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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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笑う影、騒ぐ河内

戦隊ヒロインプロジェクトは、表の顔だ。

華やかな制服、きらびやかなイベント、拍手と歓声。

だがその裏で、存在すら知られてはならない影が動いている。


西日本特別諜報班――NST。


その名を知るのは、波田顧問とごく一部のフロントだけ。

遥室長ですら任務内容は知らない。

ただ「特命で動いている」とだけ聞かされている。


その“影”に、うっかり足を突っ込みかける女がいた。


赤嶺美月。


河内のスピーカー。

戦隊ヒロインきってのムードメーカー。

そしてこの物語では、立派なコミックリリーフである。


「なあ彩香。」


ヒロ室の休憩スペース。

彩香は資料に目を落としたまま、無言。


「カレーな、甘口か中辛かで世界は分かれる思うねん。」


いつもなら即座に噛みつく。

“甘口なんぞ子供やろが”と、播州弁が飛ぶ。


だが今日は違った。


「……」


無反応。


「なにその顔。最近ずっと険しいで?

甘口派と絶縁でもしたん?」


彩香はゆっくり顔を上げる。


「あんたには関係ない。」


低く、静かに。

そして恐ろしく冷たい播州弁。


「……え、なに今の。怖。」


美月は背筋をぞくりとさせる。


いつもヤクザより恐ろしいと評される彩香の本気モード。

だが今回は、怒りというより“隠している”顔だった。


「絶対なんかあるやろ……」


河内の勘が働く。


数日後。


ヒロ室のデスクで資料を探していた美月は、偶然一枚のメモを見つける。


そこには小さく――


“NST”


「NST……?」


声に出した瞬間、空気が凍った。


真帆が固まり、遥室長が書類を落とし、彩香の顔色が一瞬で抜ける。


「え?なにその反応。NSTってなんや?」


沈黙。


三人とも、露骨に目を逸らす。


「……あぁ、あれやろ?」


美月は顎に手を当てる。


「新潟のテレビ局やろ?NSTって。

新潟でタイアップイベントやるんやな?」


真帆と遥室長が同時に小さく息を吐く。


彩香は即座に乗る。


「聞いてへん。知らん。

さつきが行くんやろ。」


「あ、そうなん?」


美月は納得したように頷く。


「今度のイベント新潟行くん?ええなぁ~!」


そのまま廊下へ飛び出す。


「さつきぃぃ!」


阿波のスピードスター・三好さつきがちょうど通りかかる。


「なに?」


「今度新潟でイベントやるん?

ええなぁ~ウチも行きたいわ!」


さつきは一瞬、完全に停止する。


「……は?」


「NSTやろ?」


「……?」


さつきは三秒ほど考え、そして笑顔でかわす。


「さあな。知らんけど。」


「えー!ずるいわー!」


美月はぶつぶつ言いながら去っていく。


残されたさつきは小声で呟く。


「NSTてなんなん……?」


その頃、ヒロ室内。


彩香は深く息を吐く。


「……あの河内のスピーカーに知られたら終わりや。」


玲奈は壁にもたれ、静かに言う。


「いずれは気づく。

あの子、勘が鋭い。」


迫田ツインズは同時に頷く。


「だから普段通りや。」


彩香は自分に言い聞かせる。


険しい顔は逆効果。

怪しさは勘の良い人間を刺激する。


「いつも通り、甘口で揉める。」


「はいはい。」


数分後。


美月が戻ってくる。


「なあ彩香、やっぱカレーは甘口やんな?」


彩香は即答する。


「はぁ?中辛やろが。

甘口なんぞ砂糖水や。」


「なんやてぇぇぇ!」


いつもの言い合いが始まる。


遥室長は胸をなで下ろす。


影は影のままでいい。


NSTは、存在しない部隊。


だがその影を嗅ぎ取ろうとする嗅覚を持つ女がいる。


河内のスピーカー。


彩香は横目で美月を見る。


(……いつかバレる)


だがその時までは、笑っていなければならない。


戦隊ヒロインは光。

NSTは影。


光が騒ぎ、影が守る。


ヒロ室の中で、今日もカレー論争が響く。


その裏で、誰にも知られぬ任務が静かに進んでいることを、

河内のスピーカーだけが、なんとなく感じている。

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