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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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播州の炎、神戸の氷

兵庫県の大阪湾岸は、日本でも屈指の産業地帯だ。


神戸港から東へ伸びる湾岸地帯。

尼崎、西宮、芦屋、そして神戸の人工島群。

巨大なコンビナート、倉庫群、埠頭、物流基地が並び、夜になれば工場の灯りが海に映る。


日本の経済を支える海の動脈。


そして同時に、

闇の物流も流れ込む場所でもある。


NSTが追っているのも、その影だった。


——


大阪湾を見渡す高架道路の上。

岡本玲奈は双眼鏡を覗いていた。


夜風が強い。


長い黒髪が揺れる。


静かなるボス。


無線が入る。


「玲奈さん、倉庫前到着しました」


西川彩香だった。


播州の烈火。

NSTの現場リーダー。


玲奈は落ち着いた声で言う。


「彩香」


神戸訛りの関西弁。

やわらかいが、命令だった。


「まだ動くな」


「……はい」


彩香は短く答える。


玲奈は続ける。


「相手の人数、まだ確定してへん」


双眼鏡の向こうでは、

倉庫に車が出入りしている。


「様子見や」


彩香は少し間を置いた。


「玲奈さん」


「なんや」


「今なら行けます」


玲奈は即答しない。


数秒の沈黙。


「まだや」


彩香の声が少し強くなる。


「でも——」


「彩香」


玲奈の声は静かだった。


それだけで空気が変わる。


「焦るな」


彩香は歯を食いしばった。


「……はい」


だが数分後。


状況が動いた。


黒鷹の車両が動き出す。


彩香の声が入る。


「玲奈さん、逃げます!」


玲奈は冷静だった。


「追うな」


「え?」


彩香は思わず言った。


「今止めな逃げます!」


「逃げさせ」


短い言葉。


彩香は思わず声を荒げる。


「玲奈さん、それは——!」


播州弁が強くなる。


「ここで捕まえなあかんやないですか!」


玲奈は静かに言った。


「彩香」


沈黙。


「落ち着き」


彩香は息を荒くしていた。


玲奈は双眼鏡を下ろす。


「大きいのは後ろにおる」


その一言で、

彩香の頭が冷える。


玲奈は続ける。


「運び屋捕まえても意味ない」


「……」


「黒鷹の幹部が動く」


彩香は目を閉じた。


深呼吸。


「……すみません」


玲奈は少し笑う。


「ええ」


そして言った。


「それが彩香のええとこや」


彩香は苦笑する。


「短気なんです」


玲奈は答えた。


「播州の血やな」


少し間を置いて言う。


「でもな」


玲奈の声は柔らかかった。


「炎は必要や」


彩香は静かに聞く。


玲奈は続ける。


「うちは氷や」


湾岸の夜景を見ながら言う。


「氷だけやったら動かへん」


彩香は笑った。


「炎だけやったら燃えすぎます」


「せや」


二人は同時に言った。


「ちょうどええ」


その瞬間、無線が入る。


澪香の声だった。


「車両移動確認。第二倉庫です」


玲奈が言う。


「彩香」


「はい」


「今や」


彩香の声が戻る。


「了解!」


NSTが動く。


短い突入。


完璧な制圧。


——


作戦後。


大阪湾岸の夜景が広がる。


彩香は海を見ていた。


玲奈が横に立つ。


彩香は言う。


「さっきはすみません」


玲奈は首を振る。


「ええ」


少し笑う。


「彩香が熱いのは知っとる」


彩香は照れくさそうに笑った。


「玲奈さんが冷静やから、うちは暴れられるんです」


玲奈は海を見た。


工場の灯りが揺れる。


播州の炎。


神戸の氷。


正反対の二人。


だが戦場では、

その二つが一つになる。


それがNSTの強さだった。

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