第三話.残酷な牙
伸二達は学校帰りに自販機に寄っていた。
伸二と一緒にいるのは裕二と太一とれなと明香だ。と、言っても4人の仲良しグループではない。伸二と裕二とれな3人のグループで、明香は伸二達の仲間ではなく伸二からお金を取られる「お財布役」だった。そして、この3人は浩二に日常的に嫌がらせをしている3人でもあった。
伸二が明香の頬を思いっきり打つ。
「お前、金が無いってどう言う事だよ。お前の金がなきゃ俺ら自販機でジュース飲めないじゃん。」
「ご…ごめんなさい。でも、お母さんの財布からお金を抜き出したことがバレてもうお金の調達ができないの…。だから…」
涙目で必死に訴える明香。しかし、明香が最後まで言い切る前に伸二は冷たい目をして明香のお腹を蹴りつけた。
「ギエッ」
明香の目から涙がこぼれ落ちるが伸二はもう一発蹴りを入れようとする。
その時だった。どこから出現したのか紫色の煙が伸二達を覆った。
「くそ…明香!てめぇ何しやがった!」
伸二は怒鳴ったが返事はない。伸二は君の悪さを感じた。なんだか地面がフワフワしてまるで雲の上を歩いているようだ。
どれくらいの時間が経っただろうか、紫色の煙は排水口に流れ込むように消失した。そして、紫色の煙の消失と共に目の前にいたはずの伸二達3人の姿はどこにも無かった。
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伸二は気が付くとコンクリートの殺風景な部屋にいた。周りを見渡すとすぐそばに裕二とれなも転がっていた。そして、部屋の中央には窓ガラスがある。状況が分からないが、伸二はとりあえず裕二とレナを起こした。
「フォフォフォ、ようやくお目覚めかね。」
不意に頭の中で声が聞こえた。慌てて顔を上げると先程は誰もいなかったはずの窓ガラスの向こうに見たことの無いおじいさんがいた。おじいさんの瞳には驚くほど感情がこもっていない。
「ここはどこだよ、ジジィ、早くこっから出せ!」伸二は叫んだ。
「年上に向かってその態度か。あ、そうそう君をこの部屋に運んだ時に見たんじゃがお前さん、浩二君と同じくらい性長遅いのぉ。」
伸二の顔が赤らむ。どうやらこの頭の中に響く声はレナと裕二にも聞こえているようだ。レナは意味が分からない、と言う顔をしていたがあの時更衣室にいた裕二はおじいさんの言った意味が分かったようだ。今度は裕二が叫ぶ。
「さては、浩二の野郎がちくりやがったな。あいつ今度ぶち殺してやる。」
おじいさんは冷たく笑う。
「ふむ、君達はここから生きて帰る気なのかい?生きて帰れると思っている時点で甘々じゃな。これから君達3人には殺し合いをしてもらう。殺し方は何でもオッケー。制限時間は5分。ヨーイドン!」
おじいさんはつらつらと言った。
「何なんだよ、お前。わけわかんねぇこと言ってないでこっから出せよ!」
おじいさんはまた冷たい笑みで言った。
「うるさいな。さっさと殺し合え。お前さんたちに生きる価値などないのだから。よし、裕二君、君の声は耳障りだから見せしめに死んでもらおう。」
おじいさんは指をパチンとならした。
「お…おい。これ…なんだよ…。首が勝手に動いて……。」
「何言ってるのよ、裕二。そんな首が勝手に回るわけ無いじゃない。」
裕二の首がゆっくりと左回りに動き始める。
首が90度程回った所で苦悶の表情を浮かべる裕二。
「い…痛い!ま…待って、このままじゃ、死ぬ!死んじまう!ガッ!ボッ!」
裕二の首からバキバキと言う不穏な音が出て、裕二は口から泡を吐いた。
裕二の首が360度回って伸二と目が合う。しかし、裕二は白目を向いていてもう息をしていない事は誰が見ても明白だった。
「う…うわあああああああああああ!」
伸二はパニックに陥った。これは殺らなきゃ本当に殺られる。早くれなを殺さないと…殺さないと…コロサナイト……。
伸二はれなに突進しようとする。しかし、れなは伸二の突進をスルリとかわして、伸二の首元にスタンガンを押し付けた。
無言で伸二は地面に崩れ落ちた。
れなは慣れた手つきでポケットから包丁を取り出した。そして、その包丁はれなの思うままに伸二の胸へと吸い込まれていく。
ビシャッ!!鮮血が飛び散りれなは紅に染まった。
れなは伸二の脈が無いのを確かめて顔を上げて言った。
「これで、いいのよね?おじいちゃん?」
グロイと言いつつそんなに、グロくありませんでした。