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CUBE!  作者: しば
3/11

◆◆ 1

朝、だ。

閑静な住宅街と有名な一帯の中のマンションの一室に…

「ぎゃあああああ!」

朝から悲鳴が響き渡った。


「はーらへったー。」

「はぁ…はぁ…」

朝から大声だしたから疲れた。

あたしはクロを睨みつけた。


数分前ー…

(…なんか違和感。)

鼻の頭が痒かったり、ホッペがむずむずしたり…

半分寝ている頭でぼんやりと、そう思う。

(うー、なんか朝っぽいけどもうちょっと寝てたい…)

何時か見ようとケータイに手を伸ばす。

(ん?なんか柔らかい?)

私は目を開けた。

視界にいっぱいに映ったのはヘラヘラとした顔だった。

ー思考停止。

「ぎゃあああああ!」

…以上、回想終了。


(なにあれ!完全にホラーでしょ!

おかしいでしょ、あの距離!つーか、なんで起きたら真横にいるの!?)

絶賛混乱中のあたしの様子をにやけながらクロが見ている。

(クロの態度が一番ムカつくわ。)

そう思いつつも、ずっと寝てるわけにもいかないのでソファから降り冷蔵庫に向かう。

(…うん。牛乳しかない。卵ない。ウィンナーない。野菜も…ない。肉じゃが昨日食べちゃったし…)

仕方なく牛乳をコップにいれて、棚を漁る。

(…うん。食パンしかない。)

自分だけならまあいいのだが今は居候がいるのだ。

(まあ、しょうがないということで…)

凄く質素な朝ごはんだがクロは何も言わずに、むしろ嬉しそうに食べていたのでほっとした。

『昨日未明、嘉林町かりんちょう住宅街で通り魔事件が発生しました…。』

(…隣の町だ。)

〜♪

まだ、眠い頭でニュースを聞いてるとケータイが鳴った。

ケータイの着信音にクロはびくりと驚いて音源を見つめた。

(ぷっ、ざまぁみろー)

朝のこともあり、あたしはちょっと楽しくなりながらケータイを取った。

電話の着信音なので出ないと鳴り続ける。

「もしも」

「もしもし!千里!」

出た途端に、耳元で響く元気な声。

「あぁ、美由紀。おはよ。」

美由紀は学校の友達だ。

やたら朝からテンションが高いなー、と思ってると凄い剣幕で話しかけられた。

「ああ、美由紀。じゃないわよ!せっかくこっちから電話したってのに。…まさか何の用、なんていうつもりじゃないよね?」

(…いうつもりだった。)

「…ソンナコトナイヨー。」

「…もうっ!秋分の日で三連休だから遊ぼうって約束だったでしょ?」

「…あ。」

「…はぁ、忘れてたのね。」

そうだった。忘れてた。

(でもな…)

あたしはクロをちらりと見た。

「…ごめん!それまた今度でいいかな?」

「?いいけど?どしたの?」

あたしがドタキャンするのが珍しいからか美由紀が尋ねてくる。

「いや、なんていうか…」

「…あ、そういえば千里、昨日授業終わった後、保健室から帰ったんだってね。」

「え、なんで知ってんの?」

「たまたま部活上がりで、教室戻ってたら松本がカバン取りに来たし。体調悪いの?」

美由紀が早とちりする子でよかった。

よくないけど、今回は助かる。

「…そう、それそれ!ちょっと具合悪くて…。」

「そっかー。うん、まあ私は別にいつでもいいから。」

じゃ、といって電話がきられた。

ケータイが待ち受けに戻る。

秋分の日、か…

今日から月曜日まで休みか…。

あたしはケータイからクロに視線を移した。

「クロはこれからどうするの?

なんかすることあるんだよね?」

「まあねー。人探し。」

(人探しに来たんだ…)

「私今日学校休みだから手伝おうか?」

「てつだう?」

なんの気なしにいったあたしの言葉にクロが少し首を傾げる

「なんで?」

「だって1人で探すより2人で探すほうが早いじゃん。遊ぶのも断っちゃったしね…。」

クロは何処と無く納得していなさそうな風だったがやがて興味なさげに返事した。

「ふぅん。まあ、俺はどっちでもいいよ。

でも俺の足手まといにはなんないでね。」

(足手まとい、って…)

言い方に少し違和感を感じたが、あたしはそれを振り払った。

「分かった。じゃあ、朝ごはん食べ終わったら行こう?」

あたしは残っていた食パンの耳を口に入れた。


マンションからでたあたしたちはあてもなく住宅街を歩き回っていた。

隣できょろきょろしているクロに声をかける。

「その探してる人ってさ、どんな人?」

「んー。男。」

「いや、それって世の中の半分は当てはまるじゃん。なんかもっと特徴ないの?」

クロはへらへらと笑って肩をすくめた。

「写真でみただけだからねー。覚えてなーい。

ああ、髪は短かったし、身長も高かったような気がするけど。」

(…本当に探す気あんの?こいつ。)

心の中で呆れつつ、しかしこのままでは埒が明かないのであたしは質問を変えた。

「ど、どこらへんにいるか、とかは?」

「さぁね。でもこの町にはいるんじゃない?」

今までとは違い確信のあるような答えにあたしは首を傾げた。

「?なんでそう思うの?」

「だってそいつも俺と同じとこからきたからさ。

こっちで使える金持ってないだろうし。

そしたら徒歩しかないでしょー?」

「あ、そっか…。」

(納得。でも誰かわかんない以上、あたし、ただ歩いてるだけじゃん。)

無意味に辺りを見回すのに飽きて、あたしは斜め前を歩いているクロを見た。

瞳が、きれいだなー。

きょろきょろと忙しく動く瞳はよく見ると深緑でこのセカイの人間では無いことを示している。

それに気づいたのは今日の朝、間近で見たから。

思い出した途端顔に熱が集まるのが分かる。

(うっわ、恥ずかしい!)

「何してんの。」

1人で顔を赤くしてると、いつのまにかクロが、こっちを見ていた。

へらへらしたままだが、心なしか目が冷めてる気がする。

「ナンデモナイデス…。 」

ふーん、と言ってからクロはこちらを向いた。

「ねぇ。」

「ん?」

「人の集まるとこってないのー?」

「人の集まるところ?」

クロは頷いた。

「確かそいつは特に傷があるわけじゃないから見た目は普通なんだよね。

俺なら誰かの印象に残るとこよりたくさん人のいるところに行くなー。」

「なるほどー。」

こいつも意外と考えてるんだな。

あたしは少し見直してから考えた。

「人の多いとこ…んー…駅前かな。」

パッと思いついたのはとりあえずそこだった。


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