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花筏さんはビタースウィート  作者: あま


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第4話

「大好きだから」


 それを伝えたと同時に、チャイムが鳴り響く、私は微笑みながら軽く手を振り、自分の席に戻る。

 その時の優香は、なんとも言えないような照れた顔をしていた。


 それから少しして担任の山田先生がやってくる。

「みなさん、おはようございます!改めて、担任の山田美生です。趣味は映画鑑賞、好きな食べ物はチョコケーキです。どうぞよろしくお願いします!」

 山田先生、若くて元気がよく、人当たりが良さそうな先生だ。

「1時間目は自己紹介を行います!休み時間に準備をしておいてください」

 ホームルームが終わり、クラスメイトの喋り声が聞こえ始める。

 私はすぐに立ち上がり、優香の机に歩き出す。

 優香…そう名前を呼ぼうとした時だった。

 行き先が被る、一人の女性。

 山田先生だった。

「優香ちゃん、大丈夫そう?いつでも相談していいからね」

 そんな言葉を優香に投げかける山田先生。

「全然大丈夫です!楽しくやっていけそうです!」

 私には無理やりに見える笑顔を作った優香はそう言う。

「それならいいけど…」

 そう言うと、山田先生は去っていった。


 私は少ししょんぼりとした優香の肩に、後ろからそっと手を置く。

 それに気づいた優香が、また笑顔を必死に作る。

 それを見て、何も事情を知らないはずなのに、私は少し胸が痛くなった。

 …何か、優香を元気づけたいけれど、私はどうしてあげれば良いか分からなかった。

 それもそうだ、昔から人付き合いなんて、空気を読んでついていく事しかできなかった。

 必死に過去の人付き合いを思い出す。

 …そういえば。


「優香、もしよかったら今日、どこか遊びに行かない?」

 中学生の頃、同じクラスだった女の子が、親睦を深めようと日帰り旅行を提案してきたことを思い出していた。

 それに私はノコノコとついていったんだっけ。

「…!行く!絶対行く!」

 良かった、元気な優香だ。

「どこか行きたいところはある?」

「う〜んそうだなあ」

 可愛らしく指で口元をおさえている。

「文月町に大きなショッピングモールあるよね!そこ行きたい!」

「うんうん、放課後にそのまま行く?」

「もちろん!だって…」

 突然優香が小声で言う。

「制服デートって感じで青春じゃん…!」

 デートって…まあ優香が元気になってくれるならいいや。


 話が盛り上がっていると、1時間目が始まる寸前になっていた。

 優香に小さく手を振り、少し急いで席についた。

 チャイムの響きと共に、いつの間にか教卓の後ろに立っていた山田先生が話し出す。

「では、出席番号順に自己紹介をお願いします!」

 1番の子が席を立ち、皆に語り始める。

 昨日、そしてさっき話しかけてきた子だった。

新山仁子あらやまにこです!出身中学校は…」

 そんなテンプレートのような自己紹介を淡々と聞いていると、私の番がやって来た。

 

 私は前の番の子が座ったのを確認してから、私はゆっくりと立ち上がる。

「花筏ひとみです、どうぞよろしく。出身中学は白谷中学で」

 白谷中学、いつの間にかやることにされていた中学受験に受かって入学した、国内でもトップクラスの上位校である。

 そんな校名を聞いたみんなは、驚きを隠せていなかった。特に優香は。

「趣味は読書です。ぜひ仲良くしてください」

 読書って…自分で言うのも何だけど可愛げがない。

 自己紹介を終えた私は、席に座る。

 それから少しして、優香の番がやってきた。

 

 優香が席を立つ。

 薄々と気づいていたが、優香はこのクラスではダントツで背が低かった。

「雅優香です!出身中学はここの中学で、趣味はお菓子作りです!よろしくお願いします!」

 可愛い、そんな感想しか私からは出なかった。

 そしてみんなもそう感じているはず。

 と、思ったのだが。

 クラスの雰囲気はどこかしーんとしていて、気まずさを孕んでいた。

 時が止まるような空気感を壊したのは、山田先生だった。

「次いいよ!」

 その言葉を皮切りに、元の雰囲気に戻っていった。

 一体何が起きているのだろう。

 私がそれを知るのは、まだ少し先の話だった。


 自己紹介が終わると、私の席に数人が集まってきた。

「ひとみちゃん、白谷中学って凄すぎ!今度英語教えて!」

 今回も新山さんが先陣を切ってきた。

「もちろん、いつでも大丈夫だよ」

 そう返事してあげると、新山さんは体を揺らしながら喜んでいた。

 すると今度は、別の女子が話しかけてきた。

「いや〜ほんとにひとみさん、“かっこいいし“頭もいいとかやばいんだけど〜」

 かっこいい…その言葉に心がしゅんとする。

 そして、同じ子が私の顔を覗き込むように、こう提案してきた。

「ねえ、うちらもう友達だし、今日どっか遊びに行かね?」

 私は勝手に友達にされたことに困惑を覚える。

 しかし、そんな感情より大切なことがある。

 今日は、優香と遊ぶ予定がある。

 それを何となく伝えようとした時。

「今日はひとみちゃん、予定あるから無理だよ!」

 新山さんが助けてくれた。優しい。

 そんな会話をしていると、本日何度目かのチャイムが鳴った。

 バッグから数学の用意を取り出し、机に広げる。

 その間に、集まってきていた子たちは自分の席に帰っていった。


 最初の授業ということで、今日の時間割の数学、歴史、地理の授業はオリエンテーションのみだった。

 先生の自己紹介を聞いて、軽くこれからの予定を説明される。

 少し退屈な時間だったが、この後に優香と遊びに行くことを考えたら、杞憂な時間はすぐに過ぎた。

 今週は新学年ということで、午前授業のみだった。

 4時間目が終わると、私は荷物をまとめ、優香のところへいった。

 そして「歴史の先生は〜だったね」とか、他愛の無い話をして玄関に向かう。

 昨日は別々の帰り道へ進んだ私たちだったけれど、今日は優香も文月町へ向かう。


 青春制服デート、すごく楽しみだ。

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