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花筏さんはビタースウィート  作者: あま


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第6話

 入学式から2日後の学校、休み時間、私は机に突っ伏していた。

 「ひとみん、大丈夫?」

 昨日、優香と遊びに行って、初めて買った可愛らしい洋服。

 まさかこんな時に母が帰って来ていて没収されてしまうなんて。

「いや…全然…大丈夫だよ…」

 心配させないように気を使うけれど、どうしても隠しきれない。

 少し気まずい空気が流れた後、優香が突然、あ、という声を出して、自分の席に戻って行く。

 机の中からゴソゴソと何かを取り出すと、小走りで戻ってきた。

「ひとみん、これ!」

 優香に手渡されたのは、ラッピングされた小さな袋。

「開けてみてもいい?」

「もちろん!」

 私は袋を閉じているリボンに手をかける。

 袋に指を入れて、中にあるものを取り出す。

「これは…?」

「キーホルダー!」

 取り出したのは、可愛らしい兎のキーホルダーだった。

「どう!?」

 目をキラキラと輝かせて、感想を求めてくる優香。

 白黒で、少しおしゃれなデザインだが、兎のつぶらな瞳や可愛らしい口のおかげで、確かな愛らしさも存在している。

「すごい可愛いよ、ありがとう優香」

 優香の行動、言動は、いつも私を元気づけてくれる。

 すると優香が鼻を鳴らしながら、少し離れた彼女の席に指をさした。

 目を凝らして見てみると、優香にもらったキーホルダーの、別種類と思われる猫のキーホルダーが目に入った。

 スクールバッグにつけているみたいだ。

「お揃いだね…!」

 文末にハートマークをつけたくなるような、妖しい声と表情で、優香が笑う。

 そして私は、今度こそ誰にも奪われない宝物にしようと決意するのであった。


 お昼休み、私は優香と校舎裏の庭にいた。

 何やら見せたい“子“がいるらしい。

「どこかな〜」

 優香がキョロキョロと周りを見渡している。

「あ!いた!」

 優香が屈んで何かを抱きしめる。

 そのまま振り返って、それを見せてきた。

 抱きしめられていたのは、可愛らしい猫だった。

「この子、クー君っていうの!誰に対してもクールで、可愛いけどかっこいいんだよ!」

 色々と気になることがあるので聞いてみる。

「その子、野良猫なの?」

「たぶん!」

「餌はあなたがあげてるの?」

「ううん、誰かがあげてくれてるみたい」

 気になることはまだあるけど、それより言いたいことがあった。

「優香…その子に嫌われてない…?」

 そう、抱えられている猫はすごく不服そうな顔をしながら手足をブンブンと振っていた。

「もう3年の付き合いなんだけどねえ…好きになってよ〜…」

 そう言って顔を近づける優香は、思いっきり猫パンチを食らっていた。

 尻もちをついた優香、その衝撃で解放されたクー君が走り去っていく。

 少し離れた木陰に隠れてしまった。

「いててて…今日も良い猫パンチくらっちゃったな〜」

 立ち上がって、お尻を手で払う優香。

「この子のこと、私含めて数人しか知らないんだけど、誰にも甘えてくれないんだよねぇ。だからクールなクー君なんだけど」

 私は優香を睨んでいるクー君をじっと見ていた。

「ねえ優香、私も触ってみても良い?」

 特に根拠はないが、私は昔から動物に好かれる体質で、もしかしたら、と思って聞いてみた。

「もちろん良いけど、クー君は厳しいぞぉ」

 私はゆっくりとクー君との距離を縮める。

 そして目の前で座って、ゆっくりと手を伸ばし、優しく顎の下を触ってみる。

「う、うそ…」

 優香が狼狽の声をあげている。

 ゴロゴロゴロ、クー君は目を閉じてされるがままになっていた。

「ひとみん何それ魔法!?私には触った瞬間激おこなクセに…」

 優香は露骨に驚いていた。

「昔犬を飼ってたから、動物の相手には慣れているの」

 小さな頃、親が仕事でいなくて寂しい時も、あの子と一緒にいたら辛くなかった。

 私はついに抱き抱えることさえ成功し、優香は目を見開いて驚いていた。

「ひとみん、そのままだよ…!」

 優香が忍足で私の前へ来た。

 そして私に抱えられているクー君の頭を優しく撫でようとする。

 その瞬間、目を瞑ったままのクー君が、気配を読んで優香の手をパンチした。

「なんで〜!!!」

 結局クー君には相手にしてもらえなかった優香は、後ろから私に抱きついていた。

 前にはクー君、後ろには優香。

 なんだかお母さんになったみたいだった。


 そしてこのクー君が、私たちの友人事情(?)に大波乱を巻き寄せることになるのだった。

 

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