第2話
“…し、全部、全部、すっごく可愛いんだから!“
目を開けると、いつもの私の部屋だった。
昨日、優香ちゃんに言ってもらった言葉、あまりの衝撃に夢にまでみてしまったようだ。
あんなに可愛い子が、私なんかに。
やっぱりヘンだよ…
パジャマから制服に着替えている時、ずっとあの子のことを考えてしまった。
“あたし、友達がいなくて“
あの時はとにかく、優香ちゃんのことを受け入れようと思っちゃったから、勝手に優香ちゃんのことをわかったつもりで流してしまった。
今になって後悔が押し寄せてくる。
着替えを終え、髪を整える前に軽く朝食を準備する。
両親は仕事でしばらく帰ってきてないし、妹はいるけれど、まだ起きていないようで、家内は静寂に包まれていた。
紅茶を淹れ、トーストを焼いて、庭の植物をぼーっとみながら食事を始める。
その間も、昨日の出来事について色々と思考を巡らせていたけれど、やはり褒められた喜びに押しつぶされ、肝心なことを理解していない気がする。
食事を終え、髪を整え始める。
その時、足音がしたと思い振り返ってみると、サラサラとした黒髪の少女がこちらを覗き込んでいた。
彼女の名前は花筏哀、私の妹で、中学2年生だ。
くりくりとした目に、小柄な身体、私とは別のタイプですごく可愛い。
「お姉ちゃん、おはよお。ご飯作ってえ」
寝起きだからかぽわぽわとしている。
「はいはい、ちょっと待ってね」
私は急いで毛先を整え、再び食事の準備をした。
学校の支度を一通り終えたので、哀がトーストを頬張る目の前に座った。
「今日は学校行くの?」
私は聞いてみる。
そう、この子は謂わゆる不登校だ。
「う〜ん、今日は体育があるから行きたくない…」
「そっか」
哀にも色々と事情がある、家柄のこともあるだろうし、学校でのことは表面しか知らないけど、できる限りの理解をしてあげたい。
いつもはそう思うのだけれど、今日は何故か違った。
「哀は…どうしたいの?」
哀は目を丸くしていた。
それはそうだ、いつもはうんうん、と話を聞くだけの私が、深掘りしてきたんだから。
「ええ…?私は…えっと…」
哀が驚きと不安からか、震えた声を発している。
私は申し訳なくなってしまい、訂正を入れた。
「ううん、ゆっくりでいいからね」
少しでも安心させようと、微笑みながらそう言う。
哀は、無言でうんうんと頷いた。
そんな話をしていると、いつの間にか家を出る時間になっていた。
「じゃあ、お姉ちゃん行ってくるね」
そう言って、私は荷物を持ち、玄関の戸を開けた。
今日はいつもよりも足取りが軽かった。




