。


 何より、そんなことを、母のことを大好きだった父にだけはさせたくなかった。


 あいにく、王城内にはシャーロットと同じように異世界侵略に反対する人がいたので、シャーロットには父に抵抗する術があった。


 ある人のつてで、計画に反対する王国の人々を多く集めることができた。


 王国は国王を筆頭とする異世界侵略賛成組とシャーロットを筆頭とする反対組に別れ、冷戦状態となった。


 しかし、転機は突如として訪れる。

王国にある大都市サファリンに、巨大なエネルギー反応が現れた。裏で誰にも悟られることなく、父は計画を進めていたのだ。


「何故!?奴らに怪しい動きはなかったはず……どうなってしまうのだ!」


「まずい、このペースだと計画が実行されてしまうまで、時間がない!!」


 反対派の人々はそのように騒ぎ立てる。

しかし、シャーロットは違った。


「落ち着きなさい!総動員でサファリンに向かいます!共に計画を止めるのよ!!」


 シャーロットは本気でこの計画を止めれると思っていた。なんせ、シャーロットには自分を慕ってくれる仲間がいる。空からは母が見てくれている。みんなで力を合わせれば、父にだってきっとこの気持ちが伝わる。この馬鹿げた計画を止められる。父の野望をここで終わらせる。


 しかし、その時のシャーロットにはわかるはずもなかった。もういない母の亡霊に身を委ねていた彼女には。

 それはあまりにも馬鹿げた幻想だったと言うことを。そのことをサファリンに到着したシャーロットは思い知ることになる……


 サファンリンには新世界の始まりを見届けるために、その瞬間を今かと待ち受ける父の姿があった。


「シャーロットよ、あきらめろ。これ以上抵抗すれば、我々もお前たちを無視できなくなる。このまま計画が実行されても、我らの世界の人間には何の損害もない。新たな領域が切り開かれる。その素晴らしさがなぜわからない?」


「父上は母がいなくなってから変わってしまった。私は信じています。父上が……お父様がこんなバカげたことを止めてくれると……やめないなら、全力で止めます!」


 そうして、戦が始まった。

シャーロット率いる2000の軍隊と、国王率いる50000の軍。戦力の差は歴然だった。

それでも、シャーロットたちに負ける気なんて一切無かった。

この世界がよりよくなると信じて。そんな幻想を抱いて……


 シャーロットは剣を振った。


そのたびに相手の首はとんだ。血が流れた。


 シャーロットは剣を振った。


それでも死んでいく仲間たちがいた。血が流れた。


 シャーロットは剣を振った……


目の前には、危なくなったシャーロットをかばって倒れていく仲間の姿があった。血が流れる。


 シャーロットは剣を……


そこには力尽きて、シャーロットに何かを託していく仲間の姿があった。流れた血が乾いていく。


 シャーロットは……見たのだった。


「助けてくれ……」


「だめだもう死んでる……」


「くそ、いてえ」


「弱音を吐くな!我らの肉体が滅ぼうと、魂が死なないかぎり、我らの思いは繋がれる」


「腕がなくなっても!足が吹き飛んでも戦え!!」


それは、敵も味方も血を流し、死んでいく世界であった。


そして、遂に思ったのだ。




ああ、私達は……なんのために戦ってるの?




なぜこんなに、血が流れなくてはならない。

なぜ、人が死ぬ必要がある。

なぜ、意見が違うだけでこんなにも苦しめあわなくてはいけない。



 そこは残酷な世界だった。シャーロットの思いは血で塗られていく。何をしても血が飛ぶ。そんな世界。


 否、違う。世界がどうであろうと、この世界が残酷であろうと、今のこの状況を作り出したのは……


「私だ……」


これは紛れもなく、シャーロットが始めた争い。

他に、父を止める方法はなかったのか?そんなこと考えもしなかった。ただ流れに身をまかせて、どうにかなると思っていた。


これじゃあまるで、


「お父さんと……同じだ……」


なぜこんなことになってしまったのだろう。

元々、シャーロットに覚悟なんてなかったのだ。


ただ、父と止めたかった。だけど、そのために必要な覚悟が彼女には欠落していたのだ。


「どうして……こんなことに……」


「シャーロット様危ない!!」


シャーロットをかばい、その人から赤い何かが飛んだ。


「そんな……」


「シャーロット様……あなたは……私たちの希望です。どうかご無事で……」


また、一人。また、この世界から一つの命が消えた。


「うっ……」


わからない……


「シャーロット様を死なせるな。命を懸けてお守りしろ!!」


どうして、こんなことに……


そうして、シャーロットは涙を流す。


「シャーロット様!!」


そこから先は覚えていない。ただ、なぜと問い続けるまま、その意識は闇に落ちていった。




 永遠続くと思われた夜に一閃の青白い光がさす。

そんな光に照らされたシャーロットは森の中に倒れこんでいた。


「私は……」


「うっ……」


 思い出すだけで、吐き気がした。今生きている自分に対して。


 自分はなんのために戦ったのか。

何のために仲間が死に、なぜ自分だけがこうして生き残っているのだろうか……


「わからない……」


結局、計画を止めることもできず、多くの血を流させた。


「私は……こんなことがしたかったんじゃ……」


そして、ふと気づくと、シャーロットは誰かの腕を握っていた。さっきまで誰かの胴体についていたはずの腕を。


「きゃーー!!」


 そして、その腕を投げた後にシャーロットは気づく。これも自分が起こしたことの結果だということに。


「私は……ただの人殺しだ……」


 昔は外の世界を夢見ていた。早く、城から出て行って、世界を知りたい。そう思っていた。だけど、夢見ていた外の世界はあまりにも残酷だった。


「わからない……わからないよぉ、お母さん……」


 シャーロットは泣きながら、自らの愛剣に語り掛けた。しかし、答えは返ってくるはずない。


 母はもうここにはいないのだから。


「私にはこの剣を抜く資格がない…」


 もう、頼りになる母はシャーロットの中にはいなかった。


 何もわからなかった。


 けど、これだけはわかる……


「私は……生きる資格なんてない」




 だけど、自分はずるい人間だ。死ぬなんて、そんなことする勇気はなかったのだから。


 シャーロットはワンピースのようなドレスを着ていた。シャーロットをここまで連れてきてくれた誰かが着せてくれたのだろう。

 ただ、歩いた。そこら辺の村人に拾われて、少しお世話になって……


 1か月、ただ果てのない旅をした。賞金首になっていたので、裏の道を使って旅をした。

つかまってしまってはいけないと、死から逃げている自分には目をつむった。


 自分は卑怯者だ。


 そうして、盗賊に剣を奪われ、あの少年に出会ったのだった。


 盗賊に襲われている少年を助けようと思った理由はわからない。

だけど、気が付けば剣を振っていた。


 また、自分のことに、他人を巻き込んでしまうとは知らずに……

 


________________________________________



  ガレットは立ち尽くすシャーロットに呼びかける。


「これがお前の選んだ道だったってわけだ。仲間が助けに来てくれてよかったじゃねえか」


 そう言われても、シャーロットはただ立ち尽くしている。


「まあ、安心しろ。お前のことは殺してやんねぇ。殺したら金になんねぇだろ?」  



 シャーロットはただ思う。


 どうしてこんなことになってしまったのだろう。

 後悔なんて無限に出てくる。最後に自分の役目を全うして死ねるのはいいことだろう。

 だけど、シャーロットは何もしていない。


 こんな役立たず、あの夜にさっさと死んでしまえばよかったのに。他人巻き込んで、自分が残したものは何もない。

 生きている意味なんてなかったのだ。


「……殺しなさい。もう、私は……」


 最初から、こうするべきだった。

 こんなことで罪が償えないなんて、わかってる。


 シャーロットと共に戦い、シャーロットを生きながらえさせようと命を散らした仲間たち、そして、こんなクズを助けてくれようとしてくれたあの少年には本当に、悪いと思っている。

 回復魔術までしてくれて、シャーロットに信じる力を教えてくれたあの少女にも。


 けど……


(わかってた。私には、そんなことをしてもらうことも誰かを信じるなんてことも、そんな権利ないってことぐらい……)


「殺さねえ程度にころしてやる」


 そう言うと、ガレットは床にあった金棒を拾う。

 

(これでいいんだ)


 シャーロットは目を瞑る。


 唯一の心残り。あの少年にもお礼を言えた。今できることはすべてやった。

もうこの世界に、やり残したことはない……


(お母様、ごめんなさい……)


 その時だった。


「ふっざけんなぁーー!!」


「!?」


 その声の主は、何かをガレットに投げつけた。しかし、ガレットはそれをいとも簡単によける。

 そして、シャーロットは自分の足元に転がったそれを見る。


 それは剣だった。


 声の主、否アラキダコウスケは息を荒々しく吐き、棚にもたれかかっている。おそらく、康介は棚にぶつかった拍子に落ちて来た剣を最後の抵抗としてガレットに投げつけたのだろうか。

しかし、それは失敗に終わる。結局、ガレットの気を逸らす程度にしか働かなかった。


 そう、もう終わりだ。と誰もが諦める場面。


 ただ、シャーロットにはそうならなかった。


「これは……」


 その剣は、偶然か、それとも運命か、シャーロットが母から受け継いだ愛剣他ならなかったのだから。


「何ボーっとしてんだぁ!シャーロット!!その剣使え!」


「ぇ?」


「悪いが俺はもうここまでみたいだ……あんなに偉そうなこと言ってなんもできなかった。情けねえ。けど……お前は!こんなとこで終わらねぇ!その剣でガレット少しでも退けて、逃げろ!!」


 康介は壁に寄りかからながら、そう叫ぶ。


「こんなとこで死んだら、ただじゃ済まさねえ!!お前が俺を助けたんだ!俺が弱かったせいでお前が死んだなんて、そんなことにだけはなるんじゃねえぞ!!」

 

 シャーロットはその言葉をあっけに取られた様子で、康介の言ったことを聞いた。

 馬鹿だ。シャーロットがもう諦めていることなんて知らずにそんなこと言うなんて……


「本当に馬鹿ね……だけど……」


 だけど……なぜだろう。


 何故、彼の言葉には不思議な感覚がするのだろう。

 何故、彼の言葉はここまでシャーロットの心を動かすのだろう。


 何故ここまでシャーロットに力を与えるのだろう……


 いいや、今ごろそんなこと疑問に思うこともないか……


「……さっきだってそうだったわね……」


 さっきだって、康介はシャーロットに誰かを信じたいとそう思わせてくれた。



『誰かがお前のことを迷惑だなんて言うんだとしたら、俺はそいつを許さない!!』


 先の少年の言葉が蘇る。  


『前まであったことはいったん忘れろ!!俺に借りだけつくって、はいさよならなんて、そんなことさせるかよ!』


 そうだった。


「ふふっ、ははは、ははははは!!」


 シャーロットは笑った。大声をあげて。なんだ、そうだったのか。

簡単なことだったじゃないか。


「なに、笑ってんだぁ、お前。いかれちまったか?」


「ええ、ほんといかれてたわよ。けど今、その通りだなって思ったのよ……」


 康介からしたら、シャーロットにあったことなんて、知ったこっちゃない。


 なのに、どうしてシャーロットは自己完結してあきらめるようなことができよう。

 本当に康介のことを信じたなら、信じようと思ったなら、最後まであきらめてはいけない筈だ。


 前にあったことをごちゃごちゃ考えるな。

あの少年を少女を助けたいならば、剣を握れ。


 これが今、自分にできるケジメだろうが。


「一旦全て忘れて、今ここだけは、あなたに免じて抗ってみることにするわよ……」


 シャーロットはそう言い、自分の情けなさにため息をつく。


 本当にシャーロットは大馬鹿だ。悲劇のヒロイン気取って、自己犠牲のつもりだったのだろうか。


そんなことなんも意味はないではないか。



 最後まで諦めないで強敵に立ち向かう康介とファル。その2人を見てもそんなことが言えるのか。


 先ほど、思ったのではないのか。康介を信じると。


 確かに自分は単純なやつだと思う。諦めたなんて覚悟を決めても結局、他人の一言で気持ちが変わる。


(そういえば、最初あんなに嫌ってた剣をやりたいと思ったのだって、お母様の剣技を見てかっこいいと思ったからだったわね)


 母は今もシャーロットのことを空の上から見てるのだろうか。

見ていたらきっと、シャーロットは叱られてしまうだろう。母は誰よりも強い心を持っていたから。


 こんな弱いシャーロットを許してくれるはずがない。


 けど、吹っ切れた今ならわかる。


 多くを失ったから自分が責任をとる。

 違かった。


 本当にしなくてはいけなかったのは、これ以上何も失わないために剣を握ること。


『剣は己を守り、大切な何かを守るためにある』


(そういうことだったんだね、お母様……あやうく私は自分の信念を失うところだった)


 いつだってそうだった。


 何かを手にする為に剣を振っても、その中には守りたい何かがあったのだ。けど、シャーロットは未熟さ故に、本当に守りたいものを見失いその多くを失ってしまった。


 けど、それがなんだ。だからこそ、剣を振るのだ。


 もう、何も失わない為に、誰も傷つけない為に。

自分を残して死んでいった仲間の為にも。


 その瞬間、シャーロットの目には覇気が宿り、空気を震わせる。


「……決めたわ。私は戦う。けど、悪いけど、あなたのいう通り私は逃げたりはしない。もう、誰も失ったりしたくないもの」


 ここで逃げたら、シャーロットを助けてくれた2人を見捨てることになる。


 いくら2人がそれを望んでいてもそんなことはさせない。


 その答えを聞いて、康介は笑った。そして、最後に声を振り絞り……


「……任せたぞ……シャーロット……」


 そう言って、康介は倒れ込んだ。

その様子を見届けて、シャーロットは愛剣を拾う。


「無駄だ!!その抜けない剣で何ができるんだ。それともお前はその剣の抜き方を知ってるのか?まあ、それができたら最初から諦めて、棒立ちなんてしねえだろぉがな」


 流石ガレット、ご名答だ。ガレットの言う通り、シャーロットはこの剣を抜いたことがない。否ーー抜けたことがなかった。


 この剣は抜く権利がある者にしか抜けない。

前までシャーロットもこの剣を抜くことを諦めていた。自分には無理だと。

 あんなことをした自分が剣に認めてもらえるわけがない。母と同じ剣を使っていいはずがない。


「だけど不思議ね……」


 そう言うと、シャーロットは鞘に手をかける。

本当に不思議だ。

 今はこの剣が抜けるのが当たり前のように思えるのだから。


 さっきまでは死ぬことしか考えていなかったのに……


「……任されたわ、アラキダコウスケ。私を信じてくれてありがとう……だから、ここだけはもう一度私に任せてちょうだい!!」


 そうして、シャーロットは輝く刀身を見せつけ、青く光る剣を構えた。


 自分でどうしたかは覚えていない。ただ目の前には鞘から抜けた自分の愛剣がある。


 足元には先程までおさまっていた剣の鞘が、転がっていた。


ここまで読んでくれてありがどうございます!!

面白いと思ったらブックマーク、感想してくれると励みになります!


あと、下をスクロールして☆☆☆☆☆を★★★★★してくれると本当に嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ