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困ったねぇ

しょうがないじゃん。と開き直って何も分からない一般市民のふりは止めた。扉も現れる様子もないし。


あれ?もしかして閉じ込める相手間違えた!?作戦は、失敗に終わりそう。


何かあっても反応できるように、太ももに括りつけてある短剣に手を伸ばす。傍から見たらスカートを整えているようにしか見えないだろう動作で服のそでに短剣を忍ばせる。念のための行動だ。閉じ込めておいて敵さんがわざわざ中におこしになるなんてことはよっぽどの馬鹿か、特別な策がある相手ぐらいだろうから。


でもホントにこれは…ピンチだな。




この部屋の床も見れば見るほど魔法陣に見えて来る。手に持ったままの玉もこの様子なら何らかの魔道具だと考えて良いだろう。


ヘタに壊すってのも危険だからね。突然爆発されたりとかしたらたまらん。床に転がして、突然魔法陣が起動しちゃったりしても笑えない。今のところ、何か害があるというわけでもないし。持っているしかないか。

取りあえずかかってるであろう魔法を調べるってのがいいかな。床に描かれている魔法陣は起動してないからどうしようもないとして、扉の方はチャンネルにアクセス出きれば解除できるかもしれないし。




集中




…………?



…集中、集中



…………??




しんとーめっきゃくタイム





…………………………………………………………………?

――――――――ん?










――――――――――――――――――――――――――――――どうなってる?











チャンネルにアクセスできない。







何が起こってんだ?アクセスの妨害なんて今まで一度も受けたこともないし、そういうことが可能だっていう噂すら聞いたことないよ!どうしてこんなことが出来るんだ?



アクセスするってことは前に見た資料の切れ端によると、もう滅んだ国で生み出されたという電波っていうのと同じ様なもので、特殊なチャンネルと自分の意識をつなげて精神エネルギーとか、魔力とかその辺はよくわかってないけど、何かを使ってチャンネルの世界にいる彼らを招くことである。みたいなことが書いてあった。でも、アクセスを防ぐ方法なんて無かったし…。そもそもその資料も真偽が怪しいようなものだから。




って…

ちょっとまて。―――――――――――――そういえば、電波を発明したもう滅んだ国って…もしかしなくとも丁度ここと重なるんじゃないか?となると、ずっと昔の資料が掘り出されても不思議じゃない。掘り出された資料をもとにアクセスの妨害の方法を編み出したということになるけど。いや、もしかしたら昔の資料の中に見つかってなかったけど実は、アクセスを妨害する方法が編み出されていたってことがありえないってわけでもない。



それじゃあ、はめられたっちゃはめられたけど、それなりに報告できることはあったということになる。それも、最重要機密レベル。これは何してもご主人様のもとに届けないといけないなぁ。

私がただ、掴まって殺されて終了ってわけにはどうしてもいかなくなったってことか。



でも、この八方ふさがりな状態どうしてくれようか。


私の強みは一番は魔術。それに続いて戦闘や、侵入の際に使う技術が秀でていること。それなのに、今の状況は魔法によって作り出された密室空間。外に出るための扉はないため、技術の使いようもない。魔法を使えれば、最終手段としてこの部屋だけを燃やしつくすとかやれそうなんだけど、そもそもチャンネルにアクセスできないから無理。これじゃあ、多少腕の立つ女の子ってだけだ。ぶっちゃけ、ただのスパイですよね。ほぼ「パンピー」って言ってわかる人がどれくらいいるかなぁ。



今やれることは…もう一度現状の検証かな?おそらく何かで私の動きを監視してるかもしれないし。私ならするからね。





まずは床。魔法陣と言うのはそれなりに種類がある。オリジナルのものもあるけど、それでも色々と決まりごとにのっとって描かれる。つまり何が言いたいかというと、魔法陣を見るだけでも精通している奴が見れば、効果や発動条件などがわかる。魔法陣を描いたやつのレベルも大体分かる。


さてと、じっと床を観察する。範囲は…この部屋のなかオンリーってところか。効果は――――――うーん。見たことないなぁ。パット見で効果を教えてくれるほど親切じゃないってか。


この魔法陣からわかるイメージは…波、妨害、魔術、移動?…他には…打ち消し合うとか…

打ち消し合う?

となると、この魔法陣が原因で魔術が使えないのかな?

一応記憶しておくか。


部屋の隅に行って床全体を見渡せるようにする。円を描くように曲線がいくつも重なり精密な魔法陣を描いている。

ここがこうなって…こうなってるのか。私は家具の一つもない部屋を歩き回り始めた。なにやら、酷く複雑な物が描いているというより、いくつもの魔法陣が重なっていると言った感じだ。大した技術だ。魔術を使う物と、職人が協力して作ったんだろう。

かつんかつんと靴と床とが硬い音を出す。

この床の材質ってなんだろ。家とかをたてるときに使われる気にしてはちょっと音が硬すぎる気もする。

魔法陣を描く際に使われるものによって効果も変わるものもある。まぁ、チョークとか、ただの線でも十分効果があるが、特別な粉や、木材、ともかく描いたものの材質によって行使される魔術は変化する。ってことで、まぁ色々あるんだよ。


しゃがみこんで床ペタペタと触りまくる。ひんやりすべすべ。見た目からいってかなり古い木から切り出したものを使用しているのだろう。……レーニスの木かなぁ?それとも、サチリア?どちらでもないかな。…わからないな。城そのものも結構昔に建てられたものだからな。最近出回り始めた木材は抜いていいだろう。ま、どっちにしろかなり珍しいものでなお且つ国から保護される対象になってもおかしくなさそうなほど昔の木だってことがわかった。これだけの超高品質のものを使って魔法陣を描いているなら私ごときの魔術じゃ対抗できそうにもないな。そもそもこんなものがこの国にあったってことが驚きだ。こんなすげーものがあるなら噂になってもいいのに。というか、私みたいな特別なわけでもない暗殺者にこんな盛大な仕掛けを使ってしまっていいのだろうか?これがおっそろしいほど貴重な物で、ヘタしたらこれの技術を求めた他国に戦争を吹っかけられる可能性があるぐらいやばいものだってわかってないのか?



ふと、人の気配を感じた。扉の外か。誰のお出ましかな?


ゆっくりと重心を落として構える。入ってくる可能性もあるんだ。

油断するな私。


耳をすませば足音も聞こえる。と、壁の前で止まった。





声は唐突にかけられた。



「お前はどこの国から来た?」



まぁ、武器を持っているであろう者のところにわざわざ入ってくるとは思ってなかったけど。


聞くの?てか、いきなりそれ?

「…」

「無言で通す気か?」

「…」

いうわけないだろ。馬鹿なの?

答えようかと一瞬思ったけどもしも、この壁の前に声とかのスペシャリストがいるといくら、声を変えても元の声をわりだされてしまうこともある。実際一度割り出されたことあるし。

「このまま黙っていても何も変わらないぞ」

「…」

変わんなくてもいいってことがわかんないのかな。どうしたって変えるのは私じゃなくてあんたらだよ。私が何をしようが何と言おうが今の私をどうこうできるのはあんたらなんだから。私がわざわざどうするかの判断材料をやるかっての。バーカ。子供っぽいとは思いつつも思わず心の中で罵倒する。

「黙っていればどうにかなるんじゃないかと思っているのか?」

いやいや。てか、尋問なのこれ?仮にも敵のまわし者かもしれない奴にこんなにぬるい質問で良いわけ?せっかく閉じ込めてんだから体の自由でも何でも奪う方法がないわけでもないし、自白剤でも飲ませればいいのに。ま、ほとんどの薬剤に耐性もってんだけど。はっはー効かんわー。みたいな?すごいでしょー。でも、代わりと言うのも変だけど、病気とかになって薬飲んでも効かないんだよね。自力で頑張れって感じ。結構問題あるかな?


なーんて思考を飛ばしている間にも扉の向こうの誰かは続けて質問をしてくる。

名前はだの、生まれはだの、年齢だの、挙句の果てには主人の名前を言えと。


ため息がでそうだ。

私は質問を聞くのをやめて扉の向こうに意識を集中させた。相手が誰かを知りたい。


衣擦れの音。シャラシャラという小さな音。苛立っているようで靴で床をかつかつと叩いている。何かの飾りであろうものがこすれているのだろうか?キリリと高いかすれた音もする。飾りをつけられるぐらいの身分のものであることがわかる。

私のいる部屋の下の階で誰かが怒鳴っているのも聞こえる。



「おい、あの部屋の準備はできたのかっ!」

「いえ、もう少しかかります」

「一番強い薬を用意しろと言われただろう」

「それが、ここにまだ届いていなくて」

「なんだと!」

「申し訳ありません」

「仕方がない。代用品として今国にある一番強い薬を用意しろ」

「わかりました」

「しかし、あれば解毒剤もあるし…大丈夫だろうか。おいっ、お前」

「は、はい」

「このことは内密にしろよ」

「わ、わかりました」

うっさいなぁ。荒れた口調に注意が向かってしまって大切な情報が聞き取れなくなりそうだ。




っとっと、集中が途切れた。扉の向こうの奴はまだ何か言っている。

「お前の正体はわかっている」

決まり文句ですよねー。どこの、役者さんですか。もしかしたら、舞台から逃げて来たのかもしれない。よっ、主人公。

「リニスティア王国のものであろう」

事実だとしても反応したら負けだ。この国に暗殺者やらスパイやらを紛れ込ませようとする国なんて特定済みだろうし。

「…」

何も返さないってのが得策かな。何と言われようと、返す気はないんだけど。何か返した時点で声っていう情報を与えることになってしまう。


相手はイラついているらしい。


ダンッ


扉が蹴られた。


貴重な情報をどうも。


一人で厭味ったらしい考えをよぎらす。

音からしてやわらかい生地と硬い生地を合わせて作っている靴をはいているようだ。扉の前にいる奴が履いてる靴はずいぶんと上等そうだ。身分は高いらしい。

「お前のことをリニスティアの王に伝えたらなんていうだろうな?」

しらを切りとおすでしょうね。そんなに私のご主人様は甘い方じゃない。

「…」

「…どうしても言わない気か」

これじゃあ、ひたすら独り言を言っているような気分になってそうだよね。ストレス溜まりそー。一方的に同情してみる。てか、返事より軽口をたたきたくなってしまうのを堪える方が辛い。


ふと、扉の外にもう一人気配を感じた。

同じく飾りがこすれるような音がするから身分は高い。お偉いさんが集まってどうするつもりだ?


警戒心を強めて扉があった場所を思わず睨みつける。

「何か言ってもらえないでしょうか?あなたが話して下さらないせいで、横にいる方の機嫌が悪くなってしまってしまいました」

丁寧な物言いをするのは綺麗な声だった。女かとも思ったがどこか男らしさのある声だ。

「…」

丁寧な言い方なのに背筋に嫌な感じがはしった。

「話してくれる気はなさそうですね。あなたはいつまで待つつもりですか?相手は、あなたへと向けられた暗殺者かもしれないんですよ?」

最もですね。この人の方が、私の職業のことをよくわかっていらっしゃる。って、あなたへ向けられた暗殺者?となると、この扉の前にいる奴はかなりの身分の持ち主。誰だろうか。なんとなく、こういうタイプは嫌いだな。

「いや、もう少し待てっ!」

声を荒げて止めようとしている。何故?

「もう無理です」

何故無理なのだろうか?

「おいっ!」

疑問をまとめる時間もなく

かちっ

何かが押されるような音がした。


刹那


足元からどこからともなく水が湧いて来た。


芸が細かいな!

チョークとかで描いたのではなく木材で描いているからこそできる芸当だ。チャンネルにアクセスするのを妨害する魔法陣のほかに書いてあったのはこのための魔法陣だったのか!でも何もないところから何かを生み出すなんてできるはずがない。それは、不可能だ。対価が無ければ成されるはずがない。対価は魔法陣と共になければ意味をなさない。この部屋に対価になりそうなものはないはずだ…


辺りを見渡す。ものによっては決められた形でないと対価にならないものもあるから、壊せばどうにかなるかもしれない。

しかし、周りにはそれといったものは見つからない。

余裕がない。

ものの形をしていないのか?どこか床に直接埋め込まれているとか?

焦りつつも床に視線を向けるが水位は上がる一方。床は水に埋もれてしまってよく見えない。

とにかく、水でとけるようなものじゃない。で、この部屋にあるものってなんだよ!

ちょっとじゃなくてこの状況はまずい。こうくるとは思ってなかった。私だって死ぬ覚悟が無いわけではないが、やすやすと殺されたくもない。膝の辺りにまで水が上がってくる。使用人の丈の長い服が足にまとわりついて邪魔だ。


















あった。
















ふとそれに気付く。








あるじゃん。

















それに気付くのと同時に体から力が抜ける。

















人を閉じ込めて、閉じ込めた奴を利用して魔法を成立させる。おそらく対価は中にいるやつの生命力とかだろう。すっごく効率的。魔法を行使する方は特に消費する物もなにもない。

ただ、どうやって遠隔で成立させているのかが、気になるところかな。


なんつぅ、えぐい部屋だ。





力が抜けた体はぶれることなく水の中へと落ちる。

顔に冷たい感触を感じつつ私は否応なく意識を手放すしかなかった。












簡単には死は選らべない。











意識が途切れる直前にそう思った。


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