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5 私はリリー

何があっても平気な方向けです。

雑食タイプでなく、少しでも苦手なジャンルがある場合、こちらを読むのはお勧めできません。ご注意下さい。


本当に雑で色々変わってますのでお気をつけ下さい。

 

 マリア様……ううん、心の中でくらい様を省いてもいいよね。

 マリアと入れ替わり、そして元に戻ってから三ヶ月が経った。


 今日は学園を卒業する日。私が待ち望んだ日がようやくやって来たの。


 騎士見習いと学園生の間は呼ばれていたトニーは、卒業と同時に正式な騎士として王城に就職。


 フィズは卒業式の翌日、つまり明日から王城で働くお父さんに仕事を教えて貰いながら、次代の宰相として現場で勉強。


 カインは卒業後ハイルアー家を継ぐため、実習も兼ねてハイルアー公爵の仕事を手伝い。


 エリックは国王と共に政治に関わっていく。


 この学園を卒業した後の予定らしい。

 皆の話を聞く限り、忙しくなりそうだね。





 マリアとエリックの婚約破棄は、マリアの強い希望もあって、昨日ようやく承認されたみたい。


 エリックとマリアの二人も喜んでいたし、私も嬉しかったな。


 マリアとは、入れ替わってからお互い意識するようになって、今ではすっかり運命共同体って感じ。


 入れ替わる前だと考えられないかもしれないけれど、マリアとは一緒にお茶したり、お買い物に行ったり、時には愚痴を言い合ったりするの。

 


 話してみると、マリアはとても良い子だって分かるんだ。


 でも、学園生として、皆とお話ししたりするのは今日で最後。

 卒業しちゃうからね。


 入れ替わってからたった三ヶ月の間だったけど、マリアとたくさんの思い出が出来たんだよ。


 卒業式前に集まって、最後に皆でお茶をしようって言われたの。

 勿論、行くに決まってる。むしろ私達から誘おうかって言ってたくらい。


 卒業式の日でも開いている食堂に、皆で集合。

 天気が良いからテラス席で、卒業式が始まるまでの時間、お話しをするんだ。




 マリアと一緒に、エリック達には内緒のサプライズも用意してるんだよ。




 ふふっ、楽しみだな。























「エリック様、トニー様、フィズ様、カイン様。お待たせしてすみません。皆さんへのサプライズに準備がかかっちゃって」


(わたくし)とリリーさんで考えましたの」


「流石リリー。俺達にサプライズを用意してくれるだなんて、嬉しいよ」


「ええ。リリー嬢が用意してくれたものですから、きっと素晴らしいものなのでしょう」


「リリー嬢からのサプライズか。どんなものかわくわくするな」


「リリー嬢のサプライズら楽しみにしているよ」


 私が準備したと言えば、四人の表情がとろけそうなほど緩んだ。マリアの言葉は聞こえなかったかのように振る舞う四人に、イラッと、したことは内緒。


 当のマリアは、


「いつものことよ。こんなことを気にしてなどいられないわ」


 と言って特に気にしてないみたい。

 流石、マリアだね。



「リリーさん、そろそろよろしいのではなくて?」


「そうですね、マリア様! 皆さんをお呼びしましょうか! すみません。こちらにお願い致します!」


 エリック様達が、はてなマークを頭に乗っけたかのような表情で私達を見て……そのあと、後ろから現れた人達を認識した途端固まっちゃった。


 私とマリアの後ろから現れたのは後ろから順番に、エリックのお父様である現国王様、フィズのお父様である現宰相様、トニーのお父様である現王国騎士団団長、そして、マリアとカインのお父様であるハイルアー公爵。


 ふふふ。まだ本番とは言えないのに、皆がとっても驚いてる。


 マリアと二人で目を合わせ、カインの前まで歩く。ハイルアー公爵も一緒だよ。


「エリック王太子殿下とマリアとの婚約には、大きな政治的意味があった。そのことを、考慮しないにしても、殿下の身勝手さは目に余るものがある。仕えるべき王が間違いを犯していたならば、それを諫め、正しい方向へと導くのが貴族の努めでもあるというのに……。確かにマリアが少々暴走するという問題もあったが、それを事前に止めることもせず、むしろ学園内とはいえ公の場で、事実確認を怠った雑な証拠を用いた婚約破棄に手を貸すとは……。

 そしてその行為が、我がハイルアー家の名に泥を塗る行為だとすら気付いていない。むしろ正義だと思っている節がある。

 やれやれ。私はカインを次代のハイルアー公爵として、認めるわけにはいかない……と、言いたいところなんだがな」


「なっ……ち、父上!」


「あら、全てお父様に言われてしまったわ。どうしましょう。……そうね、私が言えたことでもありませんが、我が弟ながら、誠に残念です。とだけ言っておこうかしら」


「姉上っ!」


 マリアに掴みかかろうとしたカインの目前に立つ。


「リリー……」


 そんな、縋るような目で見つめられてもね。


「カイン様、私……ずっと思ってたんです。貴方は何故


 優秀なハイルアー公爵に似ても似つかない程残念な頭をお持ちなんですか? 私、実は変だと思ってたんです。ハイルアー公爵家の人間である筈のカイン様が、エリック様とマリア様の婚約破棄を積極的に進めようとしていたこと」


 愕然とした表情のカインは捨て置いて、マリアと一緒に、今度はトニーの前まで歩いて行く。


 ハイルアー公爵と入れ替わりで、王国騎士団団長も横に並んだ。


「トニー、お前、ハイルアー公爵家のご令嬢の腕を捻り上げた挙げ句、地面に押さえつけたそうだな? 確かに、ノルディック家のご令嬢に手を上げたことを止めるためなら問題はない。しかし、エリック王太子殿下が公の場で婚約破棄を行う邪魔をさせないために拘束していたならば話は別だ。騎士としてその行動はいただけない。それに、ご令嬢に振りほどかれる程度の鍛え方……いや、腑抜けに騎士は務まらん。お前のような息子を持ったこと、恥ずかしく思うぞ」


「そんなっ」


「何て言うか、頭も良くないですし、良いところあんまりないですよね」


 トニーは絶句して固まっちゃったかな。


 さて次、いくよ。


 フィズの目の前には既に宰相様が立っていた。フィズは茫然自失といった状態で、何を言っても聞こえなさそう。

 宰相様、一体何を言ったのかな?


「あら、宰相を目指しているにしては、思慮が浅く先を見通す力も持ち得なかったフィズ様は既に再起不能ですのね。リリーさん、フィズ様は放っておいて、エリック王太子殿下の元に参りましょうか」


「はい!」


 マリアの提案に乗る形で、エリックの方に向かう。


 フィズの時と同じで、エリックの前には国王様がいた。目が虚ろで、膝を地面につけ脱力しているエリックの首根っこを掴み、国王様は無理やり立たせる。さも今私達に気が付いたといわんばかりに、国王様は、思うことを存分に言うが良いぞ、と、微笑まれた。

 あらあら、目が笑ってないですよ。


「では、エリック王太子殿下、僭越ながら(わたくし)から失礼致しますわ。言いたいことが多すぎて、言葉がまとまらないのですけれど」


 完璧な令嬢スマイルでマリアは口を開く。


「エリック王太子殿下は(わたくし)と、昨日ようやく婚約破棄をすることが出来ましたわね。何故か殿下は最後まで、私が婚約破棄を望まず、ご自身に恋慕しているかのように振る舞っておられましたが……はっきり言って、迷惑ですし不愉快です。私はもう、貴方に対して微塵も、好意を持っておりませんわ。ご安心下さい。そして、この先永遠に必要があるとき以外は近付かず、話さず、視界に入れずに済むよう、私も努力致します。エリック王太子殿下もどうか、その程度のお力添えはお願い致しますね。テスト前に勉強を教えるよう、何故か嫌々しぶしぶ、といった体で私の元に来ることがないよう、心から願っておりますわ」


 他にも、マリアはエリックのあんなことやこんなことに対して、まっとうな意見という矛を武器に、ぐっさぐっさと刺しては斬っていく。





 それら全てが、私の記憶通り。


 私が生前プレイしていたゲーム、〈クズ男だらけの学園生活~真実の愛を求めて~〉略してクズ学。


 この内容と、全く同じなのだ。



 私はこの学園に入学した日、突然前世を思い出した。そしてここが、クズ学の世界で、私がヒロインだと気が付いた瞬間泣きたくなった。


 クズ学は、名前で分かると思うが、攻略対象がクズ野郎しかいない。

 ヒロインのリリーの選択肢により、攻略対象それぞれのクズエンドか、心を入れ替えまともになった攻略対象と恋をするハッピーエンドのどちらかに分岐する。


 私が選んだルートとエンドは、上記のどれとも違う。

 攻略対象全員の親密度を、クズ野郎のまま一定期間内にマックスに近いところまで上げなければならない、かなり難しいハーレムの後に待ち受ける、隠しルートを選んだのだ。



「さて、リリーさんも、エリック王太子殿下に言いたいことがあったのではなかったかしら」


 エリック王太子殿下の心が見えたら、きっと穴だらけになっているだろう。そんな顔をしている。

 更に、私が特大の槍をぶっさすのだと思うと、わくわくが止まらない。


「はい! エリック様……私ずっとこの三ヶ月間言わなきゃって思ってたことがあるんです」


 エリックの表情は硬い。あんなに私を好きだと伝えていた瞳も、今は怯えるように揺れていた。


「私、エリック様と婚約するつもりはありません。ずっと返事をしなきゃって思って、今まで経ってしまいすみません」


「なんっ!? だって三ヶ月前のあの時、婚約は了承してくれた筈っ」


 いや、してないから。

 三ヶ月前の、エリックの婚約の申し出は、口元に手を当ててふわっと笑えばそれでお仕舞い。

 勝手にエリックが勘違いして舞い上がり、リリーの幸せを一番に願っていると、勝手に美談のように納得している三人がエリックと私を祝福するの。


 書類にサインをしたわけでもないし、それどころかはっきりとした言質も取っていないのに、本当に駄目な人達だよね。



「私、はい。ともいいえ、とも言ってませんよ?」


 あえて、きょとんとした顔を作る。エリックは絶望感に打ちひしがれているようだ。


 あー。ようやく言えてすっきりした。


 マリアが隣に立ち、私の腰を抱き寄せる。



「それで、ですね。実は私達……付き合うことになりました」


 熱くなる頬を隠しもせず、はにかんでみせる。

 エリック達は何が起きたのか、理解が追いついていないようだ。


 私とマリアの入れ替わりイベントは、ハーレムルートでなければ見ることは出来ない。

 そして、その後もクズ野郎をクズ野郎のまま放っておきながら、好感度をマックスまで上げると出現する、隠しルート。


 そう、マリアとリリーの百合エンド。


 入れ替わりの後、エリック達のクズさも手伝って少しずつ仲良くなる二人。救いようのないクズさを持つ男達の相手をする内、段々マリアとリリーの間で愛が育まれていくのだ。


 特に普通にプレイしていると出て来ない設定だが、この国は同性婚が認められている。

 マリアと、リリーは晴れてこの場で婚約し、一ヶ月後に挙式を上げることが出来るのだ。


 このゲームは、

 攻略対象にざまぁが出来る。

 攻略対象を真人間に育てることが出来る。

 攻略対象を見捨てることが出来る。


 そして、マリアと百合エンドを迎えることが出来る。


 あまり前世での評判は良くなかったけれど、転生してきて良かったなって、隣で笑うマリアを見ると思うことが出来るよ。


ありがとうございました。




感想などにつきましては、目は通しますがお返事できるかはお約束することが出来ませんのでご注意下さい。

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