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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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黒豆畑に埋もれた暗号

丹波篠山の朝は、静かだ。


霧が低く垂れこめ、黒豆畑がゆっくりと姿を現す。

粒は大きく、艶がある。

この土地の誇りだ。


だがNSTが掴んだ情報は、その誇りの下に埋め込まれていた。


農業用IoT設備の乗っ取り。

自動給水と温度管理システムを通じて、物流データが国外へ送信されている。


一見、ただの農業データ。

だが実際は、県内インフラの座標暗号。


「畑は隠れ蓑やな。」


玲奈の声がイヤーピースに落ちる。


「位置特定済み。北側区画。」


今回の主人公は迫田澪香。


無駄な感情は持ち込まない。

静かに、正確に動く。


黒いコートを脱ぎ、農業スタッフに紛れて畑へ入る。

霧の中、配管の下に小型サーバーの反応。


その時――


「黒豆スイーツ最高ぉぉ!」


聞き覚えのある声。


霧の向こうから、ピンクのマイクを持った美月が現れる。


CS放送のグルメ旅番組。

食レポイベントで来ているらしい。


「この黒豆プリン、罪やわぁ!」


畑を背景にカメラが回る。


澪香は静止する。


最悪のタイミング。


美月が畝を跨ぎ、こちらへ近づく。


「澄香?」


澪香は一瞬だけ目を細める。


「そう。」


淡々と返す。


「どっち?」


「そう。」


それ以上は言わない。


美月は深く考えない。


「何してんの?」


「豆見てる。」


事実だ。


その足元に暗号サーバーが埋まっている。


霧が濃くなる。


澪香はしゃがみ、土を払う。


小型端末。


自動給水制御と一体化。


農業データを装って、港湾座標を暗号送信。


「やっぱりな。」


イヤーピースから彩香。


「美月おるんか。」


「いる。」


「やりにくいな。」


その瞬間、美月が叫ぶ。


「ちょっと待って!この畑、映える!」


カメラマンを引き連れて近づく。


最悪だ。


澪香は端末の配線を外す。


その時、畑の端で男が動く。


管理業者を装った実行犯。


澪香は立ち上がる。


「ここから先は立入禁止。」


低く言う。


男は無言で後退。


だが美月が割り込む。


「え、なんで?撮影やで?」


澪香は視線を逸らさない。


男が逃げる。


澪香は追う。


霧の中を静かに走る。


畑の端、ビニールハウス裏で捕捉。


男を制圧。


音は出さない。


サーバーの回線を切断。


暗号は止まる。


イヤーピースに玲奈。


「完了か。」


「終わった。」


畑へ戻ると、美月が大声で解説している。


「丹波の黒豆はな、粒が違うねん!」


カメラが澪香の方向を向く。


澪香は無表情。


その瞬間、美月が突然方向転換。


「あっちの方が映える!」


カメラを引き連れ、別方向へ。


偶然のかく乱。


そのおかげで制圧の痕跡は映らない。


澪香は小さく息を吐く。


任務は成功。


物流暗号は停止。


丹波の黒豆は守られた。


撮影終了後。


美月が近づく。


「さっきの人、誰?」


「農業関係者。」


「ふーん。」


それ以上は追わない。


黒豆プリンを差し出す。


「食べる?」


澪香は一瞬迷う。


「……少し。」


小さな一口。


甘い。


丹波の空は澄んでいる。


畑は何も知らない。


美月は笑う。


「なあ、澄香?」


「澪香。」


「どっちでもええやん。」


「よくない。」


即答。


夕陽が黒豆畑を赤く染める。


西日本特別諜報班 NST。


暗号は土に還り、

甘い香りだけが残った。

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