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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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17/38

夢の大劇場、双影は舞台袖に消える

宝塚には、特別な空気がある。


川沿いに立つ、あの夢の大劇場。

赤い絨毯、磨き上げられた階段、天井に広がるシャンデリアの光。

幕が上がる瞬間、世界は一度、現実を忘れる。


作者が心から愛してやまない場所だ。

あの空間は、ただの劇場ではない。

人生のすべてを二時間半に凝縮する“夢の装置”だ。


その夜も、客席は満員だった。


レビューの開幕を待つ観客たちの熱。

期待に震える空気。


だがNSTが掴んだ情報は、その夢を破壊するものだった。


舞台装置制御系への不正侵入。

電源と同時に起動する遠隔装置。

停電に紛れた“要人排除”。


事故に見せかけた暗殺。


「舞台を壊させへん。」


澄香が低く言う。


「夢は最後まで美しく。」


澪香が静かに続ける。


迫田ツインズ。

西日本特別諜報班の中でも、最も精密な二人。


双子の動きは、ほぼ同一。

呼吸も歩幅も、無意識に揃う。


この任務は、二人でなければ成立しない。


公演開始三十分前。

二人はドレス姿でロビーを歩く。


観客に紛れる。

上品な微笑み。

完璧な所作。


誰も疑わない。


だがそのイヤーピースには、彩香の声が入る。


「電源室、地下二階。

機械室は舞台下と直結。」


澄香は舞台袖側へ。

澪香は地下へ。


分断。


だが分断ではない。

二人は、常に一つだ。


開演ベルが鳴る。


オーケストラの前奏。

客席が静まり返る。


幕が上がる。


同時に、澪香は地下制御室へ侵入する。


暗い通路。

巨大な電源盤。

通常ではありえない増設端子。


「見つけた。」


一方、舞台袖。


澄香はスタッフ通路を抜ける。

演出スタッフに偽装した男を視界に捉える。


男の腕には、小型送信機。


レビュー第一幕、群舞が始まる。


羽根を背負ったトップスターが階段を降りる。


観客は息を呑む。


その裏で、澪香は制御盤に接続された不審端末を解析。


「トリガー、第一幕終盤。」


澄香は男の背後に立つ。


足音を消す。


舞台袖で激しいダンスが展開される。

足音と音楽が衝撃を隠す。


澄香は男の手首を掴み、送信機を奪う。


無駄な声は出させない。


観客席では歓声が上がる。


同時刻、澪香が端末を書き換える。


遠隔起動を遮断。


「完了。」


舞台上では、大階段レビューが最高潮を迎える。


光の洪水。

きらめく衣装。

夢の頂点。


双子はそれぞれの位置から、その光景を一瞬だけ見る。


(守れた。)


第二幕。


何事もなかったように物語は進む。


敵は拘束済み。

証拠は確保。


舞台裏で一切の混乱は起こらない。


終演。


観客は総立ち。


拍手が波のように押し寄せる。


カーテンコール。


スターたちが笑顔で手を振る。


夢の大劇場は、今夜も完全だった。


ロビーに戻った澄香と澪香は、静かに並ぶ。


同じ角度で、同じ微笑み。


「シンクロ率、100%。」


澪香が小さく言う。


「当然や。」


澄香は涼しく答える。


外に出ると、宝塚の夜風が頬を撫でる。


川面に劇場の灯りが映る。


あの光は、守られた光だ。


NSTは影。

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