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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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零時、海峡は光を失うか

明石海峡の夜は、静かに脈打っている。


巨大な橋が、海を跨いで光の帯を描く。

本州と淡路を結ぶ動脈。

止まれば、島は孤立する。


「零時に制御信号が入る。」


迫田澄香の声が冷たい。


「橋上交通、強制停止。二十分。」


澪香が続ける。


「混乱を誘発。物流、観光、救急搬送に影響。」


玲奈が短く言う。


「実験やな。」


敵は“事故”に見せかける。

都市型テロではない。

制御エラーという名の侵食。


「制御室は島側。」


彩香が地図を睨む。


「警備は最小限。だから逆に怪しい。」


零時まで、二十五分。


「侵入は三名で――」


玲奈の指示を、あかりは最後まで聞いていなかった。


「うち、先行きます!」


無線がざわつく。


「待て!」


彩香の声が鋭い。


だが山本あかりは、もう走っていた。


島側の制御センター。

白いコンクリートの箱。

海風が強い。


フェンスをよじ登り、屋外配電盤へ。


「侵入確認。」


双子の声が重なる。


「戻れ。」


玲奈の声は低い。


「まだ指示してへん。」


「間に合わん気がするんです!」


あかりの声は真っ直ぐだ。


制御室内部。


モニターに橋の映像。

交通量は多い。


カウントダウンは既に始まっている。


零時まで、十分。


黒い端末が制御盤に接続されている。


「遠隔同期型。」


澪香が解析する。


「解除には認証キーが必要。」


「キーは?」


「不明。」


あかりは端末の裏蓋を外す。


配線が複雑に絡む。


「切るな。」


玲奈が言う。


「切ったら即停止や。」


「あの……逃がす方法あります。」


一瞬、沈黙。


「なんやて?」


「あの、うちの父ちゃん、石油コンビナートで言うてました。

 止めるんやなくて、流すんやって。」


彩香が息を呑む。


「説明しろ。」


「主電源を切るんやなくて、負荷を分散させるんです。」


零時まで五分。


外では警備車両が接近。


彩香が迎撃に向かう。


「三分稼ぐ。」


短い言葉。


あかりは制御盤の配線を組み替える。


汗が額を伝う。


「二分。」


双子のカウント。


「あかり。」


玲奈の声。


「今からでも戻れる。」


一瞬、息を止める。


「戻りません。」


零時。


橋のライトが一瞬だけ揺れる。


だが――消えない。


交通は止まらない。


海峡は光を保ったまま。


同時に、端末が焼ける。

煙が上がる。


「解除成功。」


澄香。


「遠隔接続、切断。」


澪香。


ドアが破られる。


黒スーツの男。


銃口が向く。


その瞬間、彩香が背後から蹴り飛ばす。


「言うこと聞けや!」


あかりは苦笑する。


「すみません。」


撤退。


車は橋を渡る。


淡路島の灯りが遠ざかる。


車内は静かだ。


そして――


彩香が振り向く。


「なんで単独で動いた。」


低い声。


あかりは縮こまる。


「零時、間に合わへん思て……」


「判断は上がする。」


「でも、止まりませんでしたよね。」


沈黙。


玲奈が言う。


「結果は出した。

 だが次やったら、止める。」


「はい……」


叱責は厳しい。

だが彩香の目は、ほんの少しだけ柔らかい。


橋を渡りきる。


背後で海峡が光る。


島の住民は何も知らない。


釣り人も、観光客も、夜勤帰りのトラック運転手も。


零時に落ちるはずだった闇は、来なかった。


理由を知る者は、いない。


それでいい。


西日本特別諜報班 NST。


存在しない部隊は、また一つ“時間”を守った。


淡路島の平和は続く。


だが海は、何も語らない。


零時は過ぎた。


次の闇は、どこから来る。


あかりは窓の外を見つめる。


叱られても、笑う。


「うち、もっと上手くやります。」


誰も答えない。


だが橋の光は、揺るがない。


影の任務は、今夜も終わった。

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