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CreateWorld~絶対死なない半異世界生活~   作者: 夢幻星流
第1章「初めての異世界」
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第19話 終結の一撃


「うぉーー!!!」


「はぁーーー!!」


 康介の拳ととガレットの金棒、二つの力が衝突し火花を散らす。


 そして、その二つの力はほぼ互角に、お互いをはじきあった。


「っ!?」


「ふっ」


 康介はその様子を見て、笑う。


 そして、自分の攻撃をはじき返されたガレットはというと、先程、攻撃を止められた時と同じ、

驚いたように、目をかっ、と開いた。


「お、お前……」


「俺の憶測は、間違ってなかった!!」

 

 そして、康介は怯むガレット相手に突っ込み、拳を振り上げる。そう、先程までと同じようにただ突っ込み……


 しかし、康介の様子は先ほどまでとは全く違う、威圧感を放っていて……


「っ!?」


 康介はガレットの腕を掻い潜り、ガレットの胸に向かって拳を引いた。


「くらえよ」


 そして、放たれたその拳は、ガレットの胸に届き、その鉄のように硬いガレットの身体を、微かに凹ませたのだった。


「うっ!!」


 ガレットはその衝撃に声をこぼし、少し後ずさった。


「まだまだぁーー!!」


 しかし、康介はそんなガレットに容赦なく猛攻を浴びせていく。


 拳で顔、腹。

 そして、一旦ターンをして跳び上がり、強烈な蹴りをガレットの首に。


 身体が軽い、力がみなぎる。

まるで、自分の体じゃないみたいだ。


 そのような感覚の元、康介はガレットへの攻撃をやめない。


 いつまでも攻撃を続けていく。


 それに対し、ガレットも反撃をしようとするが、

康介は、そんなガレットの右腕を払い、金棒が床に落ちる。


 落ちた金棒を横目に康介は、右腕をガレットの顎向かって、振り上げた。

 その一撃は、ガレットの意識を奪う。


 そして、康介はよろけたガレットの胸に向かって……


「……」


黙って、ただ、拳を振るった。


_______________________________________



 超回復、という言葉を知っているだろうか。


 超回復とは、筋トレや、過度な運動で普段使わない筋肉を使った時などに、筋肉が刺激され、筋繊維が破壊される時に起こる現象である。


 しかし、人間の体には自然治癒力があるため、切れた筋繊維も自然に回復していく。 


 その、回復する過程で筋肉が肥大化し、筋肉が壊れる前より強くなる現象を超回復というのだ。



 そう。そして、今、康介の体ではこれと似た現象が超高速で起こっていた。


 ただの筋繊維の破壊ごときじゃない。

肉も骨も、内臓も、康介の身体の全てが破壊されるたび、より強く生まれ変わっていく……


 康介はその性質に気づき、ガレットにただ突っ込んで、ボコボコにされることを続けていたのだ。


「まあ、賭けだったけどな」


 正直康介も、この能力の仕組みに確信があったわけじゃない。

 ただ、一度ガレットの攻撃を受け止めた時、思ったのだ。


 傷つくたび、この身体は強くなっている。

 

 いや、本当はもっと前から気づいていたのかもしれない。


 チラから鉄球でボコボコにされた後も、ガレットに殺されかけた後も、何故か身体が軽かったし力がみなぎった。


 否ーー、何故か、ではない。


 そんな破壊と再生を繰り返し、康介の身体は今や先程とは段互いに強くなっていたのだろう。

 そして、それは今も続いている。


傷つくたび、強く生まれ変わる……


「……そんなの……俺に、ぴったりの能力じゃねえか」


そう言って、康介は笑い、ガレットの顔に蹴りを入れる。


 しかし、ガレットはその攻撃にひるみつつも、康介に鋭い反撃のパンチを浴びせた。

そのパンチは康介の頭に直撃し、一瞬、康介の意識は飛びかける。


 そう、この能力も完璧ではない。


 この能力は、痛みを伴う。それ故に、強烈な痛みを前に気を失ってしまうこともあるかも知れない。

 痛みを前に頭がおかしくなってしまうこともあるかもしれない。


 これがこの能力の今思いつく欠点だ。


 だが、


「……生憎、痛いことは慣れっこなんだよ……」


 そう言い、康介は飛びかけた意識を連れ戻す。


 不良の頃から、何度も打ちのめされてきた。

何度も傷を作ってきた。

 あの時の経験がここにきて生きるとは、何か皮肉だが。


 しかし、戦う理由はあの頃とは違う。

自分の欲の為だけじゃない。


「……今はみんなの役に立つ為に、勝つんだ!!」


 そして、康介は一歩踏み込み、ガレットの胸に拳をねじ込んだ。


 その攻撃を前にガレットは、思わず口から唾を吐き出して目をかっ、と開く。


「くらえっ!!」


 その様子を見て、康介が更なる連撃を浴びせようと、ガレットにまた一歩と踏み込み、拳を引いた。


(勝てる!)


 相手も体力がだいぶ減ってきただろうか。

このまま相手に攻撃を続けて、いつか相手の体力が尽きるまで攻撃を続けて……


 康介は、拳を前に突き出した。



「……おい」


 すると、次の瞬間、攻撃をしようとした康介の腹に異変が起きる。


 強い衝撃。


 その衝撃に康介は吹き飛ばされた。


 康介は何が起こったのか分からず、目の前を見る。

 すると、そこには腕を前に突き出し、立ち尽くしているガレットがいた。


「……さっきから、調子乗りやがって……」


「……!?」


 そうガレットが言った瞬間、康介の目の前に再び巨体が迫る。


「ぐっ!?」


その巨体から繰り出された攻撃に、康介は並外れた反射神経で反応し、腕でガードをするも、


「本命は、こっちだ」



 ガレットは康介に突き出している右手でなく、膝を康介の腹に食い込ませた。


「うっ!!」


そんなガレットの反撃により、康介の口からは何かがこぼれる。


……血だ。


 康介は腹を抱え、悶絶した。

康介の意識は、腹から広がる痛みと不快感に支配されていく。

 しかし、


「……ま、だ……まだ……だぁ」


 康介はその不屈の精神で立ち上がり、ガレットのことを睨んだ。


「おいおい、そんな顔すんなよ。まだまだ終わっちゃいねぇーんだろ?」


「……っ」


 康介は笑う。

目の前のガレットは、あれほど康介に攻撃をされたのにも関わらず、平然と立っている。


「安心しろやぁ……俺もまだまだ本気は出してねえからよぉ」


 そして、そう言うとガレットは、再び目をカッ、と開き、


「見せてやろう、俺の真の姿……」


 すると、その瞬間、ガレットの身体に異変が起きる。

 ガレットの脚の筋肉は大きく膨れ上がり、上半身もゴキッ、と大きく膨張した。


 元々、大きかったガレットの身体は全体的に膨張し、巨体化したのだった。


「さぁ、終わりの始まりだ!!」


「ーー!!」


 そして、ガレットがそう言ったかと思うと、その巨体が康介目掛けて飛びかかってきた。

康介はそれに対応することができずにガレットの攻撃を、ノーガードで受ける。


「ーーっ!!」


「まだまだぁーー!!!」


 攻撃の痛みに神経が飛んだ康介に対し、ガレットは更なるパンチを打ち出した。

しかし、


「こちとら、ただで殴られてるわけじゃねえ」


その攻撃は、また破壊からの再構築によってパワーアップした康介によって止められ、


「「うおーーー!!!」」


 そして、ガレットは右手を康介は左手を突き出し、

2人の拳は空中で交わりあう。


 その衝撃で康介の左腕からはメシッ、と言う音が響いた。


 しかし、それに臆することなく、康介は残っている右手で、ガレットにパンチをするが……


「っ!!」


 ガレットも、同じように左手でそれを阻止した。

毒に慣れてきたのだろうか。ガレットは毒に蝕まれているはずの左腕を前に出したのだ。


 そして、2人はお互い距離を取る。


 しかし、一息着く間もなく、再びぶつかりあった。

拳を交わせ、お互いの攻撃を避け合い、激しい攻防が続いた。


 康介の攻撃はガレットにはあまり効いていないが、ガレットの攻撃は康介にとって、とても重く、鋭い。


 いくら康介はその攻撃を受けるたびに身体が強く生まれ変わっていくとは言え、ガレットも勢いを緩めはしない……否、むしろ徐々に勢いを増すようにして攻撃をし、それを止める気配はなかった。


 そうして、戦いの構図は、攻めるガレットと防ぐ康介という形になっていく。


「っ……」


 苦しい状況だと判断し、康介はガレットのパンチを足の裏で受けることによって吹っ飛び、一旦ガレットから距離をとった。


「ははっ!大道芸人かぁ!!お前は!!」


 ガレットはそう言うと、再び康介に突っ込んでいった。

そんなガレットを前に康介は息を吐き、

 

「よし……治った」


「っ!?」


 そして、康介はガレットをうまく交わし、腹に強烈なパンチを打ちつけようとする。


 一息ついたことのより、康介の疲弊していた体は強く生まれ変わり、今までより鋭い攻撃を繰り出すことを可能とするのだ。


 その様子を見て、面白いと笑い、ガレットも自らの右手を前に突き出す。


 康介の攻撃がガレットの腹を打ちつけるのと同時に、ガレットは康介の頭を強く殴りつけた。

それにより、康介は吹っ飛び、立ち上がろうとするもふらっとよろけそうになる。しかし、なんとか持ちこたえ、またガレットに突っ込んでいった。


 しかし、ガレットはその康介の突進をいとも簡単に避け、康介に膝蹴りをお見舞いする。

そして、腹を抱えてもだえる康介の頭を両手で強く握り、顔面に強烈な膝蹴りをくらわせた。


「がっ……!?」

 

 その攻撃に康介は再びふらりとよろめき、今度こそその場で倒れこんでしまうのだった。


「あー、最後のはいい感じだったぞ。雑魚が粘りやがっ……あ?」


 そう声を漏らしたガレットが下をむくと、そこにはガレットの足を強く握る康介の姿が。

その様子にガレットは顔をしかめて、康介をもう片方の足で踏みつける。


「おい?往生際が悪いぞ」


「そんなこと言って、俺を殺せねえくせによ」


「じゃあ、お望み通り……」


ガレットはそう言って、康介の頭を片手で掴み、その手を地面に叩きつけた。大きな音と共に地面はへこむ。ガレットは続けて地面に向かってパンチを連打した。徹底的に康介を壊していく。そんな状態が長く続いた。そして、ガレットは康介の腹に手を突き刺し、腹を裂いた。中の内臓を引きちぎり、投げ捨てる。地面には血が広がっていく。

しかし、いくらガレットが康介をぐちゃぐちゃにしてもなんとかそれが人であったということだけはわかるだけの原型は保っている。


「回復するか……なら……」


ガレットは腹だけでなく腕、足に噛みつき、肉をえぐる。噛み捨て、肉をそぎ、むき出しになった白い骨を破壊する。そして、ガレットは横の壁を切り抜き、手で掴む。そして、その瓦礫を康介の上に被せた。ぐちゃぐちゃになった康介の体達は完全にその瓦礫によって潰された。


 それを見て、ファルはガレットに向かって手を向けた。


「ヴェント!」


 ガレットはその攻撃を避けて、ニヤリと笑う。


「次はお前ってか?はっ、いいのか、仲間の復活を願わなくても。まあ、それを聞くもの酷な話か……」


 瓦礫に埋もれる康介だったもの。あの惨状をみて康介の生存を信じることは難しい。しかし、ファルは不意に笑った。


「あなたはなにも分かっていない」


 そう言った瞬間、ドンと大きな音がして、瓦礫が崩れた。


「は?」


ガレットが思わず声を漏らして振り向く。

するとそこには、上裸で立つ男の姿が。


「今のは効いたぜ。始めてだよ、内臓いじられるのなんてよ」


「は、はは……やるじゃねえか。今のを耐えるとはな」


「はー!いい気分だぜ!悪いが今の俺はさっきまでの俺とは一味違う。さあ、やろうぜ」


 そう康介が言うと、ガレットはニヤッと笑い両手を上げた。


「やめだ!」


「やめる?戦いをか?どうした、負けを認めたか」


 後退ったガレットに、康介はそう挑発する。

しかし、ガレットは今度こそ、その挑発に乗ることはなく、


「ははっ、ほざけ。そうやって、何度も俺に突っ込ませて、俺の体力を減らそうってか?あまい。んなことしても俺に得はねえ」


「へぇ?さっきまでは引っかかってたくせにな」


「勘違いすんなよ……俺は、お前があまりにも自信満々なもんだから、あえてお前の策に乗ってやろうとしただけだ。どんな策が待ってるのか楽しみにしてたんだが……」


そして、ガレットはため息をつくようにして続けた。


「ただ回復するだけ。それでドヤ顔までしやがって。笑えるぜ!俺はまだ体力だって有り余ってる。俺の体力も減らせやしない。興ざめだ!!俺ももうこんな下らねえ茶番に付き合ってらんねえんだよ」


 そう言って笑うガレットは康介の返事を待つ。

 康介はどんなに頑張っても、ガレットの体力を削ることすらできない。


 康介はその事実を前にどんな風に絶望するのだろうか。成すすべなしとうなだれるのだろうか。

ガレットは待つ。まるで小鹿が命乞いするのを待つ狩人のように、


「何言ってんだ?お前?」


「あ?」


「お前、何強がってんだよ」


 しかし、康介はそう言い笑った。

 その予想外の答えにガレットは、驚くよりも前にイラつきをあらわにし……


「強がってるのはお前だろ!!ふざけんな!!」


 ガレットは声を大きく震わせる。


 その様子のガレットに康介は1度目を瞑り、また静かに開く。そして、ガレットのことを真っ直ぐと見て、口を開いたのだった。


「……お前、震えてんぞ」


「ぁ?」


 ガレットは自分の手を見る、足を見る。

 すると、彼の手は小刻みに、足はガクガクと震えていた。

 その事実にガレットは目を見開く。


 ありえない、なんで……


「な、なんで……なんだぁこれ!なんなんだぁー!!」


「おい、何マジになってんだよお前。さっきまでのお前なら、戯言だなんて言って、鼻で笑ってたところだろ?」


「……何が言いてえんだ!お前は!!」


「わかんねえか?お前、怖いんだろ?戦いの中で強くなっていく俺が。いくらぶちのめしても無傷で立ち上がる俺が。だから、これ以上俺と戦うのは危険だと判断した……違うか?」


「なんだと……」


「色々と理由つけてるみたいだがよ。俺がお前に勝つことは簡単じゃないのはわかる。けど、お前が俺に勝つことはもっと難しいんじゃねえか?結局は、このままじゃ俺に勝てねえから戦闘を放棄する。ってことだろ?それは、お前は俺に負けを認めたってことだ」


 しかし、ガレットはそんな風に物事を考えるタイプではないだろう。

 ガレットは戦いを好む。

 そして、相手のレベルが低いなら、自ら手を抜くことによって、少しずつ戦いを楽しんでいく。


 もし康介を脅威に思っていたなら、康介のことなんて力で押さえつけて、縄で縛れば無力化できるはずだ。


 よって、おそらく最初はガレットも手を抜いて、康介のことを雑魚だとしか思っていなかったのだろう。


 しかし、康介は不死身でいつで経っても立ち上がる。更に、徐々にだが力を上げていく。普通、このような敵と戦えば、だんだんと途方のない、勝ちが離れていくような感覚になっていくはずだ。


 それは、ガレットでも同じこと。

 舐めプをしてでも勝ててた相手がだんだんと強くなり、更に相手の倒し方がわからない。

 こんなの、戦う気が失せてきても無理はない。

 そんな相手を恐れてしまっても無理はないのだ。


 だが、ガレットはそんな自分の気持ちを認めたくないのだろう。

  

「お前は自分で気づいてないんだ。俺から知らぬ間に逃げようとしてることを。本能がそう言ってんのを気づかないフリして、正当ぶった理由をつけてる。認めろよ、お前は、最初はてめえで馬鹿にしてた俺に負けるんだってことを」


「何を言うかと思えばそんなことかよ?挑発には乗らねえってってんだろ!俺はお前に興味を無くした。だから、やらねえって言ってんだ!それのどこか正当ぶってんだ?あ?」


「本当にそうか?なら、なんで興味なくしたか言ってみろよ」


「はっ!言ったろ、俺は!お前と戦うのが飽きただけだ」


「違うな。俺は絶対死なねえし、戦いの中で強くなっていく。戦闘狂のお前にとって、こんな倒しがいのある敵はいないだろ?」


「……っ!」


 的を得た康介の言い分に対し、ガレットは言い返す言葉が見つからない。


 しかし、ガレットは本当に戦いから逃げようなどとは考えていなかった。

 では何故、ガレットはそんなこと言い始めたのか……


 すると、康介は再び話し始めた。


「……お前は……俺への興味を無くしたんじゃねえ。俺への勝ち方がわからない。だから、本能から俺との戦いを知らぬ間に避けようとしたんだ。お前は"俺に負けるのを恐れてる"んだ」


「……俺が……お前を恐れてる……」


 ガレットは康介の言葉に過剰に反応する。手を強く握り、その手は小刻みに揺れていた。

 この手の震えは先程とは、違かった。

ガレットの中から滲み出た何かがその行動にはあった。

 しかし、そんな様子もお構いなしに康介は続ける。


「ああ、お前は無理矢理にでも俺と戦いたくないって感じだったもんなぁ。震えてた、あん時からお前は俺にビビってたんだよ」


「………」


「なんだ?なんも言い返さねえのか?認めるのか、今のこと」


「……黙れ……」


「ぁ?声が小さくて……」


「うるせぇーーー!!!」


 そう言うと、突然ガレットはものすごい形相で康介目掛けて、突っ込んできた。

 それに対して、康介は突っ込んでくるガレットを避ける。しかし、ガレットはそれだけでは諦めず、何度も攻撃をする。

 そして、それらを康介は避け、ガレットに反撃のパンチをくらわした。


「だ、っから……そんなパンチ効かねぇーー!!!」


 ガレットはその攻撃を受け止め、康介の顔面に強烈な一撃を喰らわした。

その攻撃を食らい康介は顔から血を飛ばす。


「お前に何ができる!!弱いお前に!」


 ガレットはいかれたように康介のことを殴りつけては蹴り上げ、首をつかみ地面にたたきつけた。


 しかし、それでも康介は立ち上がる。


「……こっちだって、そんなちんけな攻撃は……もう効かねえぞ!」


「ーーっ!!」


康介は、ひるんだガレットの腹にパンチをくらわす。


「なんで、なんでお前はいつまでも……」


「気づけよ!!自分では知らないうちに、遠回しに俺との戦いを避けようとしてんだってことを!!自分のことの気持ちをなんもわかってねぇーんだよ!!」


更に、ガレットは康介のパンチを止め、2人は再び距離をとった。


「偉そうに言って、結局こんなもんか?」


「言っとけ、お前じゃ不死身の俺には勝てない」


「お前こそ、効かない攻撃でどうやって俺に勝つ気なんだよ。勝てもしねえのに喚きやがって。挑発しかできない、そんな奴を俺が恐れてるだぁ?」


「随分と気にするじゃねえか。そんなに嫌だったかよ。それとも……図星だったのか?」


「ーーっ!!黙れぇーー!!」


 ガレットは怒りをあらわにし、康介に突っ込んでいく。

そして、康介の腹に横からパンチをくらわした。

その攻撃に康介は、大きく吹っ飛び、地面に倒れこむ。


「俺はあの時とは違う!!もう、弱い俺なんかじゃねえんだ……」


ガレットはつぶやく。

そして、康介にとどめを刺そうと、地面に落ちている金棒を拾った。


「俺はもう何も恐れない。あの時、誓った。邪魔な……弱い俺はもういないんだ……」


「よそ見……すんなよ」


「!?」


 すると、目の前には康介が拳を握り、握ったその拳をを後ろに大きく引いている姿があった。

 そして、その一撃はガレットの顎を爽快に打ち抜く。

 何が地雷だったのか詳しくはわからないが、今ガレットは想像以上に大きく取り乱している。

 決めるならここしかないだろう。


「っ……」


 康介からの攻撃を受け、ガレットはすぐさま反撃しようと金棒を振り上げたるが、その攻撃を康介さっとかがみこんでに避ける。


「お前が何でそれを認めたくないのかは知らねえ。お前に何があったのかは知らねえ。けどなぁ、人は自分の考え、そう簡単に変えられねえんだ。今わかったぜ。だから、お前は、あんなことが平気でできるんだな」

 

「あぁ?あんな、ことだぁ?」


「人を平気で傷つけ、盗賊なんてしょうもないことしやがって……お前、被害者の気持ち考えたことあんのか?殴られたら、痛いんだ!もの奪われたら困るだろぉーが!そんなこともわかんねえのかよ!!」


「ああ、分からねえな。んな雑魚の考えることなんて……」


「そうか、なら教えてやる。恐怖するんだよ。人はどうしようもなくなった時恐怖するんだ!今のお前みたいにだ!」


「っ!!」


 悪人は恐怖を知り、被害者の気持ちを知る。

だが、そんなんで更生できたら誰も苦労はしない。

 だから、康介がやるべきこと、それは……


 そうして、金棒を振りかざすガレットの攻撃を、康介はぎりぎり避け、また叫んだ。


「人はなぁ、一回腐ったら自分じゃどうしようもねえんだよ……自分じゃその失態になんか気づけやしねえんだ!!」


 康介もそうだった。

 周りのことなんて考えずに、喧嘩ばかりしていたあの頃。大切なものを傷つけてしまっていたあの頃。そんな康介を変えるきっかけをくれたのは志保と母と父の存在だった。

 異世界に来て、康介の考えを正してくれたのはファルだった。

 失敗しても、もう一度だけ、立ち上がりたい。誰かを助けたいと、そう思わせてくれたのはシャーロットだった。


「俺は色んな人に気づかされて、助けられて、今ここにいるんだよ……」


 その点、ガレットは周りの人に恵まれてなかったのだろう。

 ガレットはこれまで1人で生きてきたのかもしれない。腐った性根を、間違った考えを正してくれる。気づかせてくれるそんな存在に出会うことはなく。


だが……


「俺は、お前のことを憐れんでなんかやんねぇ。俺がお前にできることは、この拳でお前をぶっ飛ばしてやることぐらいだ!!」


 そうして、康介はガレットの腹に一撃をお見舞いした。

 しかし、康介の放つパンチでは、今のガレットにさほど効きもしない。


「黙れ!!お前に俺を説教する資格があんのかぁ?あぁ?お前に何ができる?お前には俺をぶっ飛ばすことだってできやしねぇ!!アリがゾウに勝てないように、お前じゃ俺のことは絶対に倒せねえんだよ!!」


そう言いガレットは金棒で康介の頭を打ち抜こうとする。しかし、康介はその一撃を屈んで交わし、


「さっきから絶対絶対って、んなもんこの世にはねえんよ」


 確かに、ガレットの言う通り、康介1人じゃガレットを倒せるほどの攻撃をすることなんかできないかもしれない。

 だが……


「こいつなら、どうだ?」


そして、そう言った康介の掌には、先程ファルから貰った石が握られていた。


「はっ!それはもうガス切れ!残念だなぁ!!お前の負けだぁー!!」


 しかし、康介は変わらずその石を握りしめ、それをガレットの腹に拳を迫らせていく。


「アリにだって羽があるやつがいるだろ。ゾウじゃ届かねえ場所まで羽ばたいていける。その一つの羽ばたきがいつか竜巻を起こすように……一つ一つの助けが協力が、大きな力へと、勝利へと繋がっていくんだよ……」


 そして、康介は握りしめた石を右手で握りつぶした。

 すると、康介の拳からは光が漏れ出し……


「お前……魔石を潰してエネルギーを……自分ごと死ぬ気か?!」


「悪いなあ、俺は不死身なもんで、泥臭いのがお似合いだってなぁ……」


そうして、康介は漏れ出す光をガレットの腹に打ちつけ……


「これが俺の……みんなの力で創り出した、"必殺腹パン"だ!!」


 この康介の一言と共に地下室中は光に包まれていき……



 大きな轟音と共にこの戦いは幕を閉じたのであった。



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