表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花筏さんはビタースウィート  作者: あま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/17

第12話

「ひとみんこんばんは〜!」

「優香、こんばんは」

「今ひま?」

「暇だけど、どうかしたの?」


 連絡先を交換した私たちは、早速その日の夜に会話をしていた。

「実は明後日提出の宿題終わってなくて…わからないから教えてほしいの!」

「科学のやつ?」

「そう!」

「チャットだと教えにくいから、電話でもいい?」

「もちろん!」

 そして、電話をかけることになったのだけど、普通の通話ボタンの隣にもう1つボタンがあることに気がついた。

 ちょっとした悪戯のつもりで、そのボタンを押してみる。

 プルルル、プルルル、2コールで優香は応答した。

 いつもの元気な優香が出る、のではなく、驚きを隠せない優香が出た。

「うぇぇえ!?」

「あ、ごめん、気づかなかった?」

 私は画面を凝視する、その画面に映るのは、パジャマ姿でベッドに横たわる優香、しかもすごく顔がちかい。

 そう、私はビデオ通話をかけたのだ。

「びっくりだよ〜…お風呂上がりで色々やばいし!」

 その言葉は、恐らくいつも整えてる髪が整えられていないこととか、メイクをしていないことを指しているのだろう。

 だけど、そんな優香も新鮮で可愛い。

「私もだよ」

 実は私も優香と同じようななりをしていた。

「いやいやいや!ひとみんはそもそものスペックが私とは違うんだから!」

 そんなこともないと思うんだけど…。

「優香は本当に可愛んだから、もっと自信持っていいんだよ?」

 あの時のショッピングモールで言われた言葉、そっくりそのまま返してみた。

「あー!ひとみんは本当に!」

 頭を抑えて狼狽の声をあげる優香。

「それで、宿題をするんじゃなかったの?」

「そうだった!」

 むくっとベッドから立ち上がって、机に座り、スマホの位置を調節してくれた。

 これなら宿題が見える、優香の顔も。

「まず問1!これ計算がぜんっぜんわかんない〜!」

 私は自分の提出する宿題を確認する。

 (1)密度1.2g/㎤の溶液100㎤の質量は何gか。

「これは簡単だよ、密度と体積をかければいいの」

「つまり1.2かける100でいいの?」

「うん」

「なんだ簡単じゃん!」

 優香、基礎中の基礎も理解していない…?

「じゃあ問2!」

 えっと、次の問題。

 密度1.1g/㎤、質量パーセント濃度10%水溶液Aが…

「これはね、まず…」

 この問題は少しややこしくて、優香が理解してくれるまで20分くらいかかった。

 時間は22時、私がいつも寝てる時間だ。

「あと8問…何時間かかるのこれ…」

 優香が絶望を浮かべる。

 そこから3問解いたくらいだった、時間は23時を過ぎて、私の体は限界を迎えていた。

 眠い…。

「…ひとみん?」

 優香が何か言っていたけれど、私は反応できるほど意識が残っていなかった。

 自然と瞳が閉じる。


 次に目を開けた時、それはカーテンから朝陽の光が差し込むような時だった。

「…ん…優香…」

 目が覚めて最初に頭に浮かんだのは、優香とのビデオ通話のこと。

 ゆっくりとスマホに視線をやる。

 充電が残り少なくなりながらも、驚くべきことにまだビデオ通話が繋がっていた。

 しかも耳を澄ますと何か聞こえてくる。

「すぅぅう…」

 優香の寝息と思われる。

 角度的に寝顔が見れないのが少し残念だった。

 これ、通話切った方がいいのかな…。

 そう思っていたら、ちょうどそのタイミングで私のスマホの充電が切れてしまった。

 がっかりとしたので、私はそのまま二度寝をした。

 その後、昨日は少しだけ遅かったから、いつもの時間に起きられず、妹の朝食を準備できず、ひもじい思いをさせてしまった。


――――――


 月曜日、朝早くに登校し、一番乗りだと思ったのだけれど、先客がいた。

 金髪ポニーテールの美少女。

「日向?」

 それは別クラスの日向だった。

「よっ!」

 朝から元気な日向、なんでうちのクラスにいるんだろう。

「どうしたの?」

 単刀直入に聞くと、ニヤニヤと悪い顔をする日向。

 そして手招きをされたので、日向の目の前に立つ。

 日向が無言でスマホの画面を見せてきた。

「…ん!?」

 思わず声が大きくなる。

 なぜなら、その画面に映っていたのは。

「わ、私の寝顔…」

 寝落ちして優香に撮られて、それを日向に流された…?

「なんでそんなの持ってるの…?」

 たまらず質問する。

「昨日優香とSNSで話してたら、あいつ間違えてこの画像送ってきたんだ」

 笑いを堪える日向。

 優香、絶対送ってはいけない人に送ってるよ。

「絶対に他に流さないでよね…」

 流石に了承してくれると思ったのだけど。

「どうしようかな〜?これは高く売れるぞ」

 私の寝顔で商売しようとしてる?

 日向に弱みを握られたのは確実なようだ…。

「でも寝落ち通話って…“恋人“みたいなことするな!」

 爆笑しながら煽ってくる日向。

 だけど、優香と恋人…悪く思えない。

 否定できずにいたのがよくなかった。

「…なんで満更じゃなさそうなんだよ」

 その言葉に、私はさらに顔を赤らめてしまった。

 否定しなくちゃ、そう思うけど、私は嘘が苦手だ。

「…」

 ついにあの日向が黙り込んでしまった。

 本当に弁解しなくちゃまずいので、私はどうにか口を動かす。

「い、いや別にっ!」

 人生一焦った喋り方だったと思う。

 私の全力の釈明に返された反応は、思ったのとは違うものだった。

 

「それ、別にいいんじゃね?てか、よくね?」

 

 さっきまで爆笑してたのに、急に真面目な顔で言ってきた。

「え?」

 私は目が点になる。

 それに対し、その言葉の意味を説明してくれる日向。

「だって、お前は優香のこと護るんだろ。なら恋人関係ってのも悪くないと思うんだ」

 つまり、映画とかでよくある、恋するヒロインを命懸けで護る主人公みたいな関係を、アリだと言ってるようだ。

 ここまで肯定されると、否定するのが申し訳なくなってきた。

 そして、ついに言ってしまった。


「…そうなの、私、優香のことが好きみたい」


 自分の心の中で留めておいた気持ちを、ついに口外してしまった。

 そのカミングアウトに、落ち着いた声で言葉を返す日向。

「衝撃の事実だけど、ま、変なこともでもないか」

 …暖かい。

「日向…!」

 私はいつもの優香へのノリで、つい抱きつこうとしてしまう。

 でも運動神経の良い日向は、私のお腹を抑えて抱きつかせてくれなかった。

「おい恋する優香がいるのにいきなり浮気か?」

 あ、確かに、女の子に恋するならそういうことも気にした方がいいのかな…。

 私は体勢を立て直して自立する。

「ごめん」

「まったく…」

 日向がコホン、と喉を鳴らす。

「うちはひとみの恋愛、応援するよ」

 日向、最初は本当に怖かったけど、今は信頼をおける大親友だ。

「じゃ、そろそろクーに飯をやりに行くから、またな」

「色々とありがとうね」

 そう言って私たちは別れた。

 その時の私は、すごくすっきりとしていた。


 しばらくすると、クラスメイトがクラスにやってきた。

 その中には優香の姿も。

 ついさっきあんなことがあったから、少し照れくさいけれど、私は優香の元に行く。

「優香、おはよう」

「ひとみんおはよ〜!」

 今日もニコニコで愛くるしい。

「あ!ひとみんこれ見て!」

 優香が通学バッグからファイルを取り出し、その中から1枚の紙を抜く。

 そこに並ぶのは10問の科学の問題、そしてその解答はしっかりと埋まっている。

「へへん!ちゃんと終わらせましたよ!」

「すごいじゃない」

 ドヤ顔の優香を微笑みながら褒める。

「全部間違ってるけど」

「えぇえ!?」

 私は思わずくすっと笑みを溢す。

 その後、授業直前まで優香に指導した甲斐もあって、ギリギリ提出には間に合った。


 放課後、優香と私はとある場所へ向かっていた。

「忙しいのに付き合ってもらってありがとうね、ひとみん!」

「全然大丈夫だよ、忙しくなんてないし」

 そしてたどり着いたのは、私たちのクラスからは少し離れた教室だった。

 優香がガラガラ、とドアを開ける。

「失礼しまーす!」

「“仮入部“で来ました!」

 そう、私たちは部活の仮入部をしに来たのだ。

 優香の声に、一人の女子生徒がこちらに歩いてきた。

「あら、新入生さん?」

 その女子生徒は、いかにも清楚というような茶髪をしていて、髪の毛はロングだけれど、私とは違って毛先が少し巻かれている。

「はい!1年A組の雅優香と」

「同じく1年A組の花筏ひとみです」

 私の名前を聞いた彼女は、口を小さく開けて、私を知っている様子だった。

「花筏さんって…今話題になってるあの?」

 話題…?

 私がはてなを頭に浮かべていると、優香が口を開いた。

「ひとみん知らないの…?今めっちゃビジュ良い子がいるって話題なんだよ?まさか別の学年まで知られてるとは思わなかったけど」

 全く聞いたこともない話に、私のはてなはより大きくなる。

 でもそういえば、入学式の日にも、すごい人数に詰め寄られたっけ…。

「初めて聞いたよ…」

 それを聞いた2人はシンクロして笑った。

「ひとみんったら天然なんだから〜」

「花筏さん、面白いのね」

 笑いの波がすぎた後、私たちは教室の中に案内された。

 

「ようこそ、学謳部へ!」


 学謳部、普通の人は聞いても何かわからないだろう。

 本当の正式名称は“学園生活謳歌部“

 その名の通り学園生活を謳歌する部活である、もちろん全国でここにしかない。

 活動内容は、日常生活、学校行事を部活内でさらに盛り上げることを目的に、様々なアクティビティを行うこと。

 部活にはとても思えず、なぜこれが成立するのかと言うと、その秘密は目の前の彼女にある。

 3年C組、暗護詩緒くらもりしお、彼女こそ我が校の生徒会長なのである。

 日頃から成績、態度共に優秀のため、学謳部の設立を許可されたらしい、実際不利益があるわけでもないし。

 でも噂によると、最初は反対されていたけれど、暗護先輩の今も語り継がれる伝説のプレゼンテーションによって許可が降りたとか。

 ただ私は一つだけ、質問があった。

「あの、部員って何名ほどいらっしゃるのですか?」

 私がこれを聞いたのは、ここに来てから暗護先輩以外を見ていないからだ。

「部員は2人だけよ?」

「え?」

 私は思わず声を漏らす、だって、こんな娯楽みたいな部活、人気がないはずがない。

「なんで〜!?」

 優香の言葉に対して、暗護先輩が解答する。

「あら、知らなかったかしら、この部活に入るには条件があるのよ」

 条件…?

 私たちがそれを満たしているのか不安になる。

「入部条件、それは」


「成績順位のトップ3までが入部可能、よ」


 これは…。

 優香の声が途端に小さくなる。

「あぁ…あたし帰ります…」

 優香は万年平均点らしい、戦意喪失しても仕方がない。

 本当に帰ろうとする優香を呼び止める暗護先輩。

「待って!一教科でも大丈夫よ!」

「いや…その…そう言う問題じゃなくてですね…」


 ――――――

 

 私はその時、ついさっきの出来事を思い出す。

「この部活絶対楽しいよ〜!ひとみんも一緒に入ろっ!」

 目を子供のようにキラキラとさせる優香。

「優香が入りたいなら、私もついていくよ」

 微笑みながら答える。


 本当に入りたいって思ってただろうに、こんな形で叶わないなんて。

 私は優香を精神的にも護るって決めたのに。


 ――――――


 肩を落とす優香に私は伝える。

 私の、決意を。


「諦めないで、優香」

「私が叶えるから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ