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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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六甲、静かなる弾痕

六甲の夜は、音を吸い込む。


山上の私設研修施設。

表向きは企業幹部向けの危機管理セミナー。

だが招待客の顔ぶれは、港湾警備会社の幹部、再開発関連企業の重役、そして政治ブレーン。


港の次は山。

高台から街を見下ろす者は、いつも先に動く。


「監視カメラ、十六台。死角、三秒。」


迫田澄香の声が無線に乗る。

落ち着き、温度がない。


「三秒で十分。」


澪香が応じる。

同じ声色。だが息の取り方がわずかに違う。


今夜の主役は双子だ。


澄香は受付係として施設に入り、澪香は外周警備員に成り代わる。

顔が同じというだけで、世界は簡単に混乱する。


彩香は外周林道に待機。

あかりは車内でバックアップ。

玲奈は山麓で全体を統制する。


「入る。」


澄香が一歩踏み出す。


ロビーには低いジャズが流れている。

笑い声。グラスの音。

平穏に見える。


だが地下会議室では、空気が違う。


「港湾封鎖は三十分以内に可能。電源系統も同時に落とす。」


スクリーンに映るのは、兵庫沿岸部のインフラ図。


澄香は静かにタブレットを操作する。

録画。音声取得。


同時刻、外周で澪香が警備員をすり替える。

帽子の角度、歩幅、視線の高さまで同じにする。


無線が震える。


「第二グループ、到着。」


黒塗りの車が滑り込む。

降りてきたのは、元知事の側近。


「核心に近づいとる。」


玲奈が低く言う。


地下会議室。


スクリーンに新たなスライドが映る。


“実地検証フェーズ”


都市機能停止テスト。

想定被害、物流麻痺、通信混乱。


「兵庫は実験場やない。」


澄香は心の中で呟く。


その瞬間、警備主任がロビーを横切る。


視線が合う。


違和感。


「二人いる……?」


主任の目が細まる。


外周で澪香も同じ瞬間を感じる。


「ばれた。」


次の瞬間、銃声。


乾いた、短い音。

六甲の空気が震える。


彩香が林道で身構える。


「接触確認。」


地下では混乱が起きていた。

参加者がざわめく。


澄香は即座に動く。

照明を落とす。

三秒の暗闇。


その間に資料データを吸い上げ、端末を抜く。


階段を駆け上がる。


外周では澪香が追手を足払いで制圧。

銃を弾き飛ばす。


「生きて帰るで。」


双子は背中合わせになる。


足音が迫る。


玲奈の声が無線に入る。


「撤退。南側林道。」


彩香が合流し、煙幕を投げる。

あかりが車を回す。


再び銃声。


今度は弾丸がガードレールに当たり、火花を散らす。


だが六甲は音を飲み込む。

騒ぎは下界まで届かない。


車が山を駆け下りる。


息が整うまで、誰も口を開かなかった。


山麓で車を止める。


澄香が端末を開く。


「封鎖計画、確定。実行日は未定。」


澪香が続ける。


「だが“協力者”の欄に、県庁内部コード。」


沈黙。


彩香が低く言う。


「裏切り者がおる。」


玲奈は夜の山を見上げる。


「静かな銃声は、警告や。」


六甲の頂に小さな灯りが残る。


「向こうは、本気で街を止める気や。」


澄香が言う。


「私たちも、本気で止める。」


澪香が続ける。


「同じ顔でも、影にはならない。」


双子の瞳に迷いはない。


車は再び夜へ溶ける。


六甲は何も語らない。

だが弾痕は残る。


西日本特別諜報班 NST。


影の特命は、山を越え、海へ戻る。


そして次は――

街の中枢へ。

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