第10話 森の精霊
前回までのあらすじ
康介は生きていた。ガレットにボコボコにされてもなお。そして、自分のしたことを思い出し、絶望していたその時、後ろには見知らぬ少女が立っていて、いてその少女は、康介の悩みを解決できるかもしれない、とそう言ったのだった。
「……解決?今なんて……」
「ですから、ワタシならあなたのお困りごとを解決出来るかもって言ったんです!」
康介は呆然とする。
一体、この少女は何を見てそんなことを言えたのか?
康介の今の状況を見て、何を!
そんな康介の憤りを他所に、少女はまた口を開いた。
「ワタシ、あなたの事ずっと見てたんです」
「あ?意味がわからねぇな」
「ですから、ワタシはー!!あなたをー!!ずっとーー!!」
「いやそこはもう、分かった。だから、見てたっていうのは具体的にどういう事なのか聞いてるんだが……」
少女は何が面白いのか少し笑い、
「えっと、それは言葉通りです」
「俺はお前がいつから俺のことを見てたんだ?って言ってんだよ」
そう強い口調で言われても、少女は少しも怯む事なく、ただ顎に手をやり考え込んだ。
「そうですねー、いつから……ですか。あ、思い出しました!!空を飛んでたら、大声が聞こえてきたので、そっからあなたについていきました。で、でも別にストーカーが趣味とかじゃないですからね?!」
「あの時か……待て…今空飛んでる時って言ってたが聞き間違いか?」
「聞き間違いではないです。ワタシは確かに空を飛んだと言いました」
「???」
ここが異世界で、この世界には特殊能力があることもわかって、別に空を飛べるやつがいるということに驚いているわけではない。
ただ、
「お前…羽も何にもないじゃないか…空を飛んだって、どうやって?もしかして、浮けるとか……?」
「あー、そのことですか。どうしようかなぁ〜。話そっかな?話さなそっかな?」
少女の使った文法がおかしいことを今の康介は軽くツッコミを入れれる心情じゃない。
「そうか…それじゃあ話は終わりだ。じゃあな……この森は物騒だ。盗賊とかには特に気をつけろよ…」
その少女が質問に答えないなら、価値はないとその場を離れようとする。
なぜこんなとこにいるかも知らないが、目の前にいるのは小さな少女。そのため、一応忠告はしておく。
「ぺーぺーのコウスケさんに言われることじゃないです。ワタシがいつからこの森にいると思ってるんですか?」
「そうか、ここに住んでんなら、お前は早く親の元に……」
「ワタシ、親いません」
「そうか……じゃあな」
もう、こうして誰かと話したくない。
話せば話すほど自分の穴が浮き彫りになっていく。
「まあ、いるっちゃいるんですかねー。ワタシも元々自然の魔力の集合体。いわば、この森自体が親ということになるんでしょうか」
「……お前、何言ってるんだ?」
「あ、失礼しました。ワタシは森の精霊、ファルと申します。よろしくお願いします」
そう彼女は一人でに自己紹介をしたのだった。
「やっと、話を聞いてくれる気になりましたか……」
「お前が森の精霊様ってことで少し聞きたいことができた」
森の精霊。
そのワードを聞き興味を持った康介は、ファルという少女が最初、困ったことを解決できると言っていたのを思い出し、話を聞くことにした。
「ま、コウスケさんならそう言ってくれると信じてましたよ。それとワタシのことはファルと呼んでください」
「俺の名前は荒木田康介……て、待て、お前なんで俺の名前知ってんだ?」
「え、えっと……あ、あれですよ!先ほどのコウスケさん達の会話が聞こえていて……」
「お前……ファルはどうやって俺のことをつけてたんだ?精霊なら空を飛べるのはわかったが、俺らにばれずに後をつけるなんて、そのなりじゃできそうにないけどな」
「も、もしかして、ワタシのこと疑ってます?」
「疑ってない。お前こそなんか隠してることがあるのか?」
「い、いいえ?そ、それより、どうやって後をつけたかでしたっけ?ご覧ください」
そういうと、ファルが康介から少し離れたかと思うと、康介の目の前に、突如、大きな鳥が現れた。デカさでいうと、康介ぐらいだ。
康介はそのいきなりの出来事に驚き、尻餅をついた。
「あはは、驚きました?」
「その声…ファルなのか?」
「はい」
そういうとファルは、今度は小さい小鳥になってみせた。
「ワタシ、ベースは鳥の精霊なんです。人型、大型鳥、超大型鳥、小鳥になれます」
なるほど、確かにそれなら康介達をつけていても気付かれないだろう。
「聞きたいことはそれだけですか?」
「で、ファルは俺のことをずっと見てたと言ったな?」
康介のことをずっと見てたなら、シャーロットが康介を助けたことも盗賊団に襲われ、康介が失態を犯したことも……そして、康介の傷が治っていることも……
「はい……見てました。コウスケさんがシャーロットさんと出会って、その後、シャーロットさんが盗賊に連れ去られるのも見ました。そしてそのあと、コウスケさんがボコボコにされ……今こうして傷が治ってることも…」
やはり、そのことまで見ているか……
まあ、別にだからどうこうということでもないが。
「そうか……ファル、お前。俺の協力をしてくれると言ったよな?何ができる?」
正直言うと、この見知らぬ地で一人というのは少し不安だ。
図々しいかもしれないが、ファルが異世界の案内人の役割を担ってもらうことも考えている。
「はい、ワタシにできることは……コウスケさんが知りたがっているであろう、盗賊のアジトを提供できるということです!!」
康介はその答えに呆然とする。
しばらく沈黙が続き、木々が風でざわざわと揺れる音が響いた。
康介にはその音が、神からの笑い声に聞こえた。
「おい……俺がいつそんなことしてほしいって言った?」
康介は質問する。
その言葉にかかっている感情は怒りでは決してない。ただただ、ファルの言っていることが理解できない。何故、そんなことを言ったのか。
「え?コウスケさんが今からすることって盗賊のアジトに行って、シャーロットさんを助け出すことじゃないんですか?」
すると、ファルは驚いた顔をし、当たり前のようにそう言い放った。
「俺がいつそんなこと言ったんだよ!!」
「い、いえ。お二人を尾行していて……あの戦いを見て……普通ならそう考えているのかなと……さっき1人で怒ってたのだって、シャーロットさんが連れてかれて、けど相手の居場所がわからなかったからじゃないんですか?」
康介の怒鳴り声により、ファルには少しだが先程までのひょうきんさが消える。
「違う。俺はただもうこんな森出て行こうと……お前に道案内を頼みたかったんだが……話は終わりだ……」
期待した自分が馬鹿だった。
見知らず少女に道案内を頼むなんて、まるでさっきと同じだ。康介もよっぽど参っているなと自嘲し、少し笑う。
そして、その場を去ろうとすると、
「そ、そうでしたか……けど、そんなことして……あの女の人、シャーロットさんのことは見捨てるということですか?」
「っ……」
わかってる。わかっているんだそんなことぐらい。
けど、仕方ないじゃないか。
「うっせえな……」
康介からは溜め込んでいた想いが込み上げ──
「俺が行ったって足手まといになるだけなんだ!!さっきだってそうだ!!お前も見てたんだろ!!シャーロットは俺のことを庇って倒れて……けど、そんなもんならどこへでも助けに行ったさ。なのに、俺はシャーロットの戦いを邪魔しちまってたんだよ。お前なんかいなきゃよかったって言われたんだ。俺が助けに行ったところで、何がどう変わるっていうんだよ!!」
「……そ、そんなことをシャーロットさんが……?」
「違う、盗賊だ。けど、あいつのいう通りだった。俺はいつだって周りに迷惑かけて、余計なことして恩を仇で返すことしかできないんだ……」
そうだ、不良の時だって康介はそうだった。その前からだって。
それが不良を止めればとか、異世界に来たからとか、そんなんで人間の本質が変わるわけがないのに。
「コウスケさん、さっきから何言ってるんですか?」
「……ぁ?」
「まだ、何も終わってなんかないじゃないですか。これから、まだ変われますよ!!」
普通ならそう思うだろう。だが、もう……
「お前には分からないよな。当たり前だよな。こんな役立たずの気持ちなんか普通わかりたくもねぇよな」
本当、自分でも本当どうしようもない人間だな、と康介は又もや自嘲する。
それを聞いたファルも心底呆れたことだろう。
だが、別にそれでいい。
康介はもう誰にも構ってほしくないのだから……
「じゃあ、話してみてくださいよ」
そう、言われた。
康介は唖然として、目の前の少女を見る。
「は?」
「この通り、ワタシはコウスケさんのことなんか何にも知りません。だから……もっと知りたいです……」
「俺のことを……知りたい?会ったばかりの俺のことを……?どうかしてるよ……お前……」
「……そう思われても……いえ、そうかもしれません。けど、知りたいんです」
少女は真剣な目で頷き、一歩康介に近づいた。
「はい、だから、まずワタシに話してみてくれませんか?」
少女は康介のことを見限ったりなんかはしない。少女はただ康介のことを知りたいとそう言って、
「知ってます?人生って案外話せば楽になることばかりなんですよ?」
少女は、否ファルという精霊は康介にそう優しく語りかけたのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この後、どうなるんだ?
とか、思ったら感想とか待ってます!、
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