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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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白鷺は二度舞う

姫路の夜は、鉄の匂いがする。


広畑の海沿い。

巨大な高炉が赤く脈打ち、炎が夜空を焦がしている。

昼も夜も関係なく動き続ける製鉄所。播州の心臓部だ。


西川彩香は、その光景を車窓から見ていた。


「止めさせへん。」


低く呟く。


今回の任務は姫路再開発説明会。

失職した元知事の側近が、港湾警備再編と広域物流統合計画を語るという。


表向きは経済活性化。

だが裏では港湾管理権限を私的企業へ移す密約が進んでいる。


その先にあるのは、物流掌握。

広畑の製鉄所も例外ではない。


もし港が握られれば、鉄も止まる。

鉄が止まれば、街は止まる。


「会場裏で密会がある。」


玲奈の声が無線に乗る。


迫田姉妹は既に潜入済み。

澄香は受付、澪香は警備補助。

同じ顔が別々の動きをするだけで、監視は歪む。


彩香は正面玄関から入った。

元ヒロインとしての顔を使い、自然に会場へ。


説明会は穏やかだ。

拍手。笑顔。未来の話。


だが裏の会議室では、声のトーンが違う。


「警備権限は段階的に移行する。港湾封鎖時の優先権も含む。」


書類が回る。


その瞬間、澪香が資料を撮影。

澄香が廊下の監視を撹乱する。


「確保完了。」


玲奈が静かに指示を出す。


だが、出口で彩香は立ち止まった。


目の前に立っていたのは、広畑の製鉄所警備幹部。

父と同じ作業服を着た男だった。


「お前……西川の娘か。」


一瞬、空気が止まる。


播州の義理。地元の繋がり。


だが彩香の声は揺れない。


「仕事です。」


男は小さく笑う。


「街を守る仕事なら、俺も同じや。」


それ以上は何も言わない。

道を開ける。


彩香は振り返らず歩き出す。


外に出ると、高炉の炎が空を照らしている。


「資料、解析完了。」


迫田姉妹が報告する。


港湾封鎖シミュレーション。

製鉄所物流ライン停止テスト。

都市麻痺を想定した実験。


玲奈が低く言う。


「白鷺が二度舞う、いうことや。」


姫路城は白鷺城。

表の舞は観光。

裏の舞は利権。


彩香は広畑の炎を見つめた。


父は今も炉前で汗を流しているはずだ。


「鉄は止めさせへん。」


NSTは証拠を掴んだ。

だが黒幕は姿を見せない。


帰路、車は広畑沿岸を走る。


巨大な煙突の赤灯が点滅する。


街は眠らない。

鉄も眠らない。


彩香が静かに言う。


「播州は守る。港も、炉も。」


玲奈は頷く。


「守る側が折れたら終わりや。」


高炉の炎が揺れる。


白鷺は再び舞った。

だがその影は、まだ地面に落ちたままだ。


西日本特別諜報班 NST。


影の特命は、次の港へ続く。

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