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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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影の兵庫、揺るがぬ背中

兵庫の夜は、静かに燃えている。


港、山、田園、ニュータウン。

どの町も表向きは穏やかだ。

だが水面下では、ひとつの計画が進んでいる。


リコールされた元兵庫県知事。

その男が描くクーデター構想は、派手な演説ではなく、

資金、通信、物流――

静かな歯車で回っていた。


北摂で資金が流れ、

播磨で妨害装置が作られ、

港でコンテナが動く。


すべては兵庫の地図の上で繋がる。


その中心にいたのが玲奈だった。


最年長。

県警カラーガード隊員。

背筋の伸びた立ち姿と、静かな統率。


誰よりも前に立ち、

誰よりも後ろ姿で語る人間。


その玲奈が捕えられた。


ポートアイランドの倉庫。

金モールの切れ端。

監禁の痕跡。


コンテナ。

第三国経由。

国交のない権威主義国家。


寸前で止めた。

だが奪還は叶わなかった。


直前で、別のトラックへ。


見失った。


その夜、彩香は眠れなかった。


若干二十一歳。女子大生。

臨時リーダー。


重さは、想像よりはるかに重い。


玲奈はいつも、静かにチームを守っていた。

怒鳴らない。

誇示しない。

ただ、最前線で立ち続けた。


彩香は、その背中に敬意を払っている。


「まだ足りへん。」


自分がその場所に立てているか、

夜ごと問い続ける。


悔しさが、喉を焼く。


あと一歩だった。

あと数十秒、早ければ。


だが時間は戻らない。


NSTは動き続けている。


迫田ツインズは危険な現場へ潜り、

あかりは怒りを制御する術を覚え、

美咲は目立たないまま、核心に触れる。


全員が限界線を歩いている。


そして――

美月とさつき。


毎回、任務の現場に現れる。


港で、酒蔵で、住宅街で。


無邪気な笑顔で、

場違いな明るさで。


子供じみた喧嘩は絶えない。


「ボケやからボケなんや。」


「なんやその理屈!」


北摂のクリームパンで言い争い、

港で明石焼きを叫び、

酒蔵でうんちくを披露する。


だが彩香は分かっている。


美月の爆発力がなければ、

自分はここにいなかった。


戦闘任務で先陣を切るのは美月。

だが本当に最初に敵陣へ切り込むのは、

阿波の快速娘――さつき。


清楚で上品な顔の奥に、

誰よりも速い決断がある。


彩香が戦隊ヒロインプロジェクトへ誘った同級生。


ふたりは光だ。


だからこそ、知られてはならない。


今回の極秘任務。


河内のスピーカー、美月に漏れれば、

元県知事の恐ろしい計画は一気に広がる。


社会が混乱する。


兵庫が揺れる。


守るために、隠す。


それがリーダーの役目。


だが隠すことは、孤独だ。


夜のヒロ室。

灯りは少ない。


彩香は一人、机に肘をつく。


目を閉じると、

父の声が蘇る。


社会人野球の名外野手。

大日本製鉄広畑の俊足巧打。

日の丸を背負った男。


「どんな時でも下を向くな。」


「逆境を楽しめ。」


子どもの頃は意味が分からなかった。


今は分かる。


逆境は、逃げ場がないということ。

だが同時に、

覚悟を試される場所でもある。


彩香は立ち上がる。


兵庫県は、必ず守る。


港も、山も、田園も、住宅街も。


そして。


敬愛する玲奈を、必ず奪還する。


あの人が帰る場所を、

汚させない。


影はまだ消えていない。

クーデター計画は、水面下で進む。


だがNSTは崩れていない。


背中を失っても、

隊列は乱れていない。


夜明け前の兵庫は、冷たい。


だがその冷気の中で、

若きリーダーは静かに立っている。


揺るがない。


影がどれだけ深くても。


兵庫の風は、まだ止まらない。

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