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第四話 hurricane

ロスヴァイア史上最年少の狙撃手、ミラ。



彼女の実力は正規軍を遥かに凌ぐものだった。



ロスヴァイアが誇る名狙撃手、ウェイン。



ウェインはミラに目をつけ、ミラの軍人としての人生が幕を上げる。

月と太陽、その2つの星はかつて地球を照らした、地球から光が無くならないように。

 


昼は太陽が生命の源となり、夜は月が妖しくも美しい。

 

それらは地球が地球であるために必要なピースだった。

 

 

 

3機の国家宇宙艦、ミレリア、テンマス、ロスヴァイア。

 


宇宙へ脱出した時、この3機は共通任務があった。

 

 

宇宙の資源を採取し、地球へ帰還した際の発展を急ぐ、というもの。

 

 

この宇宙資源の採取において、ミレリアとロスヴァイアは意見の対立があった。

 

 

地球から脱出した時、196ヶ国あった国をほぼそのまま再現したいミレリアと、

 

ミレリア、テンマス、ロスヴァイアの3ヶ国にしようとするロスヴァイア。

 

 

ミレリアは周辺惑星の資源の数が少なかった。

 

ロスヴァイアが多量の資源を獲得し、その資源をそのままロスヴァイアの所有資源として地球に帰還すると、地球を実質支配するのはロスヴァイアになるとミレリアは恐れた。

 


そして、どちらの領でもなかった月面を両軍が調査した際に衝突、以来この2機は敵対関係になった。

 


ミレリアとロスヴァイアの間にはテンマスという国家宇宙艦が介入した。

 

 

ミレリアとロスヴァイアの中立であるテンマスの介入以来、目立った衝突は起きていない。

 

 

 

 




ミレリアとロスヴァイアの敵対関係は公になっている事ではなかった。

 


 

 

 

 

   ***

   

   

   

ロスヴァイアの子供達はいつもと変わらない日常を送っていた。

 

朝から夕方まで軍による授業、模擬戦闘訓練等、大量の資源を守り抜くまいと軍を強化していた。


いつか起きるミレリアとの戦争に向けて。

 

 

 

周りの子供達がいつもと同じように過ごす中、ミラは少し違った。

 

 

ミラはあの戦闘訓練から、今まで興味のなかった軍について調査していた。

 


今までの訓練では正規兵の実力を遥かに凌駕していたと思っていたミラは、ウェインという男によってその自信を打ち砕かれた。

 

 

が、頑丈な心臓を持ったミラは折れることなく、その狙撃手を調査した。

 

 

データベースルームにて軍人の名簿を検索、狙撃を専門としている人間は多々いるが、特に目立った人間はいない。

 

最も戦闘に参加した数の多い人間でさえ、ミラの目には留まらなかった。

 

 


データベースルームのタブレットに齧り付いたままのミラの背後から突然男がミラを抱きしめた。

 


「何をお探しかな?」

 


その瞬間ミラは自分の首に巻きついた腕を掴みそのまま力いっぱい背負い投げだ。

 

そのまま腕を折る勢いで肘をとると、

 

 

「ちょっと待て、悪かったすまない。」

 

 

男は笑いながら謝っていた。

 

 

「誰だ。」

 

 

ミラは少し距離を置いてその男を睨んだ。

 

黒髪の少しパーマのかかった長髪の髭の男。

 

どこかで見覚えのある男だった。

 

 

「俺はウェイン。ウェイン・カヴェンだ。」

 

 

一応大佐なんだぜ俺、と言いながらウェインは立ち上がって笑った。

 

 

「君が探している腕利きの狙撃手は俺のことだ。」

 

 

ミラは何故見覚えがあったかが理解できた。

 

 

この人を見下しているようにも見える優しい笑顔、余裕の表情。

 

あの時の狙撃手と同じだった。

 

ミラは苛立った。

 

 

「で、その大佐が私に何か御用でしょうか。」

 

 

「まあそうカッカするな。若いんだから。」

 


ウェインは胸のポケットから1枚のカードを差し出した。

 

それはロスヴァイア軍のカードキーだった。

 

 

「ロスヴァイア軍の月面調査任務に君の入隊が許可された。」

 


ミラはカードキーを受け取った。

 

そこにはミラ・エルビサと名が書いてあり、ミラの顔写真も貼ってあった。



「君の上官だぞ、俺は。」

 

 

ウェインは笑って続けた。

 

 

 

「よろしく、ミラ・エルビサ二等兵。」



 

 

 

       ***



 

 

ロスヴァイアの司令室では月面調査計画についての作戦会議が行われていた。

 

ウェインはその作戦で指揮を執ることとなっていた。

 

 

他の兵士達が真剣な眼差しで一番前に立つウェインを見ているのに対して、ウェインは椅子に座ってつまらなさそうな表情をしていた。

 

 

「いや〜こんな大袈裟にする必要ないと思うけどね〜」

 

 

「大佐、ロスヴァイア初めての大規模作戦なんですから、ここはしっかりと。」

 

 

ウェインの隣にはロイ・アルバート大尉が補佐でついていた。

 

 

「じゃあ真面目なロイ大尉、細かい事は任せましたよ。」

 

 

はぁ、と溜息をついてロイは話しだした。

 

 

「諸君、月面調査の任務は我々が任されている。指揮官となるこちらがウェイン大佐だ。」



兵士達は大きな拍手をした。

 

ウェインはうるせぇと呟いた。


 

「私はロイ・アルバート、大尉だ。今作戦では指揮官補佐として任務に就く。」

 


兵士達はまた、拍手をした。

 

ウェインと違って、ロイは責任感の強い男だった。


ロイは赤髪で、爽やかな若い男だ。

 

更にウェインが認める数少ない優秀な軍人だった。

 

 

「月面調査計画の奥には月奪取計画も企てている、今回の作戦は非常に重要だ。」

 

 

「あ、そうだ。」

 

 

ロイが話している途中でウェインが突如声をあげた。

 

 

「ミラ・エルビサ二等兵、前に来い。」

 

 

司令室の兵士達は騒ついた。

 

ロスヴァイアの12歳の子供でありながら、兵士の中でも上位クラスの実力を持った狙撃手は有名だった。

 

 

兵士の列の最後尾にいたミラが前に出てきた。

 


「みんな知っているだろうが、こいつはミラ・エルビサ二等兵だ。今回の作戦から正式にロスヴァイア軍に入隊した。まあ、仲良くしてやってくれ。」

 

 

ロイが焦った表情でウェインに尋ねた。

 

 

「大佐、聞いてないですよ。しかもこの子12歳なんでしょう?流石にまずいですよ。」



うるせぇなあとウェインはロイに話した。

 

 

「こいつ、舐めてたらお前でも頭抜かれるぞ、俺の独断で軍に入れたんだ。まあ頼むわ。」

 

 

ロイは溜息をついた。

  


「で、この子はどの隊に。」

 


ウェインは当たり前だろ、と言って、


 

「俺の隊だよ、最悪ドンパチやってもらう。」

 

 

ロイはダメだこりゃ、と頭を抱えた。

 

 

「ミラ・エルビサ二等兵だね、大佐はああ言ってるけど後ろの方で無理しないでいいからね。」

 


ミラは頷いたが、

 

 

「私、大佐のことは全く好きではありませんが、最悪のことがあれば引き金は引けるようにしておきます。」

 

 

「いや、大丈夫だよ、僕らがいるし。ドンパチしなくても。」

 

 

「もしも、です。もしものことがあればドンパチします。」

 

 

「君はまだ子供だから、作戦に参加するだけでも意義があるから、無理はしないで。」

 

 

ロイとミラが話している間で、ミラにさらっと全く好きではないと言われたウェインがとても悲しい顔をしていた。

 

 

「ま、まああれだ! 若い人間が軍に入ったんだ、皆しっかりやってくれ。明日にまた命令が出る。その時まで待機だ、解散!」

 

 

司令室は初の大規模な作戦に緊張もあったが、それよりもミラの入隊が許可されたことに驚きを隠せない兵士でいっぱいだった。

 


    

    


 


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