私は暗殺者だ
他の作品を抱えているくせにそっちのほうが進まなくて困った挙句新しいものに手を出してしまった虹溜りです。
更新速度は亀並だと思いますがどうぞよろしくお願いします。
私は暗殺者だ。
指令が下りある超重要人物の暗殺に行くところだ。相手は隣の国の王。
カリスマ性にとみ、頭も回ることながら知識も豊富、腕もたつ、顔も良ければ地位もある。あらゆる女が見惚れるような奴らしい。
私の紹介は省かせてもらう。仮にも裏社会を飛び交う暗殺者だからな。
で、今は何をしているかなのだが……。
「王様、この件なのですが………」
「それならもう案をまとめておいた、それを読んでくれ」
「ありがとうございます」王様の執務室の上だ。埃っぽい隙間に居座るのはなかなか辛いものがある。
今の会話は王の右腕と言われる宰相と王の会話だ。ちなみに情報もとってこいと言われているので、暗殺するまえに情報収集もしなければいけない。
最近は私の主人が王をしているリニスティア王国の動向についての話が多い。
私はそれ以外の国内の情報が欲しいんだけど。
ついでに言うなら私はいまだに王の顔を見たことがない。王のそばにはやけに優秀な王直属の護衛がいるからだ。会話を聞くにも聞こえてしまったみたいな感じで意識は会話以外に向けてなくちゃいけないし、暗殺に来てから凄く器用になったよ。
まぁ、戦って負ける気はしないけど。
っと、移動するみたいだな。やっと埃まみれのところから出られる。くしゃみをするのをこらえながら考えをめぐらす。
確か次の予定は………あぁ、今日は町に行くっていってたなぁ。作物の値段が高騰しているやら何やら言ってたなぁ。そういえば対策も立ててたな。対応も早かったしまぁ、結果は出ているだろう。
それにしてもなんて不用心な。
私も旅人に化ける。もとの顔がわからない、かつ違和感がないように化粧を施す。
「よし」
顔を軽くはたいてやる気をだす。さぁ、王をストーカーしようではないか、天気もいい、風も気持ちい、お腹もいっぱいだし素敵なストーカー日和じゃないかと一歩踏み出したところで………。
私にとって絶対の声が聞こえた。
「順調か?」
声を発しているのは純白の小鳥。肩に乗ってこちらを見つめている。
鳥に目もやらず口元を動かさないようにしながら声を発する。
「私のことはばれていません」
「当たり前だ」
渋い落ち着きのある声が答える。
「求めていらした情報に関してはなんとも言えません。ただ、最近よく上がっている話題はご主人様の国との関係についてのようです。大分警戒しています。
「そうか」
「国内で起こっていた作物の値段の高騰についても何やら対策を立てそれがうまくいっているようです」
「それぐらいはできるだろう」
「また、最近は何か悩みがあるようです」
「なぜわかった。会話があったのか?」
「呼吸のしかたや歩き方、いつもの行動パターンのずれなどからそう判断しました」
「内容はわかるか?」
「残念ながらわかりません。口には出さないのです」
「それは奇妙だな」
可愛らしい小鳥の口から渋い声が聞こえるのも大分奇妙だけれど。
「指令を言い渡す」
「はっ」
「私の命令があるまで絶対に王を殺すな。それまでは情報収集に努めろ………以上だ」
「全てはご主人様の思うままに」
役目を終えた小鳥は内側から破られたかねようにバラバラになった。
肉片へと代わった小鳥の形見のように舞った羽を手のひらで受け止める。
そのまま、詠唱破棄した魔術で燃やしつくした。
「所詮はお互い道具ってことかな」
らしくもない。頬についた小鳥の血を腕でぬぐい取る。きっとこの国の王と部下の関係を見てしまったからだ。私にとっての絶対はご主人様。それは揺るぎない事実だ。
少しじっとりとした気分を振り払うかのように頭を軽く振る。
大丈夫。私はいつもと変わりない。
私の目にはお忍びが楽しみです仕方ないという様子な王がいた。
少し気分が晴れた。