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メタモルフォーゼ  作者: 大橋むつお
9/19

9 受売神社の巫女さん

『9 受売神社の巫女さん』          



 あたしを、こんなにしたのは優香かと思った……。


 だって、優香が自転車事故で死んだのと、あたしが男子から女子に替わったのはほぼ同じ時間。

『ダウンロード』は優香が演りたがっていた芝居で、優香は、よくYou tubeに出てる他の学校が演ったのを観ていた。

 しかし、それは一人芝居で、あれを演ろうとすれば当時発言権を持っていたヨッコ達をスタッフに回さなければならず、ヨッコ達は、そんなことを飲むようなヤツラじゃない。自分は目立ちたいが、人の裏方に回るのなんかごめんというタイプだ。


 あたしは、訳が分からないまま部活を終えて、気がついたら受売うずめ神社の前に来ていた。鳥居を見たら、なんだか神さまと目が合ったような気になり、拝殿に向かった。

 ポケットに手を入れると、こないだお守りを買ったときのお釣りの五十円玉が手に触れた。

「あたしのナゾが分かりますように」

 が、手を合わせると替わってしまった。

「うまくいきますように」

 なぜだろう……そう思っていると、拝殿の中から声がかかった。


「あなた、偉いわね」


 神さま……と思ったら、巫女さんだった。

「あ……」

「ごめん、びっくりさせちゃったわね。売り場と拝殿繋がってるの。で、こっち行くと社務所だから」

「シャムショ?」

「ああ、お家のこと。神主の家族が住んでるの。で、わたしは神主の娘。自分ちがバイト先。便利でしょ」

「ああ、なるほど」

「あなた、AKBでもうけるの?」

「え、いえ……あたし……」

「あ、受売高校の演劇部! でしょ?」

「は、はい。でもどうして」

「これでも、神に仕える身です……なんちゃってね。サブバッグから台本が覗いてる」

「あ、ホントだ。アハハ」

「でも、偉いわよ。ちゃんとお参りするんだもの。こないだお守りも買っていったでしょ?」

「はい、なんとなく」

 なんとなくの違和感を感じたのか、巫女さんが聞いてきた。

「あなた、ひょっとして、ここの御祭神知らない?」

「あ、受売の神さまってことは、分かってるんですけど……」


 詳しくはしりませんと顔に書いてあったんだろう。巫女さんが笑いながら教えてくれた。


 ここの神さまは天宇受売命アメノウズメノミコトという。

 天照大神アマテラスオオミカミが天岩戸にお隠れになって、世の中が真っ暗闇になったとき、天照大神を引き出すために、岩戸の前で踊りまくって、神さまたちを一発でファンにした。

 前田敦子のコンサートみたく熱狂させたアイドルのご先祖みたいな神さま。

 あまりの熱狂ぶりに、天照大神が「なにノリノリになってんのよ!?」と顔を覗かせた。そこを力自慢の天手力男神アメノタジカラオが、力任せに岩戸を開けて無事に世界に光が戻ってメデタシメデタシ。

 で、タジカラさんはお相撲の神さまで。ウズメさんが芸事の神さま。今でも芸能人や、芸能界を目指す者にとっては一番の神さまなのだ!


 あたしは、ここで二度も神さま(たぶん)の声を聞いた。と……いうことは、神さまのご託宣?


 訳が分からなくなって、家に帰った。

「美優、犯人分かったらしいわね!」

 ミキネエが聞いてきた。ちなみに我が家は、今度の映像流出事件と、その元になったハーパン落下事件は深刻な問題にはなっていなかった。

「イチゴじゃなくって、ギンガムチェックのパンツにしときゃオシャレだったのに」

 これは、ユミネエのご意見。

「しかし、男子の根性って、どこもいっしょね」

 これは、ホマネエ。

「まあ、これで、好意的に受け入れてもらえたんじゃない?」

 有る面、本質を突いているのは、お母さん。


 もう、あの画像は削除されていたけど、うちの家族はダウンロードして、みんなが保存していた。


「あ、なにもテレビの画面で再生しなくてもいいでしょ!」


 と、うちはお気楽だったけど、この事件は、このままでは終わらなかった。


 つづく



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