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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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六甲ブラインド ― 同じ顔が二度笑う

六甲の夜は、神戸の灯りを見下ろしている。


山上の高級別荘地。

表札は英語、門扉は自動、監視カメラは無表情。


今夜は“経営戦略勉強会”。

実態は、港湾管理権限を私企業に集約する密約会議。


「参加者、十二名。全員、再開発絡み。」


岡本玲奈の声がイヤーピースに落ちる。


「潜入開始。」


主役は、迫田澄香と澪香。


同じ顔。

同じ声。

同じ身長。

違うのは、わずかな目の光だけ。


澄香は受付係としてホールに立つ。

澪香は別荘裏口の警備補助。


双子が同時に別方向へ歩き出す。


「心拍安定。」


「呼吸安定。」


無線越しにシンクロする声。


会場内。


澄香は柔らかな笑顔で名刺を受け取る。

品のある美人秘書という装い。


「本日はお足元の悪い中……」


その声に、参加者の男たちは一瞬気を抜く。


一方、裏口。


澪香は無表情でIDを確認。

「どうぞ。」


同じ顔なのに、雰囲気が違う。


林道に待機する彩香が無線で笑う。


「ほんま、便利な顔やな。」


「便利、という表現は不適切。」


澄香が冷静に返す。


「でも否定はしません。」


澪香も続ける。


その頃、地下会議室ではスライドが映る。


“港湾一元管理構想”


湾岸、空港、物流、警備を一本化する計画。


「兵庫はモデルケースだ。」


重役の声。


「成功すれば、西日本全域へ。」


澄香は静かに録画開始。


だが、問題が起きる。


顔認証センサー。


参加者の一人が端末を操作する。


「受付にいた女性と、警備にいた女性……同一人物?」


警報音は鳴らない。

だが視線が鋭くなる。


「澪香、位置調整。」


「了解。」


二人は同時に動く。


澄香がグラスを落とす。


カラン、と音が響く。


全員の視線がそちらへ。


その瞬間、澪香が正面玄関に現れる。


同じ顔。


参加者の一人が呟く。


「……双子か?」


「さあ?」


二人は同時に微笑む。


完璧なシンクロ。


空気が一瞬、緩む。


だが警備主任は笑わない。


「身分証を確認させていただきます。」


玲奈の声が入る。


「撤収判断、三十秒。」


澄香は資料データを吸い上げる。

澪香は監視カメラを三秒だけループさせる。


「今。」


二人は同時に動く。


階段を駆け上がり、廊下で合流。


背中合わせ。


「三秒で外。」


「二秒。」


足音が迫る。


彩香が林道から発煙筒を投げ込む。

白煙が広がる。


「派手やな。」


「舞台演出や。」


双子は同時に跳ぶ。


柵を越え、林道へ。


その瞬間、乾いた銃声。


ガードレールに弾痕。


「撃ってきたな。」


澪香が低く言う。


「本気ですね。」


澄香が応じる。


だが二人の呼吸は乱れない。


車へ滑り込み、発進。


山を下りながら、澄香が言う。


「港湾封鎖、実行日未定。ただし“内部協力者あり”。」


「県庁コード一致。」


玲奈が短く言う。


「六甲は目くらましやな。」


彩香がバックミラーを見る。


「それでも、掴んだ。」


車内に一瞬の沈黙。


あかりが小さく呟く。


「双子、かっこよかったです……」


「感想は不要。」


澄香。


「でも事実です。」


澪香。


完璧なシンクロで言う。


全員が一瞬だけ笑う。


六甲の頂は遠ざかる。


神戸の夜景が広がる。


同じ顔が二つ、闇に溶ける。


「どちらが本物だ?」


と問われれば、答えは簡単だ。


どちらも本物。


西日本特別諜報班 NST。


光を惑わせる影。


六甲ブラインド。


同じ顔が二度笑った夜、

街はまた一つ守られた。

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