2 チート確認と自己紹介
目を開けると森に立っていた。さっきまでの葬式場から打って変わって、富士の樹海みたいであたり一面が緑一色だ。フィットンチッドが多いのか精神的に癒される。森林の香りで気分がいい。
そんなことより勇者って、こんな感じに転移するの!?王宮の召喚の間とか、大魔術士が禁術で召喚〜とかじゃないのか?誰もいないんですけどーー!!
ま、まずは、ステータスを確認しなきゃな…えーと、確か念じればいいのかな?
頭に軽く思い浮かべると、半透明なボードが出てきた。
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名前 シン アマノボリ
年齢 18
lv 1
職種 未設定
ステータス
HP 100
MP 100
STR 100
VIT 1000
AGI 100
装備
胸部:学生服上着 ポリエステル混紡ワイシャツ
腰:本革ベルト
脚:学生ズボン
足:学生靴
スキル
観察眼
インテリジェンス化
称号
勇者
創造神の加護
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なんだこれ…インテリジェンス?聞いたことあるぞ…確か、意思のある剣だった気がするんだが…
頭をひねってステータスと睨めっこしていると、突然太陽を覆っていた雲の切れ間から太陽の光が降り注ぎ地面に当たる。すると、神様が一瞬うすくみえるとだんだん濃くなり完全に姿が現れた。同時に薄明光線もだんだんと雲の隙間が狭まり、光も徐々に細くなっていき完全になくなった。
すげー神秘だな…こんな地上にまで薄明光線が届くなんてどんな強いんだよ…。
神様は俺が驚いている姿をみて若干喜んでいるみたいだ。
「やぁ!無事転移できたね。それじゃあ、さっき言った通り、何か一つ作ってあげるよ。武器かい?防具かい?」
ワクワクしている子供みたいな態度の神様…見た目がデカイおじいさんなんだよな…なんか、惜しい。
って!まずは、なにをもらうかだ!!…防具か?うーん…武器の方がいいんじゃないか??それに、遠くから攻撃できる系の…飛道具?でも、投げたら終わりってのはいやだな。あ、確か魔法があるって言ってたな…
「それでは、杖でお願いします」
「杖か〜…わかった。ほい!」
神様は、右手を差し出すとだんだん光が棒状に集まっていき目を開けると2mほどの漆黒に金の彫刻が入った杖ができた。
俺は、そっと神様の手から杖を受け取る。ズシリと重いが持ちやすく手になじむようだ。
「これで魔法使えますね!」
「ん?魔法?魔法の杖が欲しかったのか!!先に言ってよ!…まあいいや。その杖をいじっちゃえ。」
神様は、俺が持っている杖を見ながら、パチンと指を弾く。すると、杖が若干赤く光った。
「これで、よし。多少長いけど気にしないでね。それで、スキルはどうだったんだい?」
プレゼントの中身を聞く子供のような笑顔で、聞いてくる神様。正直、スキルってハズレじゃね?…
「『インテリジェンス化』って書いてありましたよ」
「おお!良かったね〜!」
「いいのですか?正直使えなさそうなんですが…」
「インテリジェンス化ってのは、物体に意思を生み出すのさ。転移前にも、霊魂が物に宿る付喪神ってのがあったでしょ?それを強制的に宿らせるって考えていいよ。意思があるって事は、それに応じて個性があるんだよ。まあ、意思を生み出すって事は、簡単に言えば命を吹き込むようなものさ」
「命を…吹き込む…」
「そうだ!試しにその杖に使ってみるといい。使い方は簡単さ、対象に触れながら『インテリジェンス』と念じればよい」
手に持っている杖を、軽く握りステータスを開いた時と同じように頭に浮かべる。すると、杖が微かに動いたような気がしたが、それ以外は何も変わっていない。
「失敗?…ですかね…」
「なにを言ってんだい!成功さ。地面について見なさい。軽くね?」
杖の先端を地面に軽くつく。
『うわぁ!!!』
突然、頭の中に少女の驚くような声が響いた。その声に自身も驚き、目の前の神様をみると腕を組んで首を振っている。
「できたようだね。」
「い、いまのは…頭の中に声がしたのですが…」
「それがインテリジェンスが成功した証だよ。その声は、お前の持っているその杖の声さ。それと、インテリジェンスした物の声hは君以外には聞こえないのさ」
『どうなっているのでしょう…ここは?…いや、私はなぜ…』
今度は頭の中に、困惑したような声が響く。会話をするべきだよな?…この杖って言ってたし…
「あの…聞こえてる?」
杖に口を近ずけて話しかける。
「神くん。言葉に出すんじゃなくて、頭に思い浮かべてごらん。そして、少し会話するといい。初めてのスキルを使った実感としてね」
俺は、再び頭の中で話すように思い浮かべる。
『聞こえるかい?』
『うわっ!だ、誰ですか!!』
『僕はジン アマノボリ。君の持ち主って言えばいいのかな?…因みに、今君を持ってるんだけど…』
『持ち主!?御主人様ですか!」
『うん。多分?…」
『よ、よろしくお願いします。えーと、私はエレスチャルです!なんか、魔法の杖になってます…」
『そうなんだ…まあ、これから魔法をバンバン使っていくつもりだからよろしく!』
『はい!頑張りましょう!!』
会話を終えた。なんか、いい子そうで安心した。目の前にいる神様もこちらをみて頷いている。
「できたみたいだね。それじゃ、何か質問はあるかい?」
質問…やっぱ、異世界って言えば魔法だ。正直、究極魔法とかバンバン打ちまくって無双したい!!魔法に関しての知識はないし、神様に聞いた方がいいんじゃね??
「では、魔法を教えてください!」
「魔法?ざっくり言えば想像なんだけど…その前に、勇者は魔法を使う事が、できないよ?」
「え?…使えないんですか!?」
「使えなくないけど…まあ、そのうちわかるでしょ。あ、そうだ!今日はサービスで、魔法の知識だけは杖に教えておいてあげるよ。杖を貸してごらん?」
「え?杖に教えても意味ないでしょ…」
「まあ、いいからいいから!かしてごらん」
手に持っていた杖を神様に差し出すと、神様は軽く杖に手を乗せると目を閉じた。すると、杖を出したように手がだんだんと赤く発光して杖に吸い込まれていく。
そして、神様が目を開くと赤い光も止まった。
「これで、よし。話しかけてごらん?…っと!そろそろ時間だ!そろそろ、いくね!それじゃあ、いい異世界を!」
そういうと、現れた時と同じく天空から一筋の光がスポットライトのように、光が差し神様を照らす。神様は、笑顔で手をふるとすぐ光に消える。すると光もだんだんと窄んで行き、完全に消えた。
神が去った直後に、ものすごい勢いで脳内に言葉が響く…。
『ご主人様!!すごいです!!!』
『ど、どうしたんだい?!』
『魔法の知識が突然わかりました!!』
『そ、そうか。なら、俺に魔法を教えてくれるか?」
『はい!では、まず初期魔法のファイヤーボールからやってみましょう!私がお手本をしますから、見ていてください!」
そういうと、杖が勝手に動き、引っ張られるように持っていた腕を前に出した。前に出すタイミングに合わせて、空中に燃える火球が浮かんでいる。直径15cmほどの球体で、メラメラと赤く燃えている。
『どうですか?これを頭の中に思い浮かべて…』
『ねえ。これって…どうやったの?」
『魔法っていうのは想像なんです。ですから、頭の中に思い浮かべ…?」
『杖だけで魔法使えてるよね?…てか、俺いらなくない…?魔法の知識はどこまで、わかったの??」
『全ての魔法ですかね…。私なら空気中の魔素を魔力として使えるので魔力切れはありませんし、そもそも杖ですし適正属性はありませんから全属性使えます…最強ですね!』
『そっか…使いたかったな…魔法…』
『申し訳ございません…ですが!私がご主人様をお守りいたします!』
『いいさ!仕方がない!なら、よろしく頼むよエレス…チャル?うーん、エレスチャルって言いにくいな…』
『そうですね…。なら、呼びやすいようにお呼びください』
うーん…エレスチャル…杖…まあ、悩んでも意味ない!単純に名前からとるか!
『なら、エレスで』
『いいですね!では、私のことはエレスとお呼びください』
どうやら、気に入ってくれたようだ。エレス。われながら、結構いいセンスしてないか?
『ああ。エレス。そうだ、他にもインテリジェンスしてみよ!』
『そうですね!せっかくのスキルですし!』
肌着などは、装備に含まれないってことにしてあります。