滑走路に消えた赤い灯
海の上に伸びる滑走路は、夜になると一本の光の道になる。
赤い誘導灯が、規則正しく点滅する。
風は潮を含み、低く唸る。
その空港で、CS放送局の旅番組が生中継をしていた。
「今日は海上空港の裏側を、戦隊ヒロイン目線で紹介しまーす!」
美月が満面の笑みでカメラに向かう。
隣にはさつき。
落ち着いた進行役だ。
「滑走路の先まで海、まさに空と海の交差点ですね。」
二人は展望デッキを歩きながら、施設紹介を続ける。
だがNSTが掴んだ情報は違う。
滑走路灯火制御システムへの侵入。
着陸誘導を一時的に狂わせ、航空機を混乱させる計画。
赤い灯を偽装し、別方向へ導く。
黒幕は、例の元県知事。
今回の主人公は、山本あかり。
突撃型。
待つことを知らない。
「制御塔下、南側配線確認。」
彩香の声がイヤーピースに響く。
「単独行動するな。合図待て。」
だがあかりは、もう動いている。
強い海風の中、配線ボックスへ向かう。
そのとき――
「……あれ?」
展望デッキから美月が目を細める。
「あかりぃ~!」
大声。
さつきも手を振る。
「ほんまや、あかりちゃん!」
最悪だ。
あかりは、条件反射で手を振り返す。
満面の笑顔。
彩香の怒号が無線に炸裂する。
「目立つから止めぃ!!」
だが届かない。
あかりは無邪気に二度振る。
「後でなー!」
任務中。
海上空港。
赤い灯の下で手を振る諜報員。
笑うしかない。
だが時間はない。
灯火制御室に不審な作業員がいる。
滑走路に着陸機接近。
赤灯がわずかに点滅パターンを変える。
偽信号。
あかりは制御室へ走る。
強引に扉を開ける。
中で男がキーボードを叩いている。
「止まれ。」
低く言う。
男が振り向く。
工具を投げる。
あかりは受け流し、体当たり。
機材が揺れる。
着陸まで残り二分。
滑走路外では美月がまだ手を振っている。
「なんか忙しそうやな!」
さつきが苦笑する。
「仕事中みたいですね。」
あかりは制御パネルを奪い取る。
偽信号を遮断。
本来の点滅に戻す。
赤い灯が規則正しく揃う。
管制室から確認の声。
「正常復帰。」
着陸機が滑走路に触れる。
白い煙。
歓声ではなく、安堵。
爆発も衝突もない。
滑走路は静かだ。
あかりは男を拘束し、通信。
「終わり。」
彩香の息が荒い。
「ほんま……肝冷えたわ。」
あかりは塔の窓から外を見る。
美月とさつきがまだいる。
「撮影終わったらご飯行こー!」
空気読まない笑顔。
あかりはまた手を振る。
彩香が絶叫する。
「振るな言うとるやろがぁ!」
海風が笑う。
赤い灯が夜を切る。
滑走路は静かに光る。
影の仕事は、また誰にも知られない。
美月はカメラに向かって言う。
「ヒロインは空も守るんやで!」
偶然だが、正しい。
あかりは夜の滑走路を見つめる。
空と海の間。
赤い灯は、道を示す。
誤らせる者がいても、
戻す者がいる。
西日本特別諜報班 NST。
赤い灯は消えない。
影がいる限り。




