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CreateWorld~絶対死なない半異世界生活~   作者: 夢幻星流
第1章「初めての異世界」
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第16話 俺を見てろ!!


「リベンジ……ね」


 今思えば、康介は不良の頃何度もリベンジマッチをしていたものだ。

 本当あの頃は周りのことなんて何も考えず、無鉄砲で、馬鹿で、思い出すだけで呆れる。

 だからこそ、もう不良は辞めたのに……


「また、こうして一度負けた相手に挑んでんのも何かの因果なのかもしれないな」


 康介は自分で呟いたその言葉に感慨深いものを感じる。もう自分はあの頃と違うと康介は思っていた。

 しかし、今こうして康介が闘うのだって自分のやりたい事をする為であり、細かいところは違えど、あの頃と根底は変わってない。


「人間、そう簡単に変わんねえよ。……良いところもなっ」


「何、ごちゃごちゃ言ってやがるぅー!!」


 すると、そう呟いた康介に向けてガレットから強烈な一撃がお見舞いされ、康介はその攻撃を辛うじて両腕でガードする。

 しかし、その威力を前に康介の腕からはボキと、不穏な音がしたが……


 その折れた腕も直ぐに形が元に戻っていき、あっという間に治癒してしまう。


「気持ち悪いなぁ、その能力はぁ!!」


「褒めてもなんも出てこねえぜ!!」


 そう言いながらも康介は相手の攻撃を恐れず、勇猛果敢にガレットに突っ込んでいく。

 しかし、ガレットは素早く金棒をふるい、康介を横殴りにした。


「っく……!?」


 容赦無く繰り出されたその攻撃は再び康介の腕に強打し、康介の口からは声が漏れる。

 しかし、ガレットは攻撃を止めることをせずに、むしろ苦しむ康介を見て楽しむように笑った。


「まだまだぁーー!!」


「かっ!?」


 ガレットは金棒で康介を地面にたたきつけ、浮き上がった康介の身体をさらに金棒でたたきつけた。

 腹、頭、腹、頭、とその連撃を受け康介は白目となり思わず気を失いそうになるが……


「うおーーー!!」


 なんとか気合いで持ち堪え、体中の痛みを我慢する。

 すると、ぐちゃぐちゃになった顔面の傷口からは煙のようなものが出てきて変形し、自然に傷が治っていった。


「はぁはぁ」


 息を切らしながらも康介はあきらめない様子でガレットを見やる。そんな康介を見たガレットはさらに笑い、声を高々に上げ、


「どうした!?こんなもんか?」


「まだまだぁ!!こんなもんじゃねぇぞ!!


 そして、康介は声を荒くし再びガレットに突撃しようとするが、


「おっせぇよ!」


「うぐっ!?」


 ガレットが脅威的なスピードで康介の目の前に現れ、康介の顔を金棒で叩きつけた。


「ははっ、もうやめたらどうだ?力の差は歴然だぜ?」


「まだ……」


「へー、そうかよ」


「ガッ!?」


 今度は康介がその場を立ち上がった瞬間金棒でその頭を打ちつける。

 そして、また立ち上がろうとしてもその頭を金棒で打ちつける。


 それはまさに、ゲームでよくある復活したての相手を狩るリスキルと呼ばれる行為のようだった。

 ただ、ガレットのするそれはゲームなんかとは比べ物にならない程残酷で無慈悲であって……


「うっ……」


「おーい、起きてるかぁ?あ?」


「っ??!」


「ははっ、もう声も出ねえか?」


 ガレットは痛みに悶絶する康介を見下ろしながら、笑みをこぼすが……


 康介は右手でガレットの脚を掴む。

すると、掴まれた脚の部分からは薄く煙が起こり……


「っ!!てめっ!」


 ガレットは脚に走った激痛を前に反射的に目の前の康介を蹴り上げた。

 康介はそのまま無造作に吹っ飛んだ後、ゆっくりと立ち上がり、


「ヤ、ヤスぃの実の毒は痛えだろ。皮膚に触れただけで激痛だぜ」


 そう言った康介の右手にはべっとりとヤスィの実の汁がついている。これは先程、ガレットにリスキルされている途中、たまたま床に溢れていたそれを手で触れたものだ。

 使えるものはなんでも使う。


「まさか、初対面最悪のお前に助けられるとは思わなかったけどな」


「さっき俺の左手に浴びせた木の実の液……床に溢れた分を自分の右手に?イカれてるなお前」


「そうでもねえぜ。何故か知らねえけど俺はその液に触れても痛みを感じねえんだよ」


 そう言うと、康介は首を鳴らす。


「てな訳で、俺は完全回復したぜ。散々ボコスカ殴りやがってよぉ。てめえの番だよ次は」


「っ……気持ちわりい野郎だなぁ!お前はぁ!!」


 そう叫び、今度はガレットから康介に突っ込み金棒を振るう。しかし、康介はその攻撃を先程より早く対応し横に避ける。


「ガァ!!」


 そう叫んでガレットが再度放ったその弾丸じみた金棒を、康介はまたもや避けるが、


「うっ!!」


 金棒ではなく、ガレットの蹴りが康介の横腹に激突する。なんとか、反応し腕でガードをするもその脅威的な威力に康介の腕が変な方向に曲がると共に、その体ごと吹っ飛んだ。


「くっ、いってえな。てめぇ本当に人間かよ……」


 そう文句をぶつぶつと言いながら起き上がった後、康介は再びガレットに向かおうとするが……



「もう、やめて!!」


 背後から透き通った声が響き渡った。


 康介が見るとそこには声を荒げるシャーロットがいた。シャーロットは自分もボロボロになりながらも、そう叫ぶと、


「どうして、そんなになるまで……」


 今度は泣きそうに声を震わせる。

そんなシャーロットに康介は振り向き、


「シャーロット……」


 康介はシャーロットのことを見て、そう呼びかける。そして、真剣なまなざしでシャーロットを見つめて……


「どうしたぁーー!!」


 すると、シャーロットに気を取られた康介にガレットが金棒をふるう。康介はその一撃を素早く避けると、一旦ガレットから距離をとった。


そして、シャーロットに語りかける。


「シャーロット、勘違いすんなよ」


「え?」


「俺は自分のために戦ってる。お前を助けるってぇのは決してお前の為にってわけじゃないんだ。だから、そのためのやり方は誰にも指図させねえよ」


「わ、私はあなたが傷つく姿が見たくないだけで……」


「じゃあ、見ないでくれて結構だ。目を塞いどけよ」


「っ!?……何よ、それ……」


シャーロットは一瞬怒りの篭った目で康介を見るが、


「もう、やめてよ……私はもう……」


「………………」


 そのままシャーロットは俯き、声を震わせた。

 しかし、


「やめねぇ」


「なんで!?」


 なぜだろう。


 目の前の少女は本当に辛そうな顔をしている。なぜ彼女は苦しんでいるのか。  


 自分は今、彼女を傷つけてしまっているのだろうか。

 今、自分がしていることはシャーロットにとって迷惑なのだろうか……


『ワタシはコウスケさんを肯定します!!……だからもう、迷惑だなんて言わないでください』


 ああ、そうだよな。


 すると、康介は俯いたシャーロットに近づいて行き、


「俺はやめないよ。シャーロット」


「どうして……」


「俺がそうしたいからだ」


「っ!?またそればっかり……私はただあなたに……部外者に迷惑をかけたくないだけなのに!!どうしてあなたはそこまで私を助けようとするの?私はあなたに逃げて欲しかった!もう私は誰も巻き込みたくない!誰も傷つけたくないのよ!!」


 ああ、そうか、お前もそうだったんだな。


 もう、誰も傷つけたくない、誰にも迷惑をかけたくないって。

 そんなの……


「……お前は馬鹿だ。大馬鹿だ!!」


「なっ!?」


 そう言われ、シャーロットは俯いていた顔をあげ、康介のことを見つめた。


「今なんて……」


「お前が馬鹿だと言ったんだ」


「っ!?」


 シャーロットは聞いた言葉が聞き間違いでないことを確認してもなお、その言葉の意味がわからない様子だった。

 しかし、そんなことお構いなしに康介は続ける。


「お前、本気で言ってんのかよ。自分のせいで俺を巻き込んだって」


「だって、私は!!」


「何言ってんだ!!シャーロットは俺を助けてくれたじゃねぇか!!」


「……」


 康介はそう叫ぶ。


「お前は、見知らぬ俺を身を挺してでも守ってくれたじゃねえか!!」


「それは……」


「それなのになんで、自分を責めれるんだよ!!」


「あなたは何も分かってない!私の事情だって……なにも……」


「ああ、そうだ。知らねえよ。お前がどんな風に育って、いままでどんなことをしてきたかも!だけどな、今日、盗賊から俺を助けてくれたシャーロットを俺は知ってる。その気持ちは、俺を助けたその優しさは、もう誰にも迷惑をかけたくないっていうその悔しさは、俺が一番知ってる!!」


 シャーロットはその言葉に対し、怒りを覚えるように、


「勝手なこと言わないで!あなたに何がわかるの!!」


「わかる!!」


「どうして!?」


「俺も……そう思っていたからだ」


「!?」


「みんなに迷惑をかけて、傷つけて、シャーロットに迷惑をかけてさ……もう誰にも迷惑かけたくないって、ふさぎ込んで……けど、ある奴が教えてくれたんだよ。誰かを助けるってことだけは……迷惑とかそういう事じゃねえんだよって。そこにある優しさまでなくしちまったらよ。俺じゃねえんだよ」


「迷惑だろうがさ、その優しさまで自分で否定しちまったらさ、だれがそいつを肯定できるんだよ。そこは捨てちゃいけねえんだよ。そりゃ優しさだろうが、誰かの迷惑になることだってあるかもしんねえ。けどさ、そういう俺の行動を肯定してくれる人がいるんだ。こんなどうしようもねえ俺にだっているんだよ。それなのに、誰が、お前を否定できるっつうんだよ」


「誰が、俺を救ったシャーロットが俺に迷惑をかけてるだなんて、そんな馬鹿げたこと言えるんだよ」


 康介はそうつぶやいた。まるで、今闘いの途中であることを忘れているように静かにつぶやいた。シャーロットに思いをぶつけるように。過去に起こったこと、自分を信じてくれる人がいることを思い出すように。


 自分が先程ファルに言われた言葉。

それを康介が言う資格はないのかもしれない。

 一度はシャーロットのことを忘れようとして、王都に行こうとした康介が言う資格は……


 だけど……


「誰かがお前のことを迷惑だと言うんだとしたら、俺はそいつを許さない!!」


「けど、私は……みんなを……」


「ふざけんな!何があったのかは知らねえ。なんでそんなことで悩んでんのかも知らねえ。けどなぁ!お前はこの俺を助けたんだ!!その前にどんなことをしてたとしても、その気持ちに、その善意に、嘘はないんだよ!!」


「前まであったことはいったん忘れろ!!俺に借りだけつくって、はいさよならなんて、そんなことさせるかよ!だから、今は黙って俺に借りを返されろ!」


 そう息をのみ、


「だから、今は黙って俺を見てろ!!!」


「……」


 その言葉を聞き、シャーロットは少し下を向き呟く。


「そんなのすごい勝手よ……」


「ああ、悪いか?」


「結局、無理矢理私に借りを返したいってこと?」


「それだけじゃねよ」


 なぜだろう。なぜ自分は今、ガレットと戦っているのだろうか。


 なぜ、シャーロットを助けるためにここまでするのか。


 いや……


「そんなの決まってるだろ」


 康介はシャーロットに向き直す。


「俺の恩人を傷つけたあの馬鹿野郎と、恩人を平気で見捨てようとした大馬鹿野郎をぶっ飛ばす為だ」


理屈が通ってなくても良い。

素直じゃなくても良い。


「だから、それが終わった後、俺がお前を助けて証明してやるよ。お前が俺を助けてよかったって。お前は誰の迷惑もかけてねぇんだってことを!!」


 そうシャーロットに言った康介は、退屈そうに二人の言い合いを聞いていたガレットを振り向く。


「悪かったな。待っててくれたのか?」


「ははっ、くそつまんねえ茶番だったぜ。止める価値もなかっただけだ」


「そうか。じゃあ、続きやろうぜ」


 そう言うと康介は構えをつくり、ガレットの出方を見るが、ガレットは攻めてくる様子はなく、康介のことをただ見ていた。


「もう闘いを止めろ、ね。ははっ、その女のいうことは正しいぜ。お前がいくら死ななくても、俺にボコボコにされてるだけじゃ勝てはしねえだろぉーが」


「そんなの、やってみなくちゃわかんねえだろ」


「はっ、……そうかよっ!!」


 すると、ガレットは目にまとまらぬ速度で康介に突っ込んでいく。そして、ふるわれた大きな金棒から出る、その一撃は、康介にたしかに届いて……



 ドンッと大きな音がした。



 一方、その音を聞いたシャーロットは、その光景から目を背け、前を見ることをしようとしない。もう、目の前の少年が傷つく姿を見たくないから。

 だけど……


『今は黙って俺を見てろ!』


その少年の言葉が蘇る。

その言葉には有無を言わせないそんな力があって……


 信じてもいいのだろうか。

 あの少年に任せてもいいのだろうか。

 わからない。なんで、彼があそこまで戦うのか。何もわからない、自分がどうすればいいかも。


 でも、今は……


(……あの人を、信じてみたい)


 そして、シャーロットはただ目の前の光景を見た。


「え!?」


 すると、そこにはガレットと康介の姿があった。それ自体におかしな点などなかった。

ただ、そこには衝撃的な光景が広がっていて……


 そこにはガレットの金棒を片手で受け止めた荒木田康介の姿があったのだった。







 地下の廊下を駆ける少女──否、少女の姿をしたファルが一人。

 ファルは今、康介のいる地下室に向かい、廊下を走っていたのだが、ファルは走る足を止めて目の前を見る。


 そこには、一人の男が立っていて、ファルはその男に手を掲げこう叫んだ。


「ヴェント!!」


 すると、ファルの掌からは風が吹き出し、その突風は目の前の男を吹き飛ばさんとするが……


「……アクアスクード」


 男がそう呟き指を鳴らすと、地面からに水の壁が飛び出し、風から男を守った。

 そして、男が再び指を鳴らすとその水は消え、消えた水の奥にいた男がファルの目に写る。


「おや、こんなところにお嬢さんが何の用ですか?」


そう男は惚けたようにファルに話しかけた。


「そこを通して下さい。あなたは盗賊のお仲間さんですか?」


 ファルは自分の攻撃を平然と防いだ目の前の男を警戒した様子で見た。

 背丈は康介より少し高いぐらいで、珍しく他の盗賊と違う服を着てマントを纏っている。

 その男は自分のマントをを翻し、


「ああ、私の名前はザッハ。ガレット盗賊団、隊長を務めてる者だ」


そう名乗ったザッハに対しファルは笑い、自らも名乗る。


「ワタシの名前はファル。そこを通してくれますか?」


「それはできない相談だ。今このアジトに侵入者がいてね。排除するためにそいつらを探していたのだが……ちょうどそれらしき人を見つけたところなのだからね」


 そうザッハは回りくどく説明する。その言葉を受けファルは戦闘を避けることを諦め、戦闘体制に入った。


「侵入者であるワタシを排除する、ということですね?」


「その通りだ」


「できるものならやってみて下さい」


ファルはザッハにそう答えると、今いない少年のことを思う。


(コウスケさん、少し待ってて下さい。直ぐに行きますから……)




 

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