第2話.甘い果実
浩二は学校が指定している通学路から外れた「裏道」と呼ばれる道を歩いていた。学校から指定されている通学路には広い歩道があるがこちらの道は歩道が狭いので、通学路として、使うことは禁止されている。しかし、浩二にとっては、学校指定の通学路を使っていて、伸二と鉢合わせして何かされる事を考えればこの道を使うのが一番安全だ。浩二は今日の更衣室での出来事を思い出してため息をつく。
その時、後ろから「チリンチリン」と自転車のベルが鳴らされた。
浩二は普通に白線の内側を歩いていると言うのに何のつもりなのだろうか。浩二は怪訝に思ったか、より白線の内側に寄った。
自転車は浩二の横を通り抜けるかと思いきや、浩二のすぐ隣に停車した。いや、そもそも止まったものが自転車なのかすら分からない。
自転車だと思っていたそれにはムカデのような無数の足がついていた。本来ハンドルがあるべき位置には馬の頭がついていた。そして、その馬の頭は「チリンチリン」と自転車のベルと同じ音を発している。浩二の頭の中が一気に「?」でいっぱいになる。自転車っぽいものにまたがっていたおじいさんはこちらを見てにやりと笑って言った。
「浩二君、君はいじめられておるな?わしはいじめをする人に裁きを与える者じゃ。本職は漢方薬のお店だったんじゃが、色々あって今は『いじめの復讐屋』的なものをやっておるんじゃ。」
大丈夫か、この老人…浩二は率直にそう思った。おじいさんは反応に困る浩二を指しておいて一人で喋り続ける。
「お前さんの一番大切なものと引き換えにわしは、お前さんをいじめる者達に『死』と言う裁きを与えよう。あ、返事はしなくてもいい、首を縦に振ればわしとの契約は成立じゃ。」
浩二は、ほぼ反射的に首を縦に振った。どうせ、頭のおかしい老人の話だ。首を縦に振ったところで何も変わらない、そう思ったからだ。
「では、2`3日後に君の一番大切なものをもらいに行くからの。」
おじいさんは、笑顔でそう言い残して消えた。
「去っていった」のではない。「消えた」のだ。浩二はここでやっと驚愕を顕にした。自転車っぽい乗り物に乗っている時点で変な人だとは思ったが、こんな物理法則を超えた現象が起こるとは。
浩二は何か大きな過ちをしでかした気がした。あのおじいさんの言っていた「一番大切なもの」とは何なのか?そもそも何故あのおじいさんは浩二の名前を知っていたのか?浩二は家に帰るまで考えたがついにそれらの答えは出なかった。
次回グロテスクな描写があります。
ご注意ください。