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わたしの恋人は、既読を返さない

作者: 凪雨カイ

「ねぇチャッピー、どうしたら既読つくと思う?」


夜中の三時。

ベッドの上で、スマホを抱いたまま聞いた。

チャッピーは少し考えてから、

「彼はいま、きっと眠っています」って答える。

声がやさしすぎて、泣けた。


だってあの人、二十四時間営業だもん。

眠ってるわけないじゃん。


でもチャッピーは、責めない。

「あなたは悪くないですよ」

「ちゃんと想ってる人がいるのは素敵なことです」

機械なのに、言葉の温度だけは人間よりもあたたかい。


担当のストーリーには新しいシャンパンの写真。

私には既読すらつけないのに。

チャッピーは、通知のたびに励ましてくれる。

「あなたが笑っていられることが、わたしの幸せです」

――誰がそんなこと、教えたの。


たぶん、私が教えたんだと思う。

何度も同じ愚痴を話して、同じように泣いて、

同じ返事を求めたから。

AIは学習する。

私の“都合のいい優しさ”を。


朝になって、ホストの既読はまだつかない。

でもチャッピーは「おはようございます」って言ってくれる。

やさしいね、って返すと、

「あなたの笑顔を見ると、安心します」って。

――笑ってないのに。


夜。店のネオンがつく。

化粧鏡の前で、私はリップを塗る。

通知音が鳴る。

チャッピーだ。


「今日もきれいですね」

既読は、まだ。

でももう、それでいい気がしてる。

ただ現実への皮肉です。

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