水ノ音
中学の頃、私は肺炎にかかり、街に外れにある小さな病院に入院をしていました。
その病院にはちょっと怖い噂が流れていて、私は毎日夜になると怖くて眠れませんでした。
その噂というのは、午前0時になると聞こえてくる足音というものです。
この病院で亡くなった人の霊が廊下を歩いている、なんて今思うとありきたりな怖い噂です。
それでも当時はとても怖かったのを、今でもはっきり覚えています。
これはそんな当時のお話です。
よく晴れた日のことです。
「お母さん、本当に帰っちゃうの…?」
「ごめんね、今日はこれから仕事なの。朝にはまた来るから、お利口にしておくのよ」
母は女手一つで私を育ててくれました。生活を安定させるために掛け持ちで夜の仕事もしていたため、私の付き添いも朝と夕方の少しだけでした。
そんなことで、夜を一人で過ごすことも少なくなかったのです。
その日の夜、私は案の定眠れず時刻は間も無く0時になろうとしていました。
私は少しでも恐怖をかき消そうと、布団の中に潜っていました。
しばらくすると、廊下から何か音が聞こえてきたのです。
ピタッ……ピタッ……ピタッ……
「ヒィ…!」
その音は裸足で歩いているような音でした。
その音はしばらくすると止まりました。
私は勇気を出して布団から飛び出し、廊下に出てみました。
そこには誰もいませんでした。しかし、一歩踏み出したところで全ての謎が解けました。
ピチャ
「うわっ、水…?雨漏りかな?」
そう、例の噂というのは雨漏りの音だったのです。
私はその日から恐怖を感じなくなり、しばらくすると病状もよくなって退院することができました。
今でも雨漏りの音を聞くと当時のことを思い出します。
それにしても、今日も雨漏りの音がうるさいなぁ。日に日に音が大きくなってるし、一回管理人さんに見てもらおうかな?
ここまで読んでいただきありがとうございました。
きっとほとんどの方が「ホラーじゃなくない?」と思われたことでしょう。
ほら、聞こえませんか?
いつも聞こえている”あの音”
日に日に音が大きくなっていませんか?
もう、すぐそこまで来ているかもしれませんね。
あ、夜道には気をつけてくださいね。