歩く
ゆっくり、ゆっくりと歩いてみた。
こんなにゆっくりと歩いたのはいつぶりだろう?
...もしかしたら、初めてかもしれない。
それくらい、私は突っ走ってきた。
脇目も振らずに走ってきた。
高校卒業、すぐに就職をして、二十歳で結婚。
二十一歳で一児のパパになり、責任と重圧を背負いながらここまで駆け抜けて、たどり着いた先が立ちはだかる大きな壁、リストラだった。
「なぜだ」
私は混乱した。
私はまだ28歳で、自分で言うのも何だが将来も有望だと思っていた。
それが、このざまだ...
妻には、全て打ち明けた。
子供のためにも、協力していこうと言ってくれたが、その目は脱力感で満ちていた。
何とかすぐに次の働き口を探さないと。
私はすぐに市内の職安へと走った。
手当たり次第、資料を読み漁ったが、適当な職はみつからなかった。
帰り道、私はそれまでの疲れが一気に噴出したように歩いた。
たぶん、人目には敗者の風体に映っているだろう。
しばらく歩いていると、何回か通ったことがあるはずのその道が、別な風景に映っていることに気がついた。
立ち止まり、眺めているうちに、ふと悟った。
脱力しきった目をしていたのは、妻ではなく私だ。
妻の目から、私が私を見ていたのだ。
そして私は、走るのをやめることにした。
人生を、歩いて進んでいいくのも大切なんじゃないかと思った。
もう一度、今後のことを妻と相談してみよう。
一人で背負い込まず、いろいろしゃべってみよう。
仕事を探すのは、それからでもいいじゃないか。
初めて、しかも30分ほどで書き上げた作品です。とにかく何か投稿してみたくて、即興で書きました。今度はもうちょっとましな作品を仕上げます。徐々にレベルアップしていきます!