第1話 始まりの光
ある日の夜、ここは東京都のとある町。
そこには母と2人暮らしと特に変わった様子もないごく普通の少年がいた。
しかし、その少年は今家にはいない。
時刻午前0時の真夜中である今、17歳である彼が外にいるのは少し問題なのだが、安心してほしい。
彼は今一人ではなく大勢に囲まれている。(そういう問題でもない)
それでは今、彼は何をしているのかというと……
「あ?ちょっとこっち来いっつってんーー!?」
「なにしてんだ!?おまっ、ぐへ!?」
と、2人の男が一人の少年に吹き飛ばされ、声を漏らした。
その少年は吹き飛んだ2人の男たちを見下ろし、やっちまったと呟きながら小さく舌打ちをする。
黒髪で長さは短めのややギザギザ頭。背丈は170センチ前半で日本人男子の平均身長よりやや上。
そして、その少年は人一倍鋭い目つきで、相手を睨みつけた。
「この2人には悪いけどさ、帰らせてくれねえか?」
「はぁ?うちの仲間にひどいことしておいて、逃がさねえよぉぉぉっっ?!!?」
最後、この男の語尾が不自然に上がった理由は、目の前の少年によって腹を殴られてしまったからである。
「あ、すまん、手が勝手に……」
そう言いかけたところで、少年は飛びかかってきた男たちを軽くいなす。そして、身軽に壁の上に登り、男たちの頭上を飛び越える。
「おい、追いかけろ!」
「逃げてんじゃねーぞ!」
「カミラギさんが黙ってねえぞ!!」
少年は全速力で走りながら、聞きたくなくても聞こえてくる怒号に対し、呆れた顔で呟く。
「カミラギって俺が昔シメた不良じゃんか。あいつ、まだこんなことしてたのかよ」
「見つけたぞ!」
「やべ、先回りされたか」
少年は目の前にいる数人の男と後ろから追いかけてくる男たちをチラチラと見る。
そして、
「ほらよっと」
少年は壁のブロック塀を飛び越えてそのまま民家に侵入するかと思われたが、ブロック塀の上を走り、民家に植えてある立派な木に飛び移った。
それから、裏の道に出ると、二階建てのアパートの外の階段を駆け上がり、アパートのドアの横を駆け抜けていき、大きくジャンプ。
少年は夜の空を背景にして宙に浮いた。
そして、民家の屋根に着地すると、屋根を駆け抜けて、電柱に飛び移る。電柱に手をかけて勢いを弱めて、少年は地面に着地した。
それからしばらく走っていたが、少年は怒号が遠くなったのを感じ、走る速度を緩めた。そして、やってきたのは最初にいた路地である。
「焦って、買ったジュースとるの忘れちまったじゃねえか」
そう言って、少年──否、荒木田康介は、床に置いていたレジ袋に入ったジュースを手に取り、大きなあくびをしながら暗い道を歩いて行ったのだった。
「それにしても災難だ。ただコンビニにジュース買いに行っただけで不良に絡まれるなんてな。どうなってんだぁ?この町.....」
状況を説明しよう。
時間は真夜中。高校生なら補導される時間帯だが、康介は何の抵抗もなくコンビニにジュースを買いに行った。
そして、お目当てのジュースを買い、店の外に出て、コンビニの前の道路の角を少し曲がったところで問題は起きた。
前から歩いてきた不良の集団のうちの1人に肩をぶつけられたのだ。康介が軽く頭を下げて謝りその場を去ろうとしたところ、相手がキレ始めて、裏に来いと指示された。
勿論、従うわけなくそれを拒否したところ腕を強く掴まれたのだが、何気に痛かったので、反射的に相手を殴り飛ばしてしまった。
ざっと、こんなところである。
ただ、夜中に小腹が空いてジュースを買いに行くという何気ないごく自然な行動。この町ではそんな当たり前のことも制限されてしまうらしい。
「はぁ……。とは言っても、俺もついやっちまった。人殴るのってこんな拳痛くなるっけな。折れてんじゃねえか?」
実を言うとこの荒木田康介は不良であった過去をもつ。しかし、もうすでに彼はその道からは足を洗っている。
引退したとはいえ、康介は地元では中々有名だったと自負していた。
そのため、あまり不良に絡まれないようにある程度工夫をする必要があった。
そう。なるべく人通りの多い道を歩いたり、人の顔をジロジロ見ない、学校と食料、漫画調達以外での外出は避ける、など。
そのように、康介はここ最近、不良、喧嘩などとは無縁の生活を送ってきたのだった。
「荒木田康介、不良界に復活とかなったら洒落になんねぇ。クソっ、思わず手が出ちまった。今度からは絡まれても絶対に喧嘩はダメだ」
そんなこと言いながら歩いているうちに家についた。
ただいまと小さな声で言って、二階にある自分の部屋に直行する。冒頭で述べた通り、康介は母と二人暮らしである。母はもう寝ているようだったので、起こしては悪い。できるだけ静かに階段を登る。
今日はちょっと精神的に疲れたため早く寝ようと、自分の部屋に入るなり買ってきたジュースを自分の部屋にある冷蔵庫に入れ、康介はベットに横たわった。
子供の部屋に冷蔵庫があるという比較的変わった家庭である荒木田家(少なくとも本人はそれが普通だと思っている)の就寝時刻は12:00である。今は何時かと、康介は時計を見ると、
「早く寝ようってもう12時回ってんのかよ。それと、正確には疲れたのは昨日ってか……はぁ、今日こそは安泰な生活を送りたいぜ」
不良をやめてから、安泰な暮らしを望んいる康介だがなかなか実現しないものだ。
電車に乗れば、おじさんにいちゃもんつけられて絡まれる。
道を歩けば、おばあさんに道を聞かれて、結局は案内する羽目になる。
コンビニ行ったら不良に絡まれる。
まあ、それにいちいち付き合ってしまう康介も康介なのだが……
考えるより先に動いてしまうのだ。そのせいで我慢すべきこともそれができない。
「……人間そう簡単には変われねぇよな」
すぐには変われない、だから、少しづつ変わっていくしかないのだ。
なんてベットに横になりながら日々の暮らしのことを考えてるうちに、康介は眠りに落ちたのだった。
そして日が明け、康介は目を覚ます。
(今何時だ?)
そう思い、時計を見るとそこには9時とデジタルで表示されている。
「はぁ?9時?まずい遅刻だ!」
そうして、康介は急いで制服に着替えて、階段を駆け下りたが、最後の一段を踏み外して転ぶ。
けんけん歩きをしてリビングに行くと、そこには呑気な顔をしている母がいた。
「あ、おはよう。廊下で大きな音がしたけど大丈夫?」
「ああ、おかげで逆に目が覚めたよ!つーか、目覚まし鳴ってなかったか?なんで起こしてくれねえんだよ!」
「鳴ってたわよ。けど、あまりにも気持ちよさそうに寝てるから……」
的外れな優しさを見せる母だが、とんだありがた迷惑だ。
不良だった息子を優しく見守っていただけあって、少し抜けた部分のある母親だ。
子供の本能を大事にしているのだろうか?
まあ、そんなことを言及する間もなく、洗面台で顔を洗い玄関に直行する。
「あら、朝ごはん食べないの?」
「何言ってんだよ?!時間ねぇっつうの!」
母が呑気にそう質問してくるのに対し、康介はやや怒り気味に返し、慌てて家を出て行った。
「つれないわねぇ、ツンツンしちゃって」
すると、母は息子が食べると思って作っておいた朝食を自分で食べ始め、何となくテレビをつけた。
テレビではニュースをやっていた。
「速報:謎の光、日本列島に到達」
「ふー、あと少し」
家から歩いて15分ほどの場所にある康介の高校は、走れば5分足らずで行ける。何とか1時限目には間に合いそうだ。
今は信号につかまっている康介だが、周りを見渡すとある不思議なことに気づく。
「この時間帯ってこんな道路混んでるのか?」
道路には渋滞ができておりクラクションを鳴らす車もいるほどだ。さらに、信号のある交差点では、交差点の中まで車が入り込んでいて、明らかにいつもと様子が違う。警官が交差点の真ん中に立ち笛を鳴らしている。
それともう一つ不可解な点は、道路の左右どちらにも車が同じ方向を向いているということ。
「なんだなんだ、事故?なんかあったのか?」
そんな疑問を抱えながら、康介は通学路である住宅街に入った。
そこでも車の行き来は多く、家の前で出かける準備をしている家族がいる。
やはり、康介の知らない何かが起こっているのだろうか。気にしすぎか、と思い直すが、見る人の多くが何かと急いでいるようにも見えたのは気のせいだろうか。
「やべー、1時限目始まってんじゃねえか、この時間は」
道に車が多かったせいで横断歩道にも車が入り込んでいたため全速力で走れなかったことが遅れた原因の1つだろう。
急いで3階にある教室に向かおうとするが、ある異変に気づく。学校中のどこにも人の姿が見当たらないのだ。それでも、康介は一応クラスの教室に行ってみるが、誰もいるはずもなかった。
(おいおい、今日って学校休みなのか?)
校内からのどこからも人の声は聞こえない。
「そういや、いつも門にたってる生活指導の教師がいなかったっけな」
本当に休みかもしれない……
「いや、そんなはずはない。昨日、誰もそんなこと言ってなかったしよ。けど、もしそうなんだとしたら……あぁー、間抜けすぎる、馬鹿らしくなってきたぜ。俺の貴重な朝を返せ。走った労力を返せ。はぁ、くだらねえ、とっとと家帰ってマンガでも……」
その時だった。カーテンの閉じた窓から何か強い光が漏れたのだった。
「あ、なんだ?」
康介は何事かと思い、ゆっくりと教室の奥まで歩き、窓のカーテンを開ける。
すると……
「は?」
その瞬間、康介の目の前に映し出された光景。
それは、遠くの町が瞬く間に青白い光に飲まれていく光景だった。
直線的な光ではない。水平線のようにその光は広がってきている。
「は?え、え……ま、まて……」
(な、何が起きているんだ。光?な、なんだよあれ?)
そして、見間違えでなければその光は自分のほうへ迫ってきている。
「ま、まずい。逃げる……?」
(どこへ?)
「は?いや、なんだ、な、なんだよ!おいおい、どうすれば、どうすれば……」
しかし、その問いに返事はない。
「ま、まって……!」
青白い光はその言葉に従うことはなく、一瞬にして康介の目の前に……
「なにが……」
その言葉とともに荒木田康介は青白い光に巻き込まれた。
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(なん……だよ……ここ……)
そこは辺り一面青白い光に包まれているどこかだった。宙に浮いている?ここはどこだろうか。
(がぁ、あ、あつい!?)
しかし、そんなことを考える前に、体が切り裂けそうなくらい痛い、熱い。
まるでこの体がこの空間を拒んでいるように。
(だれ、か……!!アア!なんだ、よ。ごれ……)
いっそ死んだほうがましとまで思えるほどの痛み。
(ア、ガガ……)
叫ぶ。が、声は出ない。否、出しているが聞こえない。
ここにいるのは自分だけだろうかという疑問が一瞬浮かぶが、この痛みによってそんなものはすぐにかき消されてしまう。
(だずげ、で……ぐれぇ。)
そう悶絶しながらも、頭に浮かぶのは母親、友達、そして……あの日の出来事……あの少女の顔……
まだ、終わらない。変わらないといけない……
このままでは終われない!
今起きていることが、この痛みが、この苦しみが、もしも夢ならばどうか覚めてくれと願い……
(絶対、死んでたまるか)
朦朧とした意識の中でそう決心したのであった。
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鳥のさえずり、かすかに香る木々のにおい。そして、木漏れ日が康介の顔を照らす。
「なんだ……ここは?」
床の硬さ、温度、景色。以下の3点から、康介は自分が今寝そべっているのは家のベットではないことを確信した。
「も、り……か?」
どうやらここは森らしい。とりあえず、地に寝そべるのはやめて、立ち上がろうとし、
(どうして、森なんかいんだ?それより俺はさっきまで……)
そのことを思い出そうとしたその瞬間、頭に割れるような痛みが走った。
まるで、頭になにか固いものが当たったかのように頭が痛む。
というか、本当に何かが頭に落ちてきていた。
「え?なんだこれ?」
それはヤシの実のような大きめの木の実だった。持ち上げてみるとだいぶ重い。
そこで康介のお腹がグーとおなかが鳴る。
そういえば朝は何も食べていなかった。というか昨晩もジュース以外何も食べてない。
この実は食べれるのだろうか?
そして、ひとまず手に取ったヤシの実(仮)を地面に置き、代わりにそばにあった石を拾った。
「割れるか?」
ヤシの木(仮)の高さからして、そこから落ちてきて割れなかったことなどを考えるとなかなか頑丈そうだが、
「おりゃ!おりゃ、おりゃ」
石のとがった部分で何度か叩くとヤシの実(仮)にはひびが入ってきて……
「っ!」
ついに穴があいた。実の中には汁が入っていたので、汁を指につけてみる。
においはミントのようにすーすーとしていて、少し清涼感があった。
「よーし、飲むぞ」
そう言いながら、実を持ち上げごくりと一口だけ汁を飲もうとするが、
「って、待て。毒かもしれないだろ。危ない危ない。食欲に負けるとこだったぜ。はあ、ほかに食べ物を探すか……ってか、ここがどこかもわからんのに意外に冷静なんだな俺」
と、その時。天を見上げていた康介の目の前に黒い影が。
またもや頭に木の実が降ってきて、康介の脳天をぶち抜いた。
そして、康介はその勢いで、飲むふりをして口にまで近づけていた木の実の汁を口に流し込みそれを呑みこんでしまった。
「うがー、ぺっぺ!吐き出せ、吐き出せ!!」
康介は焦って吐き出そうとするが、もう遅い。その汁の風味が口中に広がる。
(辛いぃ!!……けど、ミンティアみたいだ。セーフか?これは)
なんて思っていた時、康介の体に異変が起こる。口の中、食道、胃に激痛が走る。
康介は思わず実を手から落とし、倒れこみ、手で自分の喉をつかんだ。
「がぁぁ……」
(辛いなんてレベルじゃねえぞ。のどが熱い……焼ける……)
涙が出てくる。
しかし、しばらく地面で転がり苦しんでいると、痛みが次第に消えてきてきて……
そして、康介は喉から手を放し、立ち上がる。
「はあ、はあ、なんだったんだ?てか、やっぱそこら辺にあるやつ何でも食ってみようとするもんじゃねえな、うぇっ」
康介はそんな当たり前のことをつぶやきながら自分の腹を見た。
まあ、少しは腹の足しにはなったような気がするから良しとする。
もしかしたら、お腹がマヒしてしまったのかもしれないが。
だが、不思議だ。あんなに痛かったのに今はひりひりともしないとは。
ともかく食事?が終わったところで、康介は今自分の置かれた状況を考えてみる。
「えーっと、俺はついさっきまで学校にいて、窓から光が……」
そうだ、思い出した。
(たしか、俺は学校であの光に巻き込まれて……)
じゃあここはどこだろう。
「まさか……」
なんかこれと似たような展開を漫画で読んだことがある。
その瞬間、康介を覆うほどの影をつくる大きな鳥……のような生き物が頭上を横切った。
「もしかして……」
気が付いたら、知らない場所にいて、そこには見たこともないでっかい鳥!
「い、異世界転移ってやつぅぅーーー!!!!」
そう荒木田康介は大声を張り上げた。
読んでいただきありがとうございます。
これからストーリー展開していくつもりです。
ヒロインも出ます。
少しでも面白そうだなって思ってくれた方は、
ブックマーク、感想待ってます!!
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