第15話 リベンジマッチ
「ここは俺に任せろ」
そう康介は後ろのシャーロットに笑いかけた。
その康介の格好は血と泥で汚れた制服。その生地は破れ、ボロボロの状態。
しかし、体には目立った外傷はなく彼の目からは生気までもが感じられる。
そんな様子を見て、ガレットは自分の頭から目の前の少年に関する記憶にサーチをかけるが、
「ははっ、やっぱりお前は死んだはずだ……あの時お前はどんなに頑張ったって死んでるはずだろ」
そんな現実を受け入れられない様子のガレットに康介は大きく笑った。
「死んだだと?何言ってんだよ。現に今ここにいる。説明いるか?それとも今お前が見てる俺は幽霊だと言いたいのかよ」
そして、その言葉を聞いて驚いているのはガレットだけではない。
「あなた……どうして、ここに来たの?」
康介の姿を見たシャーロットはただ単純に疑問をぶつける。
そんなボロボロな格好で何を、どうやってここがわかったのか、何故ここに来たのか、と。そんなふうに疑問は尽きないだろう。
しかし、康介にはもうその問いの答えが決まっている。
「そんなの決まってるだろ……」
前を向いていた康介は再びシャーロットを振り返って、
「お前を助けたいからだ。俺がそうしたいから、お前がそうしてくれたように俺もお前にそうする」
その気持ちをファルは優しさだと言ってくれたから。それは人として1番大切なことだと言ってくれたから。
しかし、そのやりとりを聞いていたガレットは康介を小馬鹿にするように笑った。
「ははっ、助けるだぁ?何言ってんだよ!お前がそいつの足を引っ張ったんだろぉーがよ」
以前の康介ならその言葉を聞いて挫けていたであろう。しかし、今の彼にはそんなもの効きはしない。
「ああ、そうだな。だけど、それがどうした?」
「へぇ?」
ガレットはその予想もしていなかった返しを興味深く思い、目を見開いた。
そして、目の前の少年が言った言葉の意味を何度も頭の中で再生をし……
「成程、覚悟が違うってことか」
「確かに、俺はシャーロットの足を引っ張っちまったかもしれない。迷惑をかけたことだってわかってる。だけど、だからってそれが俺がシャーロットを助けない理由になるか?そんなわけねえだろ!!」
康介は心の底から叫ぶ。
それはガレットに言ったのではない。
その叫びは今までのような嘆きでもなく、過去の自分に対する叱咤だった。
シャーロットを助けたい。今はその気持ちで康介は動いているのだ。
だから──
「今ここでシャーロットも助けて、お前もぶっ飛ばして、俺が恥晒したことも、全部リセットだ!!」
そうして康介は笑いながら気合たっぷりにガレットの目を睨んだ。
「ああ、そうかよ。じゃあ……やってみろ」
そう言うとガレットは康介に飛びかかる。
康介はその攻撃を避け、先程のように石ごと拳を引いた。
「おりゃーー!!」
先程、ガレットを吹っ飛ばした攻撃。
その秘密はファルから渡された石の力にある。
先程、康介はガレットがシャーロットに金棒を振り落とすのを見て、とにかくガレットとシャーロットの間に駆け込んだ。
その時、康介は最悪シャーロットの盾になるつもりで飛び出した。しかし、ガレットの攻撃を前に、思わず右手を突き出したのだ。例の石が握られていたその右手で。
「くぅ……!?」
ガレットは、康介の右手に触れる前に、石から出る衝撃波のようなものに身体を吹っ飛ばされる。
(おー!すげぇぞ、この石)
「これがファルの言っていた森の力か」
「かっ!!なんだぁ、その石は?魔具か?」
「魔具だ?知らねえよ。どうだろうと、こいつは俺自身の力だ。わけわかんねえこと抜かすなや!!」
そう言った康介の拳がガレットの顔に届くと、また石からは波動が発生し、ガレットを地面に打ちつけた。
その康介からの猛攻にガレットは息を切らしながら、前髪をかきあげ、いじらしく笑い、
「はぁ……こんなもんかぁ?ああ?」
「流石に立ち上がるか。まだまだいくぜ!」
そう叫んで康介は、ガレットに例の攻撃を喰らわせようと、またもや突っ込んでいく。
すると、ガレットは今度こそその攻撃をかわして、金棒を振り上げる。
がしかし、康介はガレットの金棒の攻撃を予想していたかのように避け、
「……ぶっ飛べ」
そう言って、康介は拳をガレットの腹目掛けてねじ込んだ。
道を走って敵から逃げていたファルは前方からも敵が来たことを見て急に立ち止まり、両手を広げ、後ろと前の敵両方に向けてこう言い放つ。
「ヴェント」
すると、ファルの両腕からは強烈な風が吹き出し前と後ろの敵を吹き飛ばした。
その隙にファルは鳥の姿になり、高速で盗賊たちの空中を横切ぎる。
そして、それを追いかけようとする盗賊たちにファルはまたもや魔術を使い、
「ボスカッリア!!」
ファルと盗賊たちの間には草の茂みのようなバリアが現れ、盗賊たちの侵攻を妨げる。
そして、ファルは鳥から少女の姿に戻り再び歩き始めた。
(コウスケさん上手くやってるでしょうか?)
ファルは今この場にいない少年のことを思う。
完全に力不足な康介だが、最後に石を渡したので、その石をつかえばある程度ガレットとも戦えるだろう。
(そろそろ敵さんの数も減ったし、ワタシもコウスケさんの助太刀にいきますか)
そう考え、ファルは康介のいる地下室に足を運ぼうと、走り始めるが、
「あれ?コウスケさんにあの石の力には時間制限があるのって言いましたっけ?」
ファルは康介に言うのを忘れた重要な事実を思い出すが、
「まあ、大丈夫ですよね。切り札に使えって言いましたし……」
そう自分に言い訳をする。
しかし、ファルは心なしか先程よりも地下室に進む足を速めたのであった。
康介は、ガレットの身体に石を握った拳をねじ込む。
しかし、そのねじ込んだ拳からは先程までのような決定的な威力はなく……
(なんだ、これ?衝撃波が……)
「……おい?どうした?」
ガレットはそのまま吹き飛ばされることはなく、薄く笑っていた。そして、手に持った金棒を下から振り上げ、
「くっ!?」
その強烈な一撃を前に、康介はその場から吹き飛ばされる。
そして、その勢いで、使い物にならなくなった石を思わず手から離してしまった。
「惜しかったな。その魔具は制限付きだったってわけだ」
そうガレットは言い、金棒で康介を大きく打ちつけ、康介は頭から地面に叩きつけられてしまう。
「結局、一矢報いることも出来ずか……」
ガレットはその倒れ込んだ康介を見下ろし、首の骨を鳴らす。
その音はまるで闘いの終わりを告げているようであった。
そして、ガレットに嘲笑うような目を向けられている康介は、頭から血を流し床に横たわっている。
そこから流れる血は石版の床を伝っていきガレットの足元まで到達した。
「ふっ、くだらねぇな」
すると、ガレットはその血から避けるように後ろに下がり、シャロットのほうへ振り返る。
「おい、どうだよ?この男の死に様は?満足かぁ?」
「……」
ガレットはシャーロットに顔を向けいじらしく笑う。
人を一人殺めた後とは思えない程の満面の笑みを浮かべていた。
シャーロットは、そのガレットの狂気じみた様子に身震いすら覚えるが……
「誰の死に様だって?」
その声と同時に、ガレットの背後に何かが飛び掛かった。その何かは両手で持った木の実を大きく振りかぶり、ガレットの頭を打ちつけようと……
「!?」
しかし、その攻撃は、驚きながらもそれに反応したガレットの左腕によって防がれ失敗に終わる。
と思われたその時、木の実と左手が触れた瞬間、木の実は、その衝撃に耐えきれずに殻を破く。そして、その木の実の中からは液体がはじけ飛び……
「ぐあぁ!!」
そう叫んだのガレット。見ると彼の左手は木の実から出た液体に触れ、その液体に触れた部分からは煙が起こっていた。その液体はガレットの左手全体を侵食し爛れさせていく。
その様子を見て、その攻撃をした張本人である誰か──否、荒木田康介は頭の血を腕でふきながら大きく笑った。
「どうだ?2回殺したはずの男から逆襲された気分は?」
「てめぇ!!なんで生きて──」
「おい、あまり動かないほうがいいぞ。ヤスィの実の中の液は猛毒らしい……毒が早く回るぜ?」
そう言った康介は目の前で大きく跳びあがり、突っ込んできたガレットの金棒をよけると同時に空中から強烈な横蹴りをくらわす。
その蹴りはガレットの顔面を横からゆがめ、ガレットをそのまま大きく横によろけさせた。
「そろそろ気づいたろ!!」
康介は攻撃を止めることなく、よろけたガレット向かって拳を振り上げる。
「がぁ!?」
ガレットは何か言おうとしたが、その拳は顎を打ち抜く。 ガレットはそのせいで舌を噛んだのか口から血を流した。
「お前……一体何者だ……」
そして、そう警戒するような目でガレットは康介を睨んだ。
「言ったろ……俺は黄泉の国から舞い降りた異世界人。そうやちょっとのことじゃ死なねえよ」
「異世界……人……」
ガレットはその瞬間、警戒していた目を一気に輝かせ、再び狂気に満ちた笑いをした。
口から出る血を気にする様子もなくただ笑うそのガレットの姿に多くの人はゾッとすることだろう。
しかし、
「笑ってられるのも今のうちだ。地獄見せてやんよ」
康介はそれを上回る笑みでガレットを笑い返す。
「あぁ、かかってこいよ。仕切り直しだぁ」
そして、両者がお互いを化け物だと認識したところで初めて闘いが始まる。
「俺のリベンジマッチ、覚悟して受けろ棒振り野郎が!!」
場所:地下室。
制限時間:どちらかが力尽きるまで。
ルール:………なんでもあり。
「題名は荒木田康介のリベンジマッチ!!派手な一戦の始まりだ!!」
こうして、誰も知らない名も無き戦士の初陣は始まる。
ここまで読んで頂きありがとうございます!!
遂に一章の終盤です。遂にと言っても意外と早いですが……
面白いとここまで読んでくれた方!
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改善点等も受け入れますので、いつでもどうぞ!
それでは良い1日を(深夜に読んでる方は)




