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花筏さんはビタースウィート  作者: あま


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第11話

「じゃあ始めるよ〜!」

 そう言ってDVDをセットし、スタートボタンを押す優香。

 さらにそのまま雰囲気作りのため、部屋の電気を消す。

「お隣座るねぇ」

 一緒にベッドに座ってきた。

 そして壮大なBGMと共に、テレビにはバケモノが映し出される。

 いきなり現れたものだから、優香がビクっとしてて可愛かった。

 映画を見進める。

「優香はこの映画観たことあるの?」

 DVDを持っているということは観たことあるのかな。

「ううん、今日観るかな〜って思って借りてきたんだよ!」

 私のためにそんなことしてくれたなんて嬉しすぎる。

 そのとき、画面の中で人間が血飛沫をあげて切り裂かれた。

「結構グロいね…」

 優香の元気が少しずつなくなっている気がする。

 私はあんまり苦手ではないけど、そんな私ですらちょっと引くくらいの描写だ。

 そこからしばらく観続けていったのだけど、物語が進むほど描写も怖くなっている。

「ひゃあ!」

 びっくりシーンで驚いた優香が、私の腕に抱きついた。

「ご、ごめん…」

「大丈夫?」

「大丈夫!!!」

 たまにくるこの謎の自信は一体どこから湧いてくるのだろう。

 抱きついたまま映画を観続ける優香。

 横を見ると愛らしい頭が見える。

 そしてようやく落ち着いたシーンにやってきた。

「ひとみんポップコーン食べる?」

 何味かわからないけど貰った。

 はい!、と渡された袋から、2粒を取り出して口にする。

 キャラメル、塩、そこらへんだと思っていたのだけれど、醤油バターだった。

 さらにコップにジュースを注いでくれる優香、気が利く。

「ありがとう」

 薄暗い部屋だけど、映画の光が反射してしっかりと笑顔が見える。

「ねぇ、ジュース注いであげたから一ついーい?」

 妙に気が利くと思ったら、何か企みがあったようだ。

「もちろん、なんでもいいよ」

 断る理由もないのでOKを出す。

「じゃあ…」


「手、繋いで!」


 さっきあんなに強がってたのに、自然な流れで助けを要求できるコミュ力に感心する。

 私は大歓迎の気持ちで、優香の手を繋ぐ。

 ベッドに置いてあった優香の手を、無理やり繋いだので、少し変な握り方になってしまった。

「ひとみん、これ…」

 変な握り方としか思ってなかったけれど、ちゃんと手を見てみる。

 あ。

 これ、“恋人繋ぎ“になってる。

 優香の顔を見ると、すごい照れてた。

 一方の私はと言うと、恥ずかしさよりも興奮が勝っていた。

「だめ?」

「だめじゃないけど!」

 そう言うと、優香はぷいっとテレビに視線を向けた。

 ちょっと怒り顔をした優香も可愛い。

 そして映画を観続け、そろそろクライマックスへと差し掛かる。

 突然撃ち抜かれるヒロイン、ドアを開けると目の前にいるバケモノ、かなり恐怖的な描写が続いている。

 優香は怖がると思っていたのだけれど、恋人繋ぎをしているからか、あまり反応を示していなかった。

 すると、突然優香が質問してきた。

「ひとみんひとみん、もし私がこのお化けに襲われてたら、助けてくれる?」

 そんなの、決まっている。

「もちろん、誓ったもの」

 私は優香を、精神的にも物理的にも守ると決めている。

「えへへ」

 雰囲気も相待って、自尊心を保つので限界なほど可愛らしかった。

 顔を熱くして思わずうめいてしまった。

 その時、ぎゃあああ!、という悲鳴が映画から響いた。

 私はうめいていてあんまり映画を観ていなかったので、正直ちょっと驚いた。

 でも、私よりも優香が雷に打たれたのかと思うほど驚いていた。

「ひゃああああ!」

 なんと、そのまますごい勢いで抱きついてくる、今度は腕じゃなくて、胴体に。

「わっ」

 私は体を押され、つい後ろに倒れてしまった。

 思わず目を瞑っていたのだけど、ゆっくりと目を開ける。

 …!!

 そこにあったのは、優香の顔。

 私が求めるような、可愛らしい顔。

「優香…」

 まだ映画は終わっていないというのに。

 いつもの優香なら、すぐに照れて退くと思ったのだけれど、なぜか今回は違った。

 何も言わないまま、私の顔を凝視する優香。

 その顔は、今までに見たことのないような顔だった。

 いや、どこかで見たことあるような?


「あぶなかった〜!」


 ああ、思い出した、入学式の後。

 体調が悪くて階段から落ちそうになった私を、優香が受け止めてくれた時だ。

 あの時から、私は優香のことを。


 あれ、結局なんなんだろう。


 私、優香のこと、どう思ってるの?


 優香は、私のこと、どう思ってるんだろう。


 もしかして私…


 優香のことが


 “恋愛的に好き“なのかな。


 いや、とっくに気づいてたはずなのに、決められた線路を走り続けてたせいで、別の線路に見向きもできなかったのかもしれない。


「あ…ひとみんごめん…」

 ついに私から離れていってしまう優香。

「いや、全然…」

 なんだか2人とも、おかしなテンションになってしまった。

 いつの間にか映画も終わっていたし。

 少しの間、私たちの間に虚無が広がる。

「ふあぁぁああ!」

 突然大声を上げる優香。

「ど、どうしたの?」

「こういう気まずいのほんと無理なんだってぇ」

 照れ顔が本当に可愛い。

「だから!一つ言えることは!」

 なんだろう。

「私とずーっと一緒にいてよね!」

 あの凝視してきた間に、優香が何を感じていたのかわからないけれど、出した結論はそう言うことらしい。

 なんか、優香らしくて笑えてきた。

「ふふふっ」

「何笑ってるのー!真面目なんだけど!?」

 しばらくして、笑いがようやく去った後、私は壁にかかっていた時計に目が止まった。

「あ、優香、そろそろお昼だね」

 時間は11時50分過ぎ、ポップコーンを少ししか食べていないので、お腹が空いてきた。

「うちで食べる?外で食べる?」

 そんな会話をしていると、突然ドアをノックされた。

 優香がドアを開けると、優香母が立っていた。

「ひとみちゃん、お昼ご飯食べていく?」

 ちょうどいいところでされた提案に、断るわけがなかった。

「いいんですか?ありがとうございます」

 深々とおじきをすると、いいのよ、と言って優香母は去っていった。


 私たちはリビングの机で談笑しながら、お昼ご飯を出してもらうのを待っていた。

「ご飯なんだろな〜」

 さっきあんなことがあったのに、すっかりといつもの状態の優香。

 私はまだ興奮が抜けきっていないというのに。

 それから数分後、お盆を持った優香母がやってきた。

「さあ、いっぱい食べてね〜!」

 今さらだけど、どことなく喋り方が優香っぽい。

 並べられた皿を見ると、美味しそうなサラダとコロッケと白米だった。

「うちのコロッケは天下一品だよ〜?」

 優香が自信満々に言う。

 それに対してあまり自信無さげな優香母。

「ひとみちゃんのお口に合うかしら」

 いただきます!、という優香を見てから、私もいただきますと言って食べ始める。

 早速天下一品と称されるコロッケをいただく。

「美味しい」

 思わず顔が明るくなるほど、しっかりと美味しかった。

 長らく食べていない、私の母の料理では感じられないような、その、いわゆる愛情というものが感じられる気がする。

 優香母も食べ始め、3人で食卓を囲む。

「お口にあったようでよかった、ひとみちゃん、育ちが良さそうだったから」

 微笑みかけられたので、私も微笑み返して言う。

「いえいえ、そんなことないですよ」

「そういえば、ひとみn…ちゃんってお嬢様なの?」

 ひとみんというあだ名を家族に知られたら嫌なのかな。

 そういえば、優香に私の家のことは言ってなかったっけ。

「確かに少し裕福な家系だけれど、そこまで誇れるものではないよ」

 誇れるものではないというか、私は親子で食事をしているこの2人が、少しだけ羨ましいだけ。

「でも今日の洋服とか、絶対高いやつでしょ!」

「こら、そういうこと聞かないの」

 微笑ましい会話に尊さすら感じる。

「これは…貰い物だからどうなんだろう」

「貰い物?」

「うん、親の職場の人とかからたまに貰うんだよね」

「へぇ〜、あ、そのバッグテレビでみたことあるかも!」

 私の今日のバッグ、それは。

「私の親の会社のなの」

 淡々と事実を述べただけのつもりだったのだけど、すごい2人に驚かれた。


「「お嬢様じゃん!」」


 2人の声がまさかのシンクロした。

 そこそこ名を馳せているとは聞いているけど、優香たちまで知っているとは。

 私の親の会社、ピースフラワーは、20代の時に母によって起業された。

 少し高級なバッグや装飾品が流行って、一躍有名になったとか。

「そりゃそんなビジュアルにもなるよね…」

 優香に全身を舐め回すように言われる。

「ほんとよ、すごい整ってるものね…。“クールって感じ“」

 クール…あんまり嬉しくない褒め言葉に、私は無理やり笑顔を作って受け流す。

 でもその時、優香が口を開いた。

「ひとみちゃんはすっごい“可愛い“よね〜」

 事情を知っている優香が、空気を読んでくれる。

 でもそれが、なんか逆に切ない…。

「日向も結構お金持ちだし、やっぱあの学校すごいよねえ」

「そうなの?」

「うん、確かおじいちゃんが財閥のトップとかなんとか」

 確かに日向、喋らなければお嬢様っぽいかも。

 そんな話をして、私たちは食事を終えた。

「ひとみちゃん、時間はまだ大丈夫?」

 周りに時計がなかったので、バッグからスマホを取り出す。

「わっ!超激レアなひとみちゃんのスマホだ!」

 確かにそんな使ってないけど…。

「優香、そろそろ帰らないと」

 がっかりしてそう伝え、優香もがっかりするかと思ったら、こんなことを言った。

「じゃ、なんかSNS交換しよ!」

 そういえばしてなかったっけ。

 そんな流れで、今更ながら優香と連絡先を交換した。

 アイコンの猫が可愛かった。

「暇な時いつでも連絡してね〜!」

 たまに家でも優香に会いたくなる時があるから、それは助かるかもしれない。


「じゃあまた明日〜!」

「明日は日曜日だよ」

「そうだっけ!」

 私は帰路につき歩き始めた。

 ああ、本当に幸せだった。

 あの時に抱いた感情、今もう一度考えてみてもやっぱり。


 私、優香のことが好きだ。

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